第40話 破壊と豹変の戦い
脳裏が真っ白に染まっていく。
ガルフが最強になると誓ったきっかけを作った人物が、実は生きていたのだ。
だが、その男の体は赤い炎に包まれていた。どうやら「破壊衝動」というスキルを使っているらしい。子供の頃からふざけて使っていたはずだが、今や青年となっていた。ガルフよりも三歳ほど年上のはずだ。
なぜか、彼は勇者の剣を握っている。選ばれた者だけが持つその剣を、どうやってここに持ち込んだのかは謎だった。
ギーヴがその勇者の剣を横に振る。
咄嗟にガルフは剣を抜き返す。
剣同士がぶつかり合い、衝撃でガルフは壁に叩きつけられた。
激しい痛みに呻きもがいていると、ギーヴがまっすぐに突っ込んでくる。
「おい、俺を殺すつもりかよ」
豹変した彼の声が響く。
「おいおい、かつての友達を半殺しにする覚悟はできてるのか、ギーヴ」
ガルフは問答無用で剣を抜き、瞬時にギーヴの懐へ斬りかかる。胸を深く切り裂いたが、上半身と下半身は真っ二つに分かれて動けなくなっている。だが、それでも彼は動いていた。まるでゾンビのように。
「まずい」
ガルフが近づくと、誰かが声をかけた。
「あ、大丈夫ですよ、ガルフ様。彼はゾンビですから」
「どういうことだ?」
「ガルフ様の願いで、アダムイヴが無理やり彼を蘇生させたのです」
「そうか。ならどうやって体を繋げばいいんだ?」
「そこにある勇者の剣を持ってきてください」
ガルフが勇者の剣を持ってくると、アダムイヴはギーヴにそれを持たせるよう指示した。
するとギーヴの体が徐々に繋がっていき、完全に元に戻った。
「はぁはぁ……なんでガルフがここに?」
「おお、ギーヴじゃないか!」
二人は握手を交わす。
「大体の事情は知っている。地上に戻ろう」
「でも、俺は地下深くに行かないといけないんだが」
「モンスターはいなくなった。変な本を見つけたんだ」
ギーヴが一冊の本を見せる。
「へぇ、それはパンドラの書か?どこかで聞いたことがあるな」
「まあいい。とにかく地上だ」
「地上に上がってもここは地下帝国だ」
「うーん……」
ギーヴが考え込んでいると、
「誰か来なかったのか?」と尋ねる。
「古代魔王のヤマガルドさんがいた」
「何て言っていたんだ?」
「この地下帝国のダンジョンで何かを学ばせたかったらしい」
「なら何か得られたんじゃないか?」
「そうかもしれないが、何も学べなかった気がする」
「俺と出会えただけでも十分だろ?ゼーニャも元気だし、みんな元気だろ?」
「ああ、父上が死んだ」
「それは知っているさ」
「あの傭兵団はどこかへ消えた」
「復讐は後回しだ」
アダムイヴが咳払いして話を切り出した。
「さて、どうやらヤマガルドが来たようだ」
古代魔王ヤマガルドが現れ、にこりと微笑む。
「その書物をよこしてくれんかのう?」
「なぜです?」
「そこには神の真実が書かれておってな、わしが三つ目で解読する」
「良いけど、何か嫌な予感がします」
ガルフは不可解なものを感じていた。
確かマール領地のダンジョンにパンドラの書があったはずだ。
ギーヴが殺されたのもマール領地のダンジョン。
そのダンジョンと地下帝国ダンジョンは繋がっている。
こちらからあちらへは出られないが、あちらからこちらへは来られる。
ギーヴの死体も、パンドラの書も同じ原理でここに来たのだろう。
なぜヤマガルドは自分で取りに来なかったのだろうか?
薄れていく記憶の中で、ロイガルドの記憶が蘇る。
ロイガルドの父親こそヤマガルド、古代魔王だ。
なぜ彼はここに留まっているのか。
ババスが言っていたことも思い出す。
天使と魔族の三つ目族はずっと殺し合いを続けているという。
だが、もう終わったのか。
いや、続いているのかもしれない。
「そこまで考えるな、ガルフよ。わしはもう戦争など望んでおらん。ただ、地球に帰りたいだけなのだ」
その時、ガルフは自分が無能領主であることを思い出した。
無能で馬鹿でも、みんなは認めてくれている。
「まぁ、いいのかもしれないな」
ギーヴから受け取ったパンドラの書をヤマガルドに渡すと、彼は三つ目の目から解読を始めた。
「そうか、この世界と地球を繋ぐ方法はリサイクルにあったのか」
ヤマガルドはそう告げた。
「では、ガルフとギーヴよ、ついて来い。わしが地上に出してやる。わしの命を使ってな」
「はい?」
「どういうことだ?それに、なぜギーヴの名前を?」
「わしは三つ目族。何でも解読できる。ただし条件がある」
ガルフは緊張し、生唾を飲み込んだ。
「お主がこの世界を領地として統一し、全てをリサイクルしてガチャ券にしろ」
「それはどういうことだ?」
「この世界をリサイクルして、元に戻すのだ」
「滅びろと言うことか?」
「そのガチャ券が、この世界をあるべき姿にリセットする」
「つまり、滅びろと言うことだろう」
「それを行わねばならぬ時が来る。その時、お前が決めるのだ、ガルフ」
「はい……」
ガルフは生唾を飲み込み、そんな悲劇が来るのかと思いを巡らせた。
しかし、悲劇とは限らないことも、何となく分からなくなっていた。
「難しい話は置いておこう。お前は世界をリサイクルガチャで開拓しろ。そうすれば自然と……さて、行くとしよう」
ガルフとギーヴは無欲な表情を浮かべながら、地下帝国のダンジョンから出ていった。
地上とはいえ、まだ地下だった。
「さて、わしは天界の天使たちと戦わねばならぬ。地上に出たらお前たちはやるべきことをやれ」
「それはどういう意味だ?」
「わしの息子に会ったらよろしく頼む」
「あなた……まさか」
その時、大地が脈打った。
古代魔王ヤマガルドの全身の血が大地に流れ込み、形を変えていく。
それは巨大な蛇となり、亀裂に向かって進んだ。
亀裂が裂けると、そこは坑道だった。
それがどこか分かっていた。ロイガルドが治める領地の坑道だ。
瞬く間に坑道の壁や天井が蒸発した。
翼を持つ三人の天使が現れた。
彼らの頭上には輪が浮かんでいる。
「やぁ、ビガエル、ガラリエル、ザーバエルよ。戻ってきたぞ、わしが」
「山田五郎、いやヤマガルドよ、神に背く謀反者、討つ!」
天から光の柱が生まれ、無数の光が地面へと降り注ぐ。
「では元気でな、二人とも」
古代魔王ヤマガルドは宙へと跳躍し、山奥へと姿を消した。
三人の天使と共に。
ババスのいとこなのだろうか。そんなことを考えていると、遠くの山で巨大な爆発が起こった。
「死んでいないよね」
「たぶん」
ガルフとギーヴは地上を見渡した。
遠くに、ガルフ王国の城が見えた。
黒い煙が勢いよく上がっており、それが戦争の始まりを告げていた。
【告知:いらない物が増え続けています。リサイクルしてガチャ券にしますか?】
そのいらない物には、死体や建物も含まれていることをガルフは知っていた。
「ギーヴ、これが“やり返す”ってやつか」
「面白いな」
二人は大地を蹴って飛び出した。
十秒後には、戦地に着地していた。
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