10 吉見蒼正6
ひとまず停戦となったらお互いのパーティの動きを止めて、代表者の蒼正と聖女は地面に座って話し合う。
「だから、なんで僕の思い通りに動いてくれ無いんだ?」
「だから、それはこっちの台詞って言ってるでしょ?」
蒼正達は冷静に話し合っているからか、ある事に気付いた。
「てか……その顔って、昨日の悪役令嬢??」
「もしかして……昨日のヤンキー??」
キャラ設定は違うが、顔は本人のままだから昨夜の夢の事を思い出したのだ。
「ちょっ……意味が分からん。僕はお前なんて出て来いなんて考えて無いぞ」
「私もよ。なんで勇者みたいになってるのよ」
「だから僕の夢だからだよ」
「だから私の夢の中で勝手に動き回ら無いでよ」
ここからは水掛け論が続くが、どちらも引く事を知ら無いので
「そっちはそう思っているかも知れ無いけど、確実に僕の夢だって。現実世界に戻ったら、僕は高校生なんだぞ。そっちは分かん無いだろ?」
「何この入り組んだ設定……夢のキャラが現実世界って……」
「ほら? 即答出来無い。お前が夢のキャラで決定だな」
「ちょっと驚いていただけよ。現実世界では私も高校生だもん」
「真似しただけじゃね?」
「そっちが私の頭の中を覗いて真似しただけでしょ」
どう言っても自分が夢の主だと言い張るので、蒼正達は自己紹介する流れとなった。
「僕はS市に住む田中太朗。西高に通ってる」
「私はS市の山田花子。北高の一年生よ」
ただし、本名は何故か秘匿。こんな子供みたいな夢を見ているのだから恥ずかしいのかも知れ無い。
「同じ市に住んで年齢は一緒だけど、学校だけ違うのか……」
「高校の名前は知ってるから、夢のキャラだと言う事は否定出来無いわね……」
「てか、山田花子って偽名じゃね?」
「田中太朗も偽名でしょ?」
まだどちらも夢の中のキャラだとは認め無いので、何か違う質問を考えてみる。
「お母さんの名前は?」
「どうせ同じ名前言うんでしょ? 同時に言おう」
「確かに……ま、試しにやってみよう。せ~のって言ってからな」
「いま、ハメようとしたわよね?」
「してないっつうの」
蒼正は親切で合図を言っただけなのに、聖女は疑り深い。ただ、自分でもそう思いそうと感じて、やはり自分の夢だと確信した。
「せ~の」
「有紀」「晴美」
「「……え??」」
だがしかし、母親の名前が違っていたのでは心が揺らいだ。
「何歳?」
「四十二歳。そっちは?」
「四十四……仕事は? 僕の方は広告代理店」
「うちは看護師……お父さんは??」
それからは二人の違いを確認する蒼正達であった。
「「う~~~ん……」」
話し合いの結果、ここまで知ら無い内容が出て来ているのだから、どちらも夢の中のキャラとは思え無い。しかし、それぐらいの創作はいつもやっているのだから、夢の中のキャラである事も捨て切れ無い。
「仮にだよ? 仮にお互い現実世界の住人だとしたら、この状況ってどう思う??」
「有り得無いと思うけど……夢が繋がったとか?」
「だよな……」
だが、相手の言い分を信じるなら、相手と自分の夢が繋がっているので到底信じられ無い。
「う~ん……気付かなかった事にする?」
「こっちとしては、夢を邪魔され無いならそれでいいけど……」
なので無かった事にする流れに。
「じゃあそんな感じで……あ~あ。なんかどっと疲れた」
「私も。もう今日は夢はいいや」
二人は理由は述べなかったが、久し振りに人とこんなにお喋りしたから疲れてしまったので、このまま夢を遮断して深い眠りに落ちるのであった。
翌日は寝坊した蒼正。やはり夢が繋がった可能性が否定出来無いから、中々ベッドから出れ無かったのだ。
今日は日曜日という事もあり、ダラダラと昨夜の出来事を考えていたら、有紀が部屋をノックして「いい加減起きなさい」と叱られる。
仕方がないので部屋を出て、朝食と顔を洗ったらすぐに自室に引っ込む。そこでスマホを使い、夢が繋がる事象があるのかと調べる。
一応ネットにはそんな話はあったが、眉唾物の都市伝説レベル。自分のように、夢の中のキャラが詳しい設定を話すような事は無く、兄弟や知り合いが出て来たとかなので、偶然同じような夢を見たか嘘の可能性が高いのだ。
調べ物をしていたらお昼となり、有紀から「部屋の掃除ぐらいしたら」と言われたので蒼正は渋々掃除機を掛ける。
それも終われば、後は好きな時間。分から無い事を考えるのも疲れた蒼正はラノベや漫画を読んだりして、様々な邪念を吹き飛ばす。
時は過ぎ、寝るにはいい時間になった頃に、蒼正は嫌な事を思い出した。
明日からまた一週間が始まる。いつもなら夕方から学校に行く事が憂鬱になるのだが、色々な事を考えていたからベッドに入ってからになってしまったのだ。
これでは中々寝付け無いのは目に見えているので、蒼正は昨日中途半端に終わった異世界勇者ハーレム物の夢の中の飛び込むのであった……
「なんでお前が居るんだよ!」
「なんであんたが居るのよ!」
だがしかし、城から出た先にはメルヘンチックな城が
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