第8話 ハーレイ

 石畳を蹄が叩き、車輪が滑る。

 ティルホウの町中を一台の古めかしくも重厚な造りの箱馬車が、左右前後を騎馬に囲まれながら走っていた。

 窓には日除が引かれ中は窺えないが、乗降ドア部分に家紋が描かれており、貴族の乗る馬車であることがわかる。

 詳しい者が見れば、馬車に施された細工の意匠や家紋の色から、乗っているのは伯爵位の貴族だと判断できただろう。

 内部は向かい合う形の4人掛けで、意外なほどに広い。座席には柔らかなクッションを敷き詰め長時間の移動も苦にならないよう工夫が施されている。


「——ですから。その件に関してはもう何度もお話したはずです父上」


 馬車の室内にうんざりした様子を隠そうともしない声が響く。

 会話の相手は声の主と向かい合って座る人物ではない。

 声の主が耳元に当てている細長い砂時計に似た形の魔道具マジックアイテム、伝心機。

 互いの魔力をそれぞれの伝心機の魔導石に登録することで、遠距離でも音声のやりとりを可能にする魔道具。その伝心機の向こうに居る人物だ。


 馬車の中から伝心機で通話をしているのはシフレシカ・デイル・アオノ伯爵。

 切れ長の涼やかな碧眼を鋭く尖らせ、不快の表情を浮かべてなお玲瓏とした美貌は損なわれない。

 シミひとつない白磁を思わせる精緻な造作の顔左半分は、艶やかな銀髪がベールのように隠している。

 細身の体を包むのは華美ではないが仕立てのいい立襟のコート。その下に刺繍が施されたシャツとベストを着込み、膝下のパンツにロングブーツを履いている。

 わずかな胸の膨らみがなければどこかの王子様と見紛うような出立ちの麗人だ。


 年頃の少女らが見ればときめかずにはいられないだろう端正な容姿でありながら、シフレシカ本人は全く頓着せず乱雑に顔半分にかかる髪を掻き上げる。その下から左目を覆う黒革の眼帯が覗いた。


「もう現地に着いたのです。今更何もしないで帰れと?父上は私に観光旅行をさせたいのですか?忙しい執務の合間を縫って作った貴重な時間を田舎の澄んだ空気を吸ったら帰ってこいと?それはそれは、全く。ありがたくって涙が出そうですよ」


 流れるようなシフレシカの皮肉に、伝心機の向こうから返ってきたのはとても耳元で聞いてはいられない怒声。

 シフレシカは手にした伝心機を顔から遠ざけてやりすごすと、侮蔑の眼差しで伝心機を一瞥して「ああっ!」とわざとらしい大きな声をあげる。


「あー、これは……どうやら通信状況が宜しくないようです。魔導石の不具合かも知れません、我が家のものは何もかも古めかしいものばかりですから、乱雑に扱って貰うと困りますよ父上。それでは」


 棒読みもいいところな雑な演技で、無理やり通話を切ったシフレシカの耳をくすぐるように、密やかな笑い声が向かいの席から聞こえてきた。


「バンデオール様、まだ反対されているのね」


 柔和というより婀娜めかしい印象を与える垂れ目がちなルビーの瞳。薄らと笑みの形にたわむ唇も艶やかに、匂い立つような美女が束ねることなく肩に垂らしたピンクブロンドを指先で弄びながら苦笑している。

 男であればつい目で追いたくなる華貌の持ち主だが、その首から下は無骨な金属甲冑プレートアーマーに覆われ、すぐ横には大振りの剣が一振り、鞘に収めた状態で置かれている。


