Look like? オークそっくりだと言われる少女は女神の生まれ変わりだった

優陽 yûhi

第1話 オークそっくりな少女

「お願い……止めて!メアリーから離れて!……止めて〜〜!!!」

 夜空に向かい、祈る様に手を合わせ、叫ぶ少女エルフィナ。

 目の前にはもう1人、メアリーと呼ばれた少女が……

 剣を振り上げる魔族……今にも切り裂かれる寸前の少女……

 周りには大勢の少年少女が、血を流して倒れている。


 その時、少女の合わせた手から、天に向かって一筋の光が昇った。

 すると、それに共鳴したかの様に、満天の星から光が集まり、

 少女が発したその光より遥かに大きな光の柱となって降りてきた。

 その2つの光が混じり合い、少女を包みこむ。

 少女から何本もの輝く光が、放射状に放たれると、

 少女を覆っていたであろう、薄い透明な膜が〝パリーン!!〟

 大きな音を立てて、粉々に砕け散った。

 この瞬間を、待ち侘わびていたとばかり、

 少女からあふれるまばゆいばかりの光が、水平に円となり広がる。

 その光は、目を開けていられない程の輝きで、

 辺りは昼間と錯覚する程明るくなった。

 光が薄くなり、辺りの視界が拡がってくると、見えてくる景色の中から、

 1000人以上いたはずの、魔族の姿が忽然と消えていた。

「エルフィナお姉様……い、今の光は?」



 エスティア王国、王立学園。

 この学園には、オークそっくりな少女が、在籍しているという。


「おはようございます」「おはよう!」

「ちょっと、エルフィナお姉様?

 皆んなから、無視され、相手にされていないの……分からない?

 登校するのに、いちいち、誰彼だれかれなく、朝の挨拶をしながら歩くの止めてよね!

 私が恥ずかしいんだから」

 1年違いで今年入学して1ヶ月。近くにいると恥ずかしいからと、

 いつも離れている妹……誰もが認める美少女……メアリナが、駆け寄って言い放った。


 〝エルフィナ〟と呼ばれた、このオークそっくりだと言われる少女……

 いや……本当にオークの様な顔をしている訳ではない。

 鼻が横に広がり、ゴツい顔で、醜い……そう言う事だ。

 周りから、からかい半分で、オークそっくりと、揶揄やゆされていた。

 学園では、他の生徒から、いない者の様に扱われている。

 しかしその様な扱いを受けているにもかかわらず、少女の表情は、にこやかで明るい。

 それが又、哀れではあるのだが……


「やだメアリー。意地悪言わないの」

 そう言い、両手で愛おしそうに、メアリナの頬を撫でるエルフィナ。

 このオークそっくりだと言われる少女は、

 エスティア王国のスタンリー公爵家の長女だ。

 昨年15歳になり、エスティア王国王立学園に進学し、今は2年生になっている。

 女の子ながら学園始まって以来と言われる程、剣が強く負けた事がない。

 学業も、入学以来学年1位を守り通している。

 しかし何故か魔法だけは、さっぱりだった。

 魔力測定器に触れると、破壊してしまう程の魔力量を持っているのに、

 何故かその膨大な魔力を、扱う事が出来なかったのだ。

 こんな事は初めてだと、エスティア王国の学者達を悩ませた。

 スタイルこそ悪くないものの、その醜い顔と、魔法を使えないと言う事から、

 両親を始め、妹にまでも疎うとまれていた。


 醜い?貴方もこの少女が、醜いオークに見えるだろうか?

 少しノイズが掛かった様にぼやけるが、やはりオークに似ているって?

 もしそうであったら、貴方も、この少女に掛かった呪いで、

 色眼鏡フィルターをかけた様に見えているのだろう。

 それを外してもう一度見て下さい。如何ですか?……そうでしょう?この少女は、

 醜いどころか王国中探しても、肩を並べる者がいない位、美しい少女なのです。

 髪はキラキラ光るホワイトロング。

 目はぱっちり大きく、カールがかかった長いまつ毛。その瞳は透明感のあるブルー。

 シミ1つ無く、白く透き通る様な、きめの細かい美しい肌。

 美少女の条件を、全て兼ね備えている様な少女……それがエルフィナなのです。


「エルフィナお姉様は、オークそっくりと、皆んなから毛嫌いされているんだから、

 少しは自覚してよね!」

「ごめんね……メアリー……こんな私が姉で……恥ずかしいわよね?

 分かっているわよ?私が醜く魔法も使えない、

 生まれてこない方が良かっただって事は……

 でも仕方ないじゃない?生まれてきてしまったんだもの……

 私にはどうにも出来ない事だし、せめて嘘でも明るくしていないと、

 生きて行く力が湧かないの……

 不思議よね?メアリーも、お父様、お母様も、とっても綺麗なのにね……

 幼い頃、お母様に聞いた事があるのよ……〝私の本当の両親は誰?〟ってね。

 そしたらなんて仰おっしゃったと思う?」

「「貴方は私の生んだ子よ!そうでなかったらどれ程良かったか!」」

「そうそう。お母様は、そう仰ったのよ。よく分かったわね?」

「もう何度も聞いたわよ!」

「……そうだった?フフフ……」

 エルフィナはそう言って笑うのだが、目には薄らと涙が込み上げていた。

 それをメアリナに悟られない様に、後ろに振り返り、校舎に向かった。

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