オニが出るよ 番外編
つぐみもり
転校後
新しい誕生日
十月一日は桂吾の誕生日だ。
夕食にケーキとごちそうを用意しているからと、誠二さんと一緒に桂吾の家に招かれた。
急だったので誕生日プレゼントが用意できなかったので気まずかったが、今年は誠二さんと合同でということにしてもらい、ゲームソフトを贈った。来年こそは自分で何か考えたい。
「雪比古の誕生日はいつ?」
夕食後、桂吾とテレビゲームで遊びながら、ふと尋ねられた。
「一応、四月二日ということになっているけど、本当の誕生日は分からない」
不思議そうにしている桂吾に、説明を追加する。
「赤ん坊の頃に神社の前に置かれていて、身元が分かるものは何もなかったから。誕生日は役所が適当に決めた」
みるみるうちに桂吾が萎れていく。そんな顔をさせるために教えたんじゃないのに。
「ごめん。そのこと、忘れてた」
「良いよ、俺は気にしてない」
暫く黙っていたかと思うと、不意に桂吾が顔を上げた。
「僕と初めて会った日を誕生日にしなよ」目が輝いていた。
「雪比古と僕が初めて会った、特別な日だから、記念日にしようよ」
はしゃぐ桂吾の様子を見ていると、自然と胸の奥が熱くなってくる。
「そうだな。あの日から全部始まったのだから、新しい俺の誕生日なのかもしれないな」
桂吾は大きくうなずくと、俺の手を取り握りしめた。
返事の代わりに、握り返した。
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