第13話 燃える真実

廃研究所の廊下を駆け抜ける芹沢孝次郎と田代。その先には激しく渦を巻く青い炎と、それに照らされる不気味な暗い影があった。炎の熱気が空間全体を包み込み、近づくたびに空気が焼ける匂いが鼻を突く。


影は微動だにせず、青い炎を背にして立ち尽くしている。芹沢はその様子をじっと見つめ、すぐに足を止めた。田代もその場で立ち止まり、恐怖のあまり震える声で呟いた。


「まさか…まだ誰かがXX-501を使っているなんて…」


芹沢は田代に一瞥をくれると、特有の飄々とした口調で答えた。「いやぁ、これは面白い展開になってきましたねぇ。ですが、まずはこの炎をどうにかしないと近づけませんねぇ。」


その瞬間、青い炎が急に収縮し、まるで意志を持つかのように揺らめいた。そして、それと同時に影がふっと消えた。まるで存在そのものが炎に吸い込まれたかのようだった。


「これは…?」

芹沢が目を細めて立ち尽くす中、炎は次第に小さくなり、最終的に消え去った。そこに残されたのは、黒焦げになった床と、床の中心に落ちた小さな金属片だった。


芹沢は懐中電灯をかざしながら、その金属片に近づいた。それはまるで円盤のような形をしており、微かな青い光沢を放っていた。彼はしゃがみ込み、慎重にそれを拾い上げた。


「いやぁ、これが鍵になりそうですねぇ。」

芹沢は金属片を指で回しながら観察する。その表面には細かい刻印があり、そこには「XX-501」というコードと共に見慣れないロゴが刻まれていた。


田代が金属片に目を凝らすと、そのロゴに見覚えがあるような表情を浮かべた。


「これは…ライフクエストのものじゃない。これは別の…いや、確か…」

田代の声が震える。


「何か心当たりがあるんですか?」

芹沢が問いかけると、田代は困惑したように首を振った。


「いや、ただ…このロゴは以前、研究の外部委託を受けた企業のものに似ている気がする。その企業が、ライフクエストのプロジェクトに関わっていたという話を聞いたことがあるんだ。」


「ほう。それは面白いですねぇ。」

芹沢は金属片をポケットにしまい、立ち上がった。「その企業について詳しく教えていただけますか?」


「名前は…確か『ナノフュージョン・テクノロジー』。特殊素材の研究をしている企業だと聞いています。」

田代の声はますます不安げだった。


「なるほど、次はその会社を調べる必要がありそうですねぇ。」

芹沢の目が鋭く光った。


二人は再び施設の奥へと足を進めた。廊下を抜けた先には、巨大な金属製の扉が立ちはだかっていた。扉にはカードキーのスロットがあり、上部には警告灯が設置されている。警告灯は消えていたが、扉自体は頑丈で、簡単には開きそうになかった。


「ここには何があるんです?」

芹沢が尋ねると、田代は少し躊躇しながら答えた。


「ここは…機密データを保管していた場所です。研究の核心部分はこの中にあるはずですが、カードキーがなければ開けられません。」


芹沢はポケットから金属片を取り出し、それをカードスロットにかざしてみた。しかし、反応はない。


「いやぁ、期待したんですが、これは違うようですねぇ。」

彼は肩をすくめた。


その時、廊下の奥から再び足音が聞こえた。二人が振り返ると、誰かがゆっくりとこちらに近づいてくるのが見えた。その人物はフードを深く被り、顔は見えない。


「誰だ!」

田代が声を上げる。


フードの男は立ち止まり、静かな声で言った。「お前たちはここにいてはいけない。XX-501に触れるな。それが命を守る唯一の方法だ。」


その言葉を残し、男は再び姿を消した。まるで幻影のように、足音も気配も跡形もなく消えた。


金属扉の前に立ち尽くす芹沢と田代。その背後で再び青白い光が漏れ始める。二人が振り返ると、先ほど消えたはずの青い炎が再び廊下を埋め尽くし、扉の前へと迫りつつあった。


「いやぁ、どうやら急いだほうが良さそうですねぇ。」

芹沢は田代を促し、廊下の奥へと逃げ出す。炎が扉に迫る中、施設全体に警報音が響き渡った。


その瞬間、施設全体が揺れ、廊下の天井が崩れ落ちる音が響く。青い炎が二人のすぐ後ろまで迫り、視界が熱と光で覆われたところで、シーンは幕を閉じる。


次回予告


突如現れた謎のフードの男。そして、再び巻き起こる青い炎の暴走。金属片に刻まれたロゴが指し示す「ナノフュージョン・テクノロジー」とは何なのか?

次回、「扉の向こう」――科学の闇が、ついにその真の姿を現す。次回もお楽しみに!

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