 護衛騎士ララディア・ニースの言葉にシフレシカは眉間に皺を作り、ふんと鼻を鳴らす。


「病んだからと爵位を譲ったくせに、いつまでも私のやり方に口を出して……あの頑固者の強情っぱりめ。神官どもの祈祷は病気以外にきかないのか?」

「あらあら、強情なところはアオノ家の遺伝よ。それはさすがに神官様だって治せないわ」

「……それは私も強情だと言いたいのか、ララ」

「ふふふ、にぶいわね。そう言ったのよ、シフ」


 ララディアのにべもない言葉にシフレシカはむすりと黙り込む。主従関係にあるが、お互いしかいない空間でのやりとりは気安い。

 乳母姉妹でもある2人の付き合いは、それこそ赤子の頃から続く。

 姉のように慕っている護衛騎士の。見た目の嫋やかさに反して遠慮がない物言い。それを許し、必要としているのはシフレシカ自身なので遠回しに喧嘩両成敗されたことは不満なものの、父親相手であれば流れるように口から出てきた反撃の言葉が何一つ思いつかない。

 それでも彼女にだけは、幼い頃からそうであったように味方をして欲しいという気持ちもあった。


「…………ララも、今回のことに反対なのか」


 つい不満が口をついた。

 年甲斐もなく子どものような不貞腐れた声音に自らの甘えを認めて内心舌打ちする。

 そのことに目敏いララディアが気付かないはずはないが、ララディアは呆れることなく、首を横に振った。


「いいえ。私はいつだって貴方の味方よ。知っているでしょう」


 真摯な言葉を区切り、ララディアの眉が下がる。物憂げな表情にはありありと心配が浮かんでいた。


「でも博打だとも思ってる。それもただの博打じゃない。負ければ全て失うかもしれない大博打よ、シフ」

「……わかっている。だが父上のようなやり方では、どちらにせよアルアージェ皇国の貴族としてはやっていけないよ」


 まだ20代と年若いシフレシカの言を、不遜な物言いと判ずる者もいるだろう。しかし伯爵位を継ぐ前から、方々手を尽くしてきたシフレシカの努力を、一番近くで見てきたララディアは彼女の言う通りだと理解している。


 先先代の頃、事業に失敗し続けた負債が今のシフレシカの代まで積み重なり、アオノ家の家計は火の車だ。

 そんな財政難を如実に表しているものの一つが、シフレシカ達が乗る家紋が刻まれた馬車。

 大事に管理されてはいるものの、流行の先端に居る貴族からすれば時代遅れ甚だしい。


 昨今、貴族や豪商達の長距離移動手段は飛竜艇ドラゴンキャリッジに移行しつつある。

 飛竜の生み出す魔力を動力源に、多種多様な魔道具を組み込み空を航行する大型の飛竜船ドラゴンシップ。これを元に軽量化と小型化に成功したことで、個人所有が可能になった最新の移動手段が飛竜艇だ。


 飛竜を用いて上空を行くことにより、魔物対策と野盗対策、移動距離と時間の短縮を可能にした完全なる馬車の上位互換。飛竜艇に比べて馬車の優っているところなど管理のしやすさと維持費くらいのものだ。


 この風潮の中、伯爵という位の貴族でありながらいまだ地上を征く馬車を使っているのは、懐古レトロ趣味と言えば聞こえがいいが、実際には新しい技術を手に入れる資金がないだけなのは明白。

 名ばかりの伯爵家。それが今のアオノ家の現状だった。


 そんなアオノ家の財政を何とかしようと若き伯爵として、シフレシカはやれるだけのことはやった。


 それこそ資金繰りを見直し、切るべきものを切って節制し、堅実な領地運営で徐々に建て直そうとした。

 しかし。それだけでアオノ伯爵家の財政をどうにかできる段階はとうに過ぎていた。

 そこまで追い詰められているのだ。


「ええ。だから反対しない。貴方が考えて競飛竜レースドラゴンの竜主になると決めたなら、私は否定しないわ。——もし今回のことで失敗した時は……そうね、私が冒険者になって養ってあげる」

