2巻目 建築軍のメンバー
───放課後。
まだメンバーに選ばれた事にいまいち実感が湧かない
「よーし皆居るな。改めて、3年の
地弘と島が「どうも」と挨拶をすると霧峰は話を続けた。
「早速本題に入るが、私は皆の
霧峰の話を「ちょっとすいません」と遮ったのは地弘だった。
「どうした?」
「あ、いえ、どうして俺がメンバーに選ばれたのかなーって。俺の
「……それについてはおいおい話そう」
地弘の疑問に、少し考えた霧峰は指を立て答えになっていない答えを返した。
「とりあえず、分類について説明していいかな?皆それとなく知ってると思うが、入学したばかりの島君もいることだしね」
「あ、はい。すんません、お願いします」
「え〜、まず私達の操る
「はい!入学して最初に教えてもらいました」
島が反応した。
「よし、それなら再度確認って事で。まず、
──霧峰が説明したように、
「例えば、何も無いところから剣を生み出すような
「えっと……展開型ですか?」
島の答えに霧峰は大きく頷いた。
「そうだな、私もそう思う。でも、センス……あ、センスってのは
「あ、そうか!ということはセンスから剣への変化。つまり、変形型も考えられる訳ですね!」
「そうゆうことだ。系統だって剣だから攻撃系と思い込んではいけないよ。ちなみに、そいつが持つ剣を生み出す
「なるほど……分かりました!」
島は大きく返事をする。地弘も「確かに」と頷いていた。
「あと、このセンスだが、
霧峰の全身から透明なモヤのようなもの……センスが立ち上る。これがインプロだ。
「……とまぁこんな感じだな。じゃあ早速
「じゃあ、まずは僕から教えようか。といっても見てもらった方が早いかな」
手を挙げたのは木上だ。
木上は人差し指を上に向けた。すると指先から勢いよく水が飛び出す。その水は広がったり落ちたりすることなく、ある程度の細さを維持したまま途切れる事無く部屋中を駆け巡り、木上の身体の周りに留まった。
「これが僕の
そう言いながら木上は人差し指を軽く振った。すると、木上の身体の周りに留まっていた
再び指を振ると水の糸は水の輪になり、時計の周りを回り始めた。すると、その輪の回転に合わせて秒針が早く動きだした。
島と地弘の驚きの声が館内に柔らかく響いた。
「
木上は
(すごいけどなんでこんな
地弘は不思議に思った。それもそのはず。コミックマッチは毎回少しずつルールが変わり、チームの相性や
「僕の次は…じゃあ2年の、えっと…」
「あ、|中河地弘(よしかわ くにひろ)っす。んと、俺の
地弘はそういうと掌を前に突き出し、全身からセンスを放出した。放出された透明なモヤのようなセンスは突き出した掌の先に集まり、1本の短い槍のようなモノが現れた。地弘が少し手を突き出すと傘が開くように、
「左右の掌から1つずつ出せて、衝撃を受けると消えます。どんくらいの衝撃に耐えるのかは、やったことないっすけど時速80キロの車を止めるのは楽でした」
「へー!絶対的な防御力を誇る
木上が感心した表情で言った。
「あと、傘の内側が弾きます」
そう言って地弘は傘の内側を上に向け、その上に飛び乗った。
ポヨンという軽い音ともに地弘は高く飛び上がった。
「受け止める外側に、弾く内側か。絵に描いたような防御系だね」
「俺はこんな感じっす」
地弘が
「1年の島です!僕の
「ん?」
島の説明に木上と地弘は首を傾げた。
「そりゃ、そんな顔にもなるな。よし、島くん、私に対して
そう言いながら、霧峰は島に近寄った。
「分かりました!では、失礼します!」
島はセンスを纏った右手で霧峰の肩に触れた。すると霧峰の胸の辺りから黄色い玉のようなものが出てきた。
ふわふわと空中に浮かぶそれは、ゆっくりと島の胸に入っていった。それと同時に、パキパキという未開封のペットボトルを開けるような音と共に島の身体が淡く光った。
『これが私の
島の口調が変わった。それだけでは無い。声色、立ち振る舞いが霧峰のそれに変わっていた。
「おお!すげー!」
木上と地弘は声を揃えて叫んだ。
『ん?でもなぜ隠されているはずの性格をコピーするのに普段の霧峰先輩の口調なんだ?もしや、霧峰先輩は裏表が無い人間という事なのか?』
「そうゆうことになるんだろうな」
『素晴らしい。私も是非見習いたい』
「普段から自分に正直に生きることは、楽でいいぞ!」
『なるほどな。参考にさせてもらおう!』
「だーっ!もう分かった!ややこしいから戻れ、島!」
地弘が叫ぶ。
