第5話 物理的に束縛してくる妹ちゃんは好きですか?


 わたしと奈央ちゃんの関係が「ちょっと世話焼きすぎな姉と妹」と言う関係から「奴隷とご主人様」という関係に少しだけ変わってから2週間が経った。この2週間で奈央ちゃんの奴隷わたしに対しての命令の傾向とかもなんとなくわかってきた。


 奈央ちゃんがわたしに『命令』するのは2、3日に一回で、不定期だけど2日連続でわたしに『命令』してくることは初日以降はない。そしてその2、3日に一回訪れる『命令』も1つだけ言うことを聞いたら、それ以降は追加で何かを求められることはない。


 『命令』をしていない時の奈央ちゃんは本当にこれまでと変わらなかった。天真爛漫でちょっと抜けているところもあって、愛おしくてたまらない奈央ちゃんのまま。今でも髪型はわたしに整えさせてくれるし、わたしが作ったご飯も毎日「おいしい」と言って食べてくれる。そんな奈央ちゃんがわたしを『奴隷』として鬼畜な命令ばっかりしてくる奈央ちゃんとは別人なんじゃないか、って思っちゃうときも時々あった。


 そして奈央ちゃんがしてくる『命令』も、その内容は日によってまちまちだった。初日や2日目みたいにお漏らしをさせたりノーパンで下校させようとするハードな時もあれば、脇をくすぐってきたりえっちな漫画を音読させられるだけ、というこっちが拍子抜けしちゃう日もある。けれどやっぱり、奈央ちゃんはわたしが恥じらっていたり、醜態をさらすとご満悦みたいだった。


 でも、不純同性交友は避けているような雰囲気があった。まあわたしと奈央ちゃんは女の子同士だし、そもそも姉妹なんだから当たり前と言えば当たり前なんだけど。いや、別にそういうことを奈央ちゃんとしたいってわけじゃないからね⁉︎



「わたしと奈央ちゃんのしてることって、ぶっちゃけ異常だよね。このままでいいのかな、わたし達」


 自分から奴隷になることを受け入れておきながら、そんな不安が口をついて出てしまう。けれど奈央ちゃんとこんなことをしてるなんて雛菜ちゃんにも相談できないし……。そんなもやもやを抱えながら家に帰ると。


「お帰りお姉ちゃん。——今日、『命令』したいから、鞄を置いたらあたしの部屋に来て」


 奈央ちゃんが待ち構えるように立っていた……。



「最近、早くもちょっとマンネリ気味だと思うんだよね。だからここら辺で、ちょっと刺激を加えようかと」


 そう言う奈央ちゃんの手には物騒なもの――麻縄が握られていた。


「あの、奈央ちゃん? わたしは別にマンネリとか感じてないから、これ以上アブノーマルになる必要はないかなぁ、なんて思うんだけど。というかその縄はなに?」


 わたしの疑問に奈央ちゃんはよくぞ聞いてくれました! とでもいうように、ぱっと顔を明るくさせながら


「もちろんお姉ちゃんの手足を縛る用だよ! 本当はリボンとかもっとソフトなもので縛ろうかな、と思ったんだけど、お姉ちゃん、痛いの好きでしょ。だから、意を決して麻縄買ってきちゃった」


と食い気味に語ってくる。興奮気味に語っている奈央ちゃんはかわいいけれど、話している内容は全然かわいくない……。


「別にわたし、痛いの好きじゃないよ⁉」


 思わず反論するわたしに、奈央ちゃんは何を想ったのか、不意にわたしの唇を人差し指でなぞってくる。そして。


「相変わらずお姉ちゃんは素直じゃないなぁ。やってみればわかるよ。お姉ちゃんの身体はすっごく正直だから」


なんて不穏なことを言ってくる。


「あ、あとこれ」


 そう言って奈央ちゃんが取り出したのはアイマスクだった。要するに目隠し変わり、ってことなんだろう。


「ってことでお姉ちゃん。今からお姉ちゃんのことを縛るから、制服の上着は脱いで。これは『命令』だよ」


 楽しそうに言う奈央ちゃんに、わたしは溜息を吐きながらも従うしかなかった。



 その後。奈央ちゃんはいやに手際よくわたしの両手、そして両足を縛り付けていく。わたしの四肢の自由を奪うようにきつめに縛っているから、粗い麻縄が肉に食い込んでちょっと痛い。


 ——でも、この痛みもちょっと気持ちいいかも。


 ほんの一瞬だけそんなへんなことを考えそうになって、わたしは慌てて頭を振る。そんなんじゃ、わたしが本当のマゾヒストの変態さんみたいじゃん。手足を縛られるなんて経験は当たり前だけどこれが初めてだから、ちょっといつもとは違う気持ちになっちゃっただけ。


 そう必死に自分を納得させようとすると、何を想ったのか奈央ちゃんが温かい眼で見てきた。なに、その『お姉ちゃん気持ちよさそう』っていう目は! 別にお姉ちゃん、痛いのが嬉しいとか思ってませんから!


「……というか奈央ちゃん、やたら手つきが慣れてない? もしかして既にわたし以外の誰かとこういうプレイをしたことがあるの?」


 ジト目で奈央ちゃんのことを見ると、『命令』中の奈央ちゃんにしては珍しく慌てて


「そ、そんなことないから!」


と首を横に振ってきた。


「あたし、お姉ちゃん以外の子にこういうことしたいとかいう性癖ないし、誘われても断るよ。あたしだって、こう言うことをするのはお姉ちゃんがはじめてだよ。手際がいいのは、お姉ちゃんの事を考えながらずっと練習してきたから」


 もじもじしながら言う奈央ちゃんに、わたしは喜んでいいのかどうなのか、複雑な気持ちになった。

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