第二章 悪意のない殺人
夜になり、花火大会が始まり、大きな花火の音が鳴り響く。
部屋のドアが叩かれ、僕は、ドアを開けた。
かなちゃんがにっこり笑って立っている。
「やぁ、かなちゃん。パパとママは?」
「あそこにいるよ。」
かなちゃんが指差した方を見ると、夜空に咲く花火を見つめている男女がアパートの2階の廊下の手すりに両手を置き、立っていた。
「こんばんは。」
僕が声を掛けると、二人は、驚いたように僕の方を見た。
「かなちゃんのお父様とお母様ですか?」
僕が尋ねると、女が訝しそうに口を開いた。
「ええ……そうですけれど。」
「綺麗な花火ですね。」
階段側にパパ、その横にママ。そして、かなちゃん。
「かなちゃん!大きな花火だよ!」
夜空を指差し、そう言った僕の声に、かなちゃんは、空を見上げる。
すごい音を立て、色鮮やかな花火が夜空を彩る。
僕は、ママの横に移動すると、かなちゃんと一緒に夜空の花火を見上げるママの肩を思いきり押した。
「えっ……?」
ママは、グラリと体制を交わし、パパの方へ倒れていく。
「おい……!うっ……うわぁああ!!」
「きゃぁぁぁー!!」
二人は、悲鳴を上げ、階段の下に、変な体制で落ちていく。
階段の下、変な方向に首や足首の曲がった二人が倒れている。
その二人を瞳を震わせ、見下ろすかなちゃん。
「かなちゃん!なんて言う事を……!!」
僕は、かなちゃんを強く抱き締めた。
僕の声と、大きな物音にアパートの住人が何人も出てきた。
やがて、夜の町をパトカーと救急車のサイレンの音が鳴り響いてきた。
アパートの住人の証言や僕の証言で、かなちゃんのパパとママは、事故死として処理された。
かなちゃんは、施設に行く事になり、隣は空き室になった。
「よく子供の泣く声が聞こえてました。児童相談所の方も来てたみたいだけれど、話を聞いてもらえなかったらしくて……。」
アパートの住人は、口を揃えて、そう言った。
虐待が行われていても、誰も助けようとしなかったのに。
みんな見て見ぬふりをしてたのに。
だから、僕も警察に言ったんだ。
「花火を見てたら、かなちゃんが急に母親の身体を押して、二人共、体制を崩して階段から落ちました。」
と。
でも、階段の下に落ちた二人の顔。
頭がパックリ割れて、赤黒い血が大量に流れて、首や足も手も、いろんな方向に曲がって、二人共、白目剥いて、口から泡を吹いていた。
もう、最高に……面白い顔だった。
思い出しただけでも、笑ってしまう。
やっと、自由になれたね。
もう、パパもママも、かなちゃんを叱ったり、殴ったりしないね。
気持ちの良い夜だ。
ー第二章 悪意のない殺人【完】ー
隣のサイコさん こた神さま @kotakami
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