「その時はお茶汲みにでも雇ってくれ。誰かさんみたく舌を痺れさせる色付き水は出さないと誓おう」

「まあ。使用人になるなら、まずその減らず口を止めないと雇ってもらえないわよ」


 問題は山積みだが、幼馴染と交わされる軽快なやりとりにシフレシカの心は少しだけ軽くなる。

 同時にララディアに誤解されていることを否定しておかなければいけないと思い口を開く。


「なあララ。もしかして勘違いしているかも知れないから言っておくが。何も私は賞金目当てに飛竜を買うわけじゃないぞ。もちろん勝ってくれるなら万々歳だけれど、そう上手くはいかないよ」


 シフレシカの言葉を受けたララディアは驚いたように目をしばたかせた。


「そうなの?競竜って報奨金が出るんでしょう?1着は特に莫大なお金が出るって聞いたわ。優秀な競飛竜レースドラゴンが欲しいっていうから、一発逆転を狙っているのかと思っていたのだけど」


 ララディアの大真面目な様子に、苦笑しながら首を横に振って否定する。


「一発逆転を狙うのにきっと竜主は最も向かない選択だよ」


 素晴らしい血統だからと途方もない金額で手に入れた飛竜が、鳴かず飛ばずということが往々にしてある世界だ。ララディアの言葉はあまりに夢見がちで非現実的だった。

 一応レースに参加するだけでも、国から手当金が貰えるものの、負債をどうこうできる金額ではない。

 それでも多くの貴族が競竜に出資する理由。


 シフレシカは膝の上で両の手のひらを組むと、無二の友人に自身の考えを説明することにした。

 

「私が竜主になって手に入れたい本命は他の貴族とのコネクションなんだ。業務の提携、貿易、様々な交渉ごと。何につけてもコネがいるのに、今のアオノ家を見てみろ。父上の競竜嫌いおかげで社交界とは見事に疎遠だ。……まあ碌でもない縁談が舞い込んで来なかった点だけは助かったが」


 飛竜は人間の生活に欠かせない魔法の動力源、魔力を生み出す。

 研究の末に、生み出す魔力が多い個体ほど速く飛ぶと解明されて以来、より多くの魔力を生み出すよう血統の配合を重ねられたのが現在の競飛竜だ。


 競竜レースは今でこそ賭け事の側面も大きくなったが、元々は魔力消費の多い都心部へ効率的に魔力を供給し、同時に開催都市近辺から魔物を遠ざけるための儀式だったという。


 己の所有する競飛竜をレースに参加させることは魔力というリソースを献上し、魔物の侵攻から都市を守るということ。すなわち国力の増強、国への貢献でもある。

 所有する競飛竜がレースで優秀な結果を残せば、莫大な報奨金が手に入るだけではない。貴族社会では一目置かれ、優秀な競飛竜を所有している事自体が、あらゆる交渉ごとに使える有力な手札になりうるのだ。参加しない方がおかしい。


 貴族たる者、有能な騎士や魔法使いを多数抱えるよりも、優れた飛竜を一頭持て。

 貴族の間では有名な格言だ。


 貴族は挙って優れた競飛竜を購入し、中皇競竜ちゅうおうけいりゅう——皇都ヒビアを中心に、皇族及び公爵家直轄の四大都市で開催される国営競竜——へ出走させる。

 有力な貴族ともなれば、自身で竜牧場を所有したり、国の認可を受けて地方競竜を開催する者すらいるほどだ。


 逆を言えば。競飛竜を持たないということは、国への貢献を避けているとみなされ、痛くもない腹を探られる可能性すらあるということ。


 それほどまでに競竜とは、貴族にとって切り離せない、重要な社交の場なのだ。


「父上が疎かにしたコネクション作りをやり直すためにも、私が購入する競飛竜はある程度有能であってもらいたいとは思っているけれどね」


 手札は強いに越したことはない。だからこそ古くからのツテを使い、馬車での長距離移動という危険を侵してまで、隣領にあるこのティルホウの竜牧場を訪ねるところなのだ。


「これから向かうのは堅実な実績を持ちつつ、我が家の財政でも手の届く値段で交渉できる竜牧場でね。手堅い手札を数枚持てれば、他貴族に先代とは違うと印象付けることができるはずだ」

