突撃以外知らない私の恋はやっぱり突撃しか知らない
石田空
失恋理由は全部同じ
「……ごめん。君のことは嫌いじゃないし、好意はあるとは思うけど」
「けど……?」
告白するとき、いつもTPOは気にしている。
図書室の夕焼けの見える中、流れるそろそろ閉まる合図のクラシックをBGMに、カーテンの向こうからサーモンピンクの光が落ちてくる。
その中、私をじぃーっと見ている
うおぉ、眩しいっ。
日頃から図書室で図書委員をしている黄昏先輩を捕まえるのはなかなかの至難の業で、私は「こんにちは!」「今日もいい天気ですね!」と何度も何度も話しかけては、最初はうざがられていたけれど、だんだんお話してくれるようになって、やっと告白に持ち込めたのだけれど。
でも、黄昏先輩はこちらをクールに見つめているだけだった。
クールなんだ、この人は。私が告白しても、本当に全く微動だにしない。
「君の馬鹿さ加減は