妻を高校の先輩にNTRられ絶望した俺は、10年前に叶わなかった初恋のあの子とピロートーク中のifな世界の夢をみる。
田中又雄
第1話 妻を寝取られた
「そういえば...来週の結婚記念日どうする?」と、珍しく一緒に食事をしている最中にそんな質問をする。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091059830836
「あぁ...うん...結婚記念日って...来週だったっけ。ごめん。その日はちょっと職場の人との飲みがあるから」
あっさりと断られた。
妻は見た目こそ、金髪でやや目つきが悪いが、性格はかなり優しい。
結構頭もいいから、俺よりいい会社に勤めているし、役職にも就いているため俺より給料も高い。
反対に俺は見た目はどこにでもいる28歳であり、性格も普通くらいだ。
頭も並み程度で会社でも重要な役職には就いていない平社員である。
付き合ってから10年、結婚してから3年...。
最近はお互いの仕事の関係でなかなか話す機会はなかったが、それでも俺はうまくやっているつもりだった。
まぁ、10年の付き合いともなればこんなものかと思っていたし、少なくても俺には不満はなかった。
強いて言うなら、あまりお酒が強くないはずなのに、職場の人と飲みに行っているなと思うくらいだった。
別にその頻度も月に3回程度で極端に多いわけでもないし、気にはしていなかった。
しかし、それは突然、何の前触れもなくやってきた。
◇12月28日 PM7:15
いつも通り、仕事も年納めで短い連休を楽しもうと、お酒と妻が好きなコンビニスイーツを買ってうきうきで家に帰った。
そうだ...せっかくならこの休日でどこかに旅行に行きたいな。
いきなりだけど、どこか予約取れたりするところあるかな?
確か、二人とも明日から休みだったよな。
そうして、玄関を開けると、部屋の中は真っ暗だった。
珍しいな。いつもなら俺より先に帰っているのに...。
そのまま、家に上がり、リビングの電気をつけると、いつもと変わらぬ風景が広がっていた。
少し違うとすれば、テーブルに大きな1枚の紙と、手紙らしき何かと、結婚指輪が置かれていたことだった。
なんだ?と思いながら、その大きな紙をまじまじと見ると、それは...離婚届だった。
「...は?」
思わずそんな声があふれる。
驚きというか、理解ができない現状にそんな言葉しか出なかった。
焦りながらその手紙を開けると、そこには便箋で10枚ほどの別れの手紙が書いてあった。
正直、その手紙なんて放り出して今すぐ妻に連絡をするべきなのに、なぜかそんな気にはなれなかった。
妙に冷静というか、事態を整理しようと、深呼吸してから手紙を読み始めた。
書かれれていたのは離婚に至った理由...具体的には自分の不倫についてと、その不倫相手との関係をきれなかったこと、心のどこかで俺のことを好きではなくなっていたことなどが、妻の乱雑な字で生々しく書かれていた。
相手の名前は書かれていなかった。
10枚の手紙を読み終えるのに、さほど時間はかからなかった。
そして、読み終えた瞬間、体から力が抜けたようにソファに座り込んでしまった。
内容は理解ができた。理解はできたが納得はできなかった。
急いで妻に連絡するも、当然つながらず。
妻の両親に連絡するも、何故か電話出た瞬間に切れられて、そのまま着信拒否。
理解できない現状に俺はただただ呆然とする以外の選択肢がなかった。
「...なんなんだよ」
その日は買ってきたお酒を無理やりのどに通して、潰れるように眠った。
◇翌日
目を覚ますと、時刻は10時を過ぎていた。
最悪の寝起きとともに、相変わらずさみしいリビングがそこにあった。
そのまま、リビングに放り投げた携帯に目をやると、何やら一通のメールが届いていた。
あて先はよくわからないドメインのメールアドレス。
件名は『よい年明けを。おかずとして使ってね』だった。
少し、不穏な何かを感じつつも、そのメールを開くと...とある動画と写真と音声ファイルが添付されていた。
俺は...写真のファイルとタップした。
すると、そこには妻のあられもない姿であられもない顔をしている写真が添付されていた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091060253294
「...なんだよ、これ」
次に動画をタップすると、それは1分ほどの動画で、そこに映っていたのは妻と...高校時代の2つ上の先輩だった。
そして、その二人が淫らにまぐわう姿が生々しく映されていた。
さらに妻は「旦那のより...いい!!」と言いながら、している姿がばっちりととらえられていた。
その瞬間、俺の心の何かが壊れた。
叫んだとともに、妻との思い出の写真や、二人で旅行に行った時のお土産、妻が残していたものをたたきつけ、壊し、破り、割り...すべてのうっぷんを晴らすように暴れまくった。
多分、30分以上そんなことをしていると、部屋の中は...ぐちゃぐちゃになってしまった。
けど、俺の心の中はそれ以上にぐちゃぐちゃだった。
手からは血が滴るも、さほど痛みは感じなかった。
それからは...地獄の日々だった。
うつ病になり、会社を休職。
その期間は誰とも接することなく、一日中散らかった部屋で何をすることもなくぼーっと過ごすだけ。
たまに感情的になっては大暴れし、疲れたらそのまま眠るような日々。
生きているのが信じられないくらいの悲惨な状況だった。
昼夜逆転を繰り返し、眠ることもできなくなった俺は睡眠薬を使うようになった。
そんなタイミングで俺は一つの夢を見た。
◇
目を覚ますと、「ごめんね。眠かったよね。知ってるよ?男の子はしちゃったあと眠くなるんだもんね」という声が聞こえた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093091061553214
意識がはっきりしていく中で、一気に目が覚める。
いや、夢の中なのに目が覚めるなんて変な表現だが。
目の前にいたのは俺の初恋相手である、
少し恥ずかしそうな顔をしながら、俺の顔を見ていた。
待て待て待て、一体何が起きてる。
視線の先には大きな鏡があり、自分の姿が映る。
その幼さが残る見た目は恐らく10年ほど前、つまり高校時代の俺と思われる姿があった。
そして、部屋の中にはベッドと大きなテレビと大きな鏡。
多分ここはラブホテルだ。
「キョロキョロしてどうしたの...?もしかして、やっぱりこのホテルお化けとかいるの?こ、怖い」と言いながら、俺に抱きついてくる。
そのまま、まるで俺の体を確かめるように、強く抱きつきながら、顔を色んなところに擦り付ける。
「ちょっ!?//」と、好きだった女の子にいきなり迫られて、思わず赤面してしまう。
「...こういう積極的な女の子は...嫌い?」と、上目遣いで聞いてくる。
「そ、そんなことないけど!お、俺には...!」
俺には嫁がなんて言葉を言いかけて、すぐに現実を思い出して口をつぐむ。
「...俺には?」
「...ううん。なんでもない...。ちょっと...嫌な夢を見ていただけ...」
「そっか。よしよし」と、彼女は俺の頭を優しく撫でてくれる。
あぁ、なんて幸せな時間なんだ。
もし、あの時告白をしていれば、こんな世界もあったのかもしれない。
現実での俺は結局、彼女に告白することもないまま高校を卒業した。
それ以降、彼女と会うことは一度もなかった。
そのことを...後悔したことは何度もあった。
結婚した後も。
それから一通りイチャイチャを終えると、「ご、ごめんね。私...あんまりそういう動画を見たことなくて...。初めだったし、色々と上手くできなくて...。つ、次は!もっとうまくできるように頑張るからっ!//」と、多分そういうことに対しての前向きな姿勢を見せてくれる。
「あっ、う、うん...。俺も次までに...色々と勉強しておく...」と、少し照れながらいうと、嬉しそうな笑顔で「うん!」と言ってくれた。
こんな夢を見るなんて、俺もいよいよ末期だな。
そう思っていながらも、この夢が醒めなきゃいいのにと思っていた。
そして、実際夢は覚めることなく、翌日を迎えることになった。
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