「ふぅん。竜牧場といえばこのヤジール伯爵領の先、クロトーワ公爵様の領地が有名よね?そこはだめなの?わざわざここに来なくったって……」


 ララディアが上げた大貴族の名前にシフレシカは大袈裟に肩をすくめて見せる。


「無理無理。あの辺りはクロトーワ家の竜狂い姫が出資している牧場なんだ。それこそツテもない状態で飛竜を買いたいなんて言っても、門前払いされるのがオチだよ。それにもしもこの地で襲われたら……それはそれで手間が省けるだろ?」

「自分を囮にするようなことはやめてほしいのだけど」

「ララや騎士団の力を信じているのさ」

「寿命が縮む思いをしている私達の身にもなってほしいわ」


 はあ、と重い溜息をついたララディアは、座面に張られたベルベットの生地を撫でる。厚い手甲に覆われた指先では、生地の滑らかさなどわかるはずもないというのに。

 ララディアが何かを言い淀んでいる気配を察して、シフレシカは残された右目で先を促すようにじっと見つめる。


「ねえ……ところでシフ。あなたさっき縁談が来なくて良かったって言ったじゃない?結婚、しないつもりなの?」


 視線を手元に落としたまま、歯切れ悪く問いかけたララディアに、シフレシカは「いや」とわざと軽い口調で否定する。そして何でもないことのように続けた。


「後継は必要だから結婚はするつもりだよ。だけど、どこでもいいとは思わない。弱ったアオノを啄もうとする禿鷹なんてごめんだし、私のやり方に口出しするお喋り烏もお断りだ。そうなるとなかなかに条件が厳しいだろ?」

