洞窟に潜む不老不死の龍と年端もいかない少女が邂逅する話(仮)

三門兵装 @WGS所属

まえがき

「ねぇ、おにーさんはどうしていなくならないの?」


 舌足らずな幼い声が洞窟の壁に反射する。


 僕の目の前にいるのは年端もいかない小さな少女。砂でぼさぼさになった髪の毛に、黄ばんで布切れの様になってしまった綿の服を着た彼女は、不思議な娘だ。


 彼女は知らない。どうして僕がこんなところにいるのかを。

 彼女は知らない。彼女は僕が死なないということを。

 彼女は知らない。彼女自身が僕を滅ぼしうるということを。


 けれども彼女は感じている。僕らみんなの、荒んだ心を。


「……ここが好きなんだ」


 だから僕はここにいる。さなぎを守るという目的ができたなら、少しはまっとうに生きられる気がしたから。

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