FUTURE CATASTROPHE

@acid_protein

第1話 IDEA

機械化の進んだ近未来。乾いた不毛の地に、巨大な都市国家がそびえ立っていた。その名も「イデア」。イデアの人々は脳幹に「チップ」を埋め込み、デジタル社会を生きていた。身体の機能を電子機器に代替するサイバネティック・オーガニズム、いわゆるサイボーグ化が普及した、サイバーディストピア。発展を加速させる上流階級と、没落した貧困層「フォールン」に二分化され、その溝は底のない深淵へと成り果てていた。


イデアを語る上で欠かせないのは、メガコーポレーション「NR」の存在である。NRはシティを実質的に支配している企業であり、チップ技術を独占している。チップは人間の脳の機能をデジタルに接続し、世界を拡張した。この技術により人類の平均寿命は実に140年となった。しかし、理論上チップの平均寿命は500年まで上昇するはずだった。その原因はタンパク質と脂質でできた脳の限界である。そこでNRは「ブレイン・インターフェース」を開発した。これはチップのようなデジタルへの接続ではなく、脳そのもののデジタル化を可能にした。これにより平均寿命は524年へと跳ね上がった。問題はチップが義務且つ無償であるのに対し、ブレイン・インターフェースが高額の施術であるという点である。この発明により上流階級とフォールンの格差は、経済格差から寿命格差となり広がり続けた。


イデアはこの歪な国家体制をどのように維持しているのだろうか。それは「order」というNR直属の軍事組織である。orderはイデアの秩序そのものであり、俗な言葉で表現するならば、最強である。漆黒のサイバネティック兵器に身を包んだ彼らは、この街に住む人々の恐怖の対象であり、犯罪率の大幅な抑制に直結している。


最後に、NR創設者ステファン=モルダーブランの言葉を紹介しよう。

 「無機質は夢を見るのか。」

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