「……夢も希望もないわね」


 明け透けな物言いに、ララディアが呆れたように笑いながらため息をつく。その笑みの影に安堵を見たシフレシカも、軽薄に鼻で笑ってみせる。


「夢で家が再興するなら、その時は夢を見るさ」


 傾いたアオノ家を背負ったシフレシカは、夢見る乙女にはなれない。

 父親がもう少し貴族として責務を果たしてくれていたなら、違ったかも知れないが。

 他の貴族に後ろ指をさされながらも、頑として競飛竜を持とうとしなかった父親を思い出し、シフレシカはため息を吐く。


「——しかし父上は、どうしてここまで飛竜を買う事に反対されるのか。競飛竜を持つことは爵位を持つ者として義務ですらあると言うのに。今も昔も頑なに遠ざけている」


 どんな理由があるにせよ、父親の代で競飛竜を購入してくれていたら。その飛竜が少しでも成績を残してくれていたら。

 家督を継いだシフレシカの苦労は、今よりずっとマシだっただろう。

 不毛なたらればと理解しつつ、何度繰り返したかわからない思考を遊ばせる。


「私も詳しくはわからないけれど……。きっと先先代様のことが関係しているのでしょうね」

「お祖父様か……確かに我が家の財政を傾けた方ではあるらしいが」


 先先代アオノ伯爵家当主は、シフレシカの父方の祖父に当たる。

 シフレシカが物心つく頃、すでに故人であったため彼の事は記憶にない。

 しかしその祖父から爵位を継いだ父は、財政の苦しい中で爵位を押し付けられ、良く思っていなかったのだろう。祖父の事を多くは語らなかった。

 語ること自体避けていたと言っても良い。

 長く家に仕える家令や、騎士長と侍女頭を務めるララディアの父母もそうだ。



『ヒヒィィィィィンッ!!』


 物思いに沈みかけたシフレシカの思考を引き上げたのは、馬車を引く馬の鋭い嘶き。

 次いで馬車がガタッと揺れ、乱暴に急停止する。


「なっ……」

「シフ!」


 慣性に従って、前のめりに浮きかけたシフレシカの身体を、黒塗りの無骨なガンドレッドが、見た目に反して壊れ物を扱う様に柔らかに受け止める。

 シフレシカを抱き止め、そっと座席に座らせたララディアは、険しい顔つきで背面にある御者台を睨む。


「何事ですか!」

「も、申し訳ありません!空に突然光が……魔物かと警戒致しました!」


 荒々しい運転を咎めるララディアの叱責に、外から御者が慌てて答える。


「魔物?竜牧場が二つもある町の上空に?」


 言外にそんなはずはないだろうと含ませながらも、ララディアは素早く剣を手繰り寄せ、外を警戒する。

 シフレシカも、反対側の窓に掛かった紗幕を軽く持ち上げて周囲の様子を観察する。

 馬車を取り囲む騎馬に乗った護衛騎士達は、もれなく天を仰いで停止していた。

 それだけではない。道ゆく人々も皆、足を止めて同じように空を見上げている。中には一点を指差して何事か言っている者もいた。

 何があるのかと興味を引かれ、衆目の集まる先を見る。


 町の上空。西の空。


 夕日を背に、それはあった。


「あれは……」


 夕映の茜色に染まった空を横切る一筋の光。青白い魔力が軌跡のように尾を引く、その光景。


「……ハーレイ?」


 思わず声に出して呟く。

 大災節の終わりを告げる女神。

 その名を冠した、今ここに流れるはずのない箒星の名前を。


 戦女神ハーレイ。青白く燃える長髪をたなびかせ飛竜の引く戦車を操り、三振りの剣を持った美しい女性の姿で描かれる。

 大災節の魔物を、手にした剣で追い払うとされ、魔物と対峙することの多い冒険者や、民間からの信仰が篤い。


 六罪竜の生み出す魔力がおおよそ20年周期で世界各地で一斉に強まり、強力な魔物が次々と生まれるスタンピート現象を大災節と呼ぶ。

 この期間は国、神殿、冒険者組合、魔術師組合を中心として、ヒュマール、エルフ、ドワーフ、種族の区別なく人類一丸となり対処に当たらなければならない。

 その大災節の終わりには必ず、東から西の空へと一条の箒星が現れる。

 いにしえの人々は大災節の終わりを告げる吉兆として、箒星に希望と戦女神の姿を見出し、ハーレイと名付けた。



 そんな戦女神の名で呼ばれる箒星によく似た輝きが、しかし箒星よりずっと近くの空を流れるように飛んでいる。


 目を凝らして見ればそれは小さな飛竜だった。

 しかし様子がおかしい。今まで見たどの飛竜もあんな飛び方はしていなかった。


 羽ばたかず、翼を広げたまま。


 飛竜を多少なりとも知るものなら、あんな姿勢では絶対に飛べないと言うだろう。あれでは落ちていくばかりだと。

 だが人々の目を釘付けにするその飛竜は、翼を羽ばたかせることなく、箒星と見紛う程に鮮烈な魔力を放出しながら見たこともない速度で、あっという間に西へと翔け抜けていった。


 ほんの数秒の出来事だった。


 どくどくと耳元で心臓が脈打つ音がする。興奮で頬が熱くなるなど初めてだった。

 いつの間にか窓枠の縁を指先が白くなるほど強く握り、食い入るように窓の外を凝視するシフレシカを訝しむ乳母姉妹の声すら、今は遠い。


「あれだ」


 誰にともなく呟く。

 出会ってしまった。


 堅実な実績。それなりの優秀さ。貴族の社交界に乗り込むための手札。そんなシフレシカの思惑や計画を何もかも無理やり塗り替えてしまう恐ろしい存在だと、頭の片隅から警鐘が鳴る。


 けれど、それ以上に強い確信を抱いてしまっていた。


 あれこそが求めるもの。全てを賭けるに値する、シフレシカの人生を変えるだろう存在だと。


 運命の君に出会った乙女のようにきらきらと瞳を輝かせ、シフレシカは恋焦がれるように、いつまでも青い箒星の消えた方角を見つめていた。

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