第2話 朝からイチャイチャ
柚木さんとホテルを後にし、2人で買い物を楽しんでから解散した。
その後は、家に帰ってからベッドでゴロゴロしながら、思わずニヤニヤしてしまう。
あの柚木さんが俺にゾッコンで、デート中もずっと手を繋いでいて、ことあるごとに「好きだよ//」と言ってくれた。
浮き足立ちながらも、しかし一方では心の奥底で夢であることを忘れることはできなかった。
だからこそ、冷静に分析を始める。
現実と夢の違いについて...。
しかし、どうやらこの夢の中での異変は柚木さんと付き合っているという一点のみようだった。
夢の中ならもっと色々笑ってしまうような異変の一つや二つがあってもおかしくはないが、そういうものはなかった。
現在の日付は2014年4月18日。
つまり、10年前の高校3年生。
既にLINEがあり、過去のやりとりを見ながら、いつ付き合ったか、どっちが告白したのか...などの情報を集める。
そこで分かったことは、付き合ったのは2014年1月30日であり、告白したのは俺の方からであること。
それからデートや電話で関係性を深めていき、本日...2人で大人の階段を登ったようだ。
...なるほど...と、現状を把握してから疲れからか眠気に襲われる。
寝たくはなかった。
だって...起きたらあの現実が待っていると思ったから。
しかし、そんなことはなく、次に目を覚ますと変わらず実家の天井があった。
...ずいぶん長い夢だな。
そう思いながら、起き上がるとリビングに行くと、そこには当たり前のように父さんと母さんがいた。
10年前なのだから居るのは当たり前だが...、改めてその姿を見て少しだけ感動してしまう。
しかし、その話はまた今度するとしよう。
それからシャワーを浴び、朝食を食べてから家を出る。
「行ってきます」
そうして、玄関の扉を開けると、そこには柚木さんが立っていた。
そうだ、毎朝彼女と登校しているんだった。
「お、おはよ...//」と、付き合って3ヶ月経つというのにまだ恥じらいを残しながら挨拶された。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091081195049
いや、昨日のことが頭によぎっているのだろうか?
...折角なら彼女との初めてのタイミングで夢を見たかった。
「おはよ、柚木...じゃなくて、愛乃」
まずった。
つい、昔のくせで苗字呼びしてしまうところだった。
「...う、うん!佐藤くん...じゃなくて、祐希くん!」と、彼女も俺の真似をする。
それから、2人で適当に喋りながら学校に向かう。
内容は昨日見たテレビ番組のこととか、クラスメイトのことだったり、デートのことだったり...。
そうして、幸せを満喫していると、少し前を歩く1人の女の子に目が行く。
金髪のショートヘアに、見慣れた黒いカバン...。
それは...俺の妻である、
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091081862744
一気に全身から嫌な汗が溢れ出す。
動悸が激しくなり、思わずその場から逃げ出したくなる。
その様子に気づいたのか、「...大丈夫?」と心配そうに俺の顔を覗き込む柚木さん。
何とか浅く呼吸を整えてから、「ちょっと、体調が悪くて...」というと、彼女に腕を引かれて近くの公園のベンチに座る。
当たり前のことだ。
なんの異変もないということは、あいつもいるということだ。
怒りと寂しさと悲しさの感情を抑えながら深呼吸をする。
「...と、とりあえず、お水買ってくるね」と、席を立とうとした彼女の腕を引っ張る。
「どこにも...!...行かないで...」と、情けない言葉を吐くと、「...私はどこにも行かないよ?」と、優しく笑ってくれた。
彼女はベンチに座ると膝をポンポンと叩き、「膝枕...使っていいよ?」と言われた。
その言葉に甘えて、俺は彼女の脚に頭を乗せて横になる。
彼女を見上げるような格好になると、「えへへ...//可愛い...//」と、俺の頭を撫でながら呟く。
そんな彼女の方が100倍可愛かった。
冷静になって、改めて現状を受け止める。
柚木さんと付き合ってるってことは、由花とは何の関係もないということだ。
それに、俺と由花が接点を持つのはこの先のことだし、それは俺の行動次第で避けられる展開である。
落ち着け...。ここは夢の世界なんだ。
「...大丈夫だよ。ずっと私がそばに居るから」と、何かを察したようにそう言った。
「...ありがとう」
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091082645369
すると、彼女は少し目を細めて、キスをしようと体を近づけてくるが、体が硬いのか俺の顔を近くでプルプルと震える。
なので、俺の方から少し身体を浮かせてキスをすると、顔を真っ赤にして、「えへへ...//朝からキスしちゃったね...」と、笑う。
その顔を見て確信した。
やっぱり、俺はこの子が好きだ。
少し元気をもらった俺は、少し急いで学校に向かうのだった。
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