第三話 『兄妹の絆 1』

『吸血鬼』ライン・ファルレフィアと『煌星の影』レオ・ヴァルディの決闘が終了した翌日――


「兄さん、これから戦わない?」


朝食を食べ終わったあと、アレスはラインに戦うことを申し出た。アレスとラインは毎週の時間がある日は屋敷の外で戦うことにしている。これはもっと自分の力を上手く扱えるようになる為と身体能力を強化するためである。


「ああ。今日は時間あるしやるか」


「屋敷を壊さないでよ、2人とも」


「そこまではしねえよ」


「今まで屋敷3回壊してるからね? まあ毎回お兄ちゃんが元に戻してるからいいけど……いや良くない」


これまで2人が戦った後に3回屋敷が半壊してしまっている。その度にラインが『創世の神理』そうせいのしんりを使い屋敷を直している。


「セツナお姉ちゃん、今日私と一緒に庭園の花壇の手入れしてくれないかな?」


「うん。もちろんいいよ、レンゲ」


「ありがとう!」

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庭園に出てからすぐにラインとアレスは戦い始め、セツナとレンゲは花壇に行った。


「またお兄ちゃん達派手にやってるね…」


「いつも元気だよね。夜じゃないのに」


セツナとレンゲは花に水をあげたり周囲の木の枝を切ったりしていた。かなりラインたちとは離れているはずだが2人の戦う音がよく聞こえる。


「やっぱ毎回毎回強くなってるよな、アレス!」


「兄さんもね!」


2人が血液操作をしながら戦う姿は誰から見ても美しく見えるだろう。吸血鬼として疲れや体力切れを知らない彼らは気の済むまで戦いに集中することが出来る。

2人の力は互角、既に3時間は戦い続けている。


「くっ!」

アレスの蹴りがラインに命中し飛ばされる。しかしこれで2人の戦いは強制的に終わってしまった。


アレスの蹴りで飛ばされたラインは先程まで妹達が手入れしていた花壇にぶつかり花壇の花をぐちゃぐちゃにしてしまった。


「しまった…」


「お兄ちゃん!アレスも! さっきまでちゃんと手入れしてたんだけど!!」


飛ばされたラインの所にアレスも移動しセツナに怒られてしまう。一方レンゲは下を向いたままいつもの明るく元気な姿とは思えない暗い顔をしている。


そんなレンゲの姿見たラインとアレスはすぐに2人に謝ろうとする。しかしそんな間もなく――


「うっ!?」


見えなかった。一瞬の速度でラインとアレスはレンゲに吹き飛ばされ2人は地面に倒れる。


レンゲは兄妹の末っ子で創世神の力より吸血鬼の力の方を色濃く引き継いでいる。その為、吸血鬼の力だけの戦闘ならレンゲに対して他の兄妹が襲いかかっても10秒で壊滅出来る。そんな強力な力を持つレンゲだが、普段は元気一杯で明るく、花を愛でるのが好きで戦闘を好まない心優しい性格をしている。彼女が戦闘をする時は彼女の「大切なもの」が傷つけられた時だ。

今回はレンゲとセツナが大切に育てた花壇を潰され、怒りで2人を飛ばしてしまった。


「ラインお兄ちゃんとアレスお兄ちゃんのバカ……」


そうしてレンゲはすぐに自室に戻って泣きながら寝てしまった。

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「レンゲを怒らせちゃったね、お兄ちゃん達。大丈夫?」


「ああ。悪いことしちゃったな…」


落ち込むラインとアレスを見たセツナが提案をする。


「とりあえず花壇はお兄ちゃんが直して。それが終わったらレンゲに謝ってから出かけるよ」


「分かった」

瞬時に花壇を元通りにし、ラインたちはレンゲに謝りに行く。


コンコン!


「入るよ、レンゲ」


「さっきはごめんなさい。ラインお兄ちゃん、アレスお兄ちゃん。私とセツナお姉ちゃんが大切に育ててた花壇だから凄く悲しくて…」


レンゲの部屋に入るとライン達が謝るより先にレンゲが謝って来た。


「いや、僕たちも2人が育ててた花壇を破壊しちゃった訳だし怒るのは仕方ないよ。ごめんね、レンゲ」


「ごめんな、レンゲ。いつも大事に育ててたもんな。壊しちゃった花壇は俺が元通りに直したから」


「セツナもごめん」


「私のこと忘れたのかと思ったよ。私は吹き飛ばしてないけど怒ってるんだからね!」


ラインとアレスは申し訳なさそうな顔をしながら2人を見つける。セツナが先程提案したことを言うようにラインを睨む。


「レンゲ、今から四人で出かけないか?まだ13時過ぎだし。行きたいところとかないか?」


「お兄ちゃんたちとならどこにでも行くよ。出かけよう!」

レンゲにいつもの明るさが戻り3人は安堵した。直ぐに出かける準備を始め、四人並んで進んでいく。



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