第13話 発覚
「なんで先輩が旧校舎で四つん這いになってるんですか。それに先輩が首からつけてるのって……首輪? まるでペットを散歩してるみた……」
そこで翼ちゃんはわたし達が何をしているのか察したような表情で両手で口元を抑える。ペットを散歩してるみたいじゃなくて、ペットの散歩そのものだった。
「翼ちゃん……えっと、これはね」
立ち上がって弁解しようとしたわたしは首輪をつけられてるのを忘れてバランスを崩しかけて
「あっ、お姉ちゃん! 大丈夫?」
と奈央ちゃんに支えられる。そして奈央ちゃんに首輪を外してもらう。その間にも、翼ちゃんの表情はみるみる険しくなっていく。
「お姉ちゃん……ってことは、そこにいるのが先輩の話によく上がる妹さんですよね。先輩、妹さんと人気のない旧校舎で一体何をしていたのか、私に説明してくれませんか?」
翼ちゃんに迫られて、わたしは必死に言い訳を探す。けれど、すぐに諦めて、わたしは翼ちゃんに全てを話すことにした。わたしが奈央ちゃんの奴隷になったこと、そして今日は奈央ちゃんとペットプレイをしていたこと……。
わたしが一通り話し終えると。翼ちゃんはまず、
「先輩達、おかしいですよ。あなた達は、普通じゃない。学校で、しかも姉妹同士で加虐被虐性愛的な行為をするなんて、はっきり言って異常です」
と漏らした。
わたしと奈央ちゃんがやっているのが普通じゃないことは自覚していたつもりだった。けれど、他人からはっきり言われると、想像以上に心に来るものがあった。
「へんなもの見せちゃってごめんね。気持ち悪かったよね」
ショックを受けつつも、わたしはただただ、平謝りするしかなかった。翼ちゃんに不快なものを見せちゃったわたしが100パーセント悪いから。
「当たり前です。でも本当に悪いのは――清瀬奈央さん、優しい先輩のことをたぶらかしたあなたです」
そう言って翼ちゃんは奈央ちゃんのことを鋭い目つきで睨みつける。
「先輩は新体操部のエースで、優等生で、美人で、うちの学校の天使様なんです。決して
翼ちゃんに言われて、これまで押し黙って話を聞いていた奈央ちゃんの額にうっすらと血管が浮かび上がる。
「確かに学校という公共の場でやりすぎちゃったことは反省しているし、あなたに不快な思いをさせちゃったことは謝るよ。ほんとごめん。そして、お姉ちゃんに無理させすぎちゃったかもしれない。——でも! お姉ちゃんから言われるならともかく、あなたからお姉ちゃんの事を『汚された』とか言われる筋合いはなくない? 別にお姉ちゃんはあなたのものじゃない!」
「私は先輩の気持ちを代弁してるんです。先輩は妹思いで優しいから、先輩が口にできない本当の気持ちを、代わりに!」
違うよ翼ちゃん。奈央ちゃんだけが悪いわけじゃない。奈央ちゃんと一緒に、奈央ちゃんに『命令』されるのが気持ちよくなっちゃってたわたしが確かにいたの。だからわたしは、あなたが思っているよりももっと気持ち悪くて、とっくに汚れきってるの。
そう言いたかった。けれど言えなかった。わたしが本心を言えないまま、二人の言い争いは更にヒートアップしていく。
「なんにもお姉ちゃんのことを知らないくせに知ったかぶらないで! あなたに余計な理想を押し付けられて、どれだけお姉ちゃんが悩んでいたかわかる?」
「そうかもしれませんけど! だからって、あなただって無理やり先輩をこんな気持ち悪いことに付き合わせて、先輩の尊厳を滅茶苦茶にして自分だけ気持ちよくなって。それがそれだけ先輩の負担になっているか、考えたことあるんですか?」
「それは……お姉ちゃんも気持ちよさそうにしてくれたし、付き合ってくれるって言ってくれたし……」
翼ちゃんの指摘に奈央ちゃんの言葉の勢いがなくなる。そこに付け入るように、翼ちゃんの語気はさらに荒くなる。
「ほら、やっぱり妹と言う立場を悪用して、先輩を無理やり付き合わせてたんじゃないですか! 今すぐ先輩のことをこんな間違った関係から解放してください!」
翼ちゃんの指摘に、ただただ俯く奈央ちゃん。そんな奈央ちゃんが見てられなくてわたしは
「もうやめて!」
と叫んじゃった。わたしの言葉に翼ちゃんも、そして奈央ちゃんも驚いたようにわたしを見る。
「……全部わたしがいけなかったの。奈央ちゃんの姉として、姉妹として間違った関係に踏み込む前にダメなものはダメっていうべきだった。なのにわたしは、奈央ちゃんに流されるままその快楽に溺れちゃった。だから、もし翼ちゃんが軽蔑して、糾弾するなら奈央ちゃんじゃなくて、わたしのことを責めてよ。まあ、もうこんな気持ち悪い先輩のことなんて嫌いになっちゃっただろうけれど」
自嘲するわたしに翼ちゃんも奈央ちゃんも、暫くその場に呆然としていた。それから。
「ご、ごめんなさい……」
「お姉ちゃん、ごめん……」
その場から逃げるように翼ちゃんと奈央ちゃんが出ていく。そして。
旧校舎にはわたしと、投げ捨てられた人間用の首輪だけが残された。
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