第4話 一時的な帰還

 ◇


 目を開けるとそこはぐちゃぐちゃな部屋。


 散らかった紙と穴だらけのタンスに所々に血痕...。


 体は妙に重くて、起き上がるのもしんどい。


 これは...現実か。


 束の間の夢に癒されたものの、結局現実からは逃れようもなかった。


 無理やり体を起こして、散らかった部屋の片付けを始めた。


 別に前向きになったわけではない。

ただの気まぐれみたいなもので、すぐにまた散らかすかもしれない。


 そう思いながら、適当に片付けをしていると、押入れの中の卒アルに目が行く。


 そういや、卒アルなんてあんまり見返してなかったな。


 なんとなくの気分で卒アルを開く。

夢のせいで鮮明に思い出される記憶...。


 懐かしい気持ちを抱きながら、クラス写真に目を移すと、そこには相変わらず可愛い柚木さんが居た。


 ...今、何しているのだろうか。

彼女のことだ...きっと、いい人を見つけてそれはそれは幸せな生活を送っているのだろう。


 でも、気になってしまった俺はボロボロな指でエゴサを始めた。


 すると、すぐにとあるSNSが引っかかった。


「...これ...」


 非公開にはなっておらず、誰でも見れる設定になっていたアカウントを覗くと、昔と変わらず綺麗な彼女の写真がたくさん載っていた。


 どうやら旅行が好きらしく、いろんな国に行っては写真を撮っているようだった。


「...幸せそうだな」


 きっと旦那さんと行っているだろうけど、旦那さんの姿は確認できなかった。


 自分の生活とのギャップに余計に心に来て、すぐに見るのをやめた。


 そして、机に置かれた睡眠薬を口に含んでまた眠りにつくのだった。



 ◇


 目を覚ますと、そこは柚木さんの部屋で、顔を赤くしながら息は荒く、満足そうな顔で見つめる彼女がいた。


「...ご、ごめんね...我慢できなくて...//」と、恥ずかしそうに笑う彼女。


 少し音に集中すると、下の方から家族の会話的なのが聞こえる。


 つまり家族がいるのにも関わらず、彼女と致してしまったらしい。

そして、また事後からのスタートだった。


「...うん...全然大丈夫...」


 しかし、流石に2度目ということもあり、状況をすぐに理解できた俺は、柚木さんにキスをして...そのまま行為に及んでしまった。


 どうせ夢だからと、少しだけ強引にすると、それが嬉しいのか家族がいるというのにかなり大きめの声を出してしまう柚木さん。


 嫁に叩き込まれたいろんな技術を駆使して、柚木さんにご奉仕すると、それはそれは可愛い反応を示してくれた。


 どうやら、相性はかなり良いようだった。


 そうして、2回戦を終えると、蕩けたような表情で甘えてくる。


「好き...好き...大好きなの...//ね、好きって言って...?」


 デレた猫のように甘えまくるその姿が可愛くて仕方なかった。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091131138317


 その後はようやく甘えモードが終わり、いつもの彼女に戻ると、勉強をし始める。


「...そういえばさ、西原さんと何話してたの?喧嘩っぽい感じに見えたけど...何か嫌なこと言われた?」


 これは恐らく、昨日の夢の続きだろう。

だとすれば、言い争いというのはあの絡みのことだろう。


「...えっと...まぁ、なんか俺たちがその...ラブホから出てきたのを見たらしく...それで...なんか絡んできたから...」

「そうなんだ...。西原さんにはなんか嫌われててね...。多分私のせいだ。ごめんね?」と、謝られる。


「愛乃が謝ることじゃないよ...。きつく言っておいたし、もう何かされることはないと思うから」というと、「...うん。ありがとうね。大好き」と言われた。


 その日はそれから少し2人で勉強をして、夜ご飯を一緒に食べてから解散した。


 柚木さんの家族はすごくいい人たちで、俺たちのことを温かく見守っていてくれていた。


 そうして、楽しい気持ちで帰っていると、夜の公園で1人でベンチに座る由花の姿が目に入った。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091131717295


 少し嫌な気持ちになりながらも、関わりたくはないので、気づかないふりして通り過ぎようとすると、「...おい」となぜか呼び止められる。


 この前のことを何か言われるのかと思ったが、どうやらそんな元気はないらしく、「...ちょっと話に付き合って」と言われてしまう。


 無視することもできたが、無駄に敵意を向ければ柚木さんに迷惑がかかるかもしれないと思い、仕方なく公園にはいる。


「...」

「...そんなに嫌そうな顔しなくてもいいじゃん」

「...嫌だからね」

「...そっか」


 俺は少し離れた位置に座ると、何故か俺にとある話を始めるのだった。

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