『それは…………申し訳ないです」
「なかなか面白い力だろう?思考も若干似るんだそうだ」
元に戻り謝る島に霧峰が補足した。
「確かに上手く他のチームの司令塔なんかの思考をコピーできれば裏をかいたりできるかもね」
木上が頷きながら答えた。
「最後は私だな。すまないが少し待ってくれ」
霧峰はそう言って、台車の上からいくつかの割り箸と輪ゴムを手に取った。そして床に座りおもむろに何かを作り始めた。
「ゴム銃……すか?」
「そーだ。
地弘の質問に木上は楽しそうに答えた。
「──よしできた。それでは
霧峰に言われたまま、地弘は部屋の反対側に移動しを傘開いた。
「それでは、いくぞ」
霧峰は、センスに覆われたゴム銃の引き金を引いた。部屋中に響く銃声と共に打ち出された輪ゴムは一瞬で15メートルはある体育ルームの向かいの地弘の元に届き、ドゴンッという轟音と共に輪ゴムは傘に着弾した。
「マジかよ!」
「ね?おもしろいでしょ?」
驚く地弘に木上は嬉しそうに尋ねる。
「私が手造りしたモノの性質や性能が数十倍になるのが私の力だ。分類は増幅型万能系。それが私の
────────
──「これで全員、お互いの
そう言い、霧峰は競技の説明を始めた。
今回のクラスマッチの大まかな内容は玉入れゲームである。フィールド上にランダムで現れるボールを見つけ、中央のゴールネットに入れる事ができれば1点。3学科が1つのフィールドで競う。
15点先取した場合、もしくは試合時間の20分が経って1番点数が多い学科が勝ちというルールだ。現れたボールはゴールに入るか、出現して1分半経つと消え、再出現する。
コミックマッチなので自分の
さらにフィールドは3つのエリアに分けられ、リーダーはボールが出現した時どのエリアに1番近いのかを知ることができる。
「──とまぁルールとしてはこんな感じだな。それで作戦なのだが、アタック&ブロック作戦でいこうと思っている。──」
コミックマッチの玉入れゲームの戦略は大きく分けて3つある。
1つ目は自分の陣地近くに現れたボールは狙い、そうでない時は効果範囲の広い
2つ目はどこにボールが現れようが全力で取りに行く、“オーバーアタック作戦”。
3つ目は、近いボールは取りつつ相手が取ったボールはゴールに入れさせない“アタック&ブロック作戦”である。
これをメンバーの
「──それで、役割だが主にブロックを私と中河、アタックを木上と島でやってもらいたい。だが攻め時では中河もアタックに行ってもらうし、我慢する時は島にもブロックについてもらう。島は攻めている内にブロックをやっている相手の性格をコピーしておけばブロック中に役立つし逆も然りだと思う。中河は
「なるほど。確かにそれだと攻守の両立ができていいかもしれませんね」
島が言った。
「あと、君たちはクラスの中でもインプロが得意な方みたいだから、シンプルな体力勝負になった時にも強く出れると思うんだ」
「なるほど……」
地弘も納得したようだった。
「それでは、明後日の放課後に練習をするから、ここに動ける格好で集合してくれ。解散!」
──────────────────────
──
黒いビジネススーツに身を包み、フチなしの眼鏡をかけた女性が、怪我を負いうずくまっている青年の前に微笑を浮かべながら立っていた。
「うぐぅぅ……もう……もう辞めてくれぇ!……俺は、そんな事望んじゃいない!」
青年は苦しそうに叫ぶ。その顔は痛みと恐怖で歪んでいた。
「……いいえ、|海原良樹(うなばらよしき)……貴方には嫉妬心がある。それは立派な欲に成長するわ。さあ、その欲を解放しなさい、
彼女はセンスを纏った右手で、青年の肩を掴んだ。
「う、うがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼女が掴んだ青年の肩から薄紫色の宝石の結晶のようなものが生えてきた。
「あら、綺麗なアレキサンドライトね。欲望は……“内なる殺意”……いいじゃない」
彼女は青年の肩の結晶に触れた。すると、彼女の指先で結晶は砕け散りカットされた宝石になった。彼女はそれを持っていたポーチに嬉しそうにしまう。
結晶が砕け散ると共に青年の瞳から色が消えた。
「これで私との契約は完了よ。既に人事部から貴方の
────────続く。
Story of Heroes @koki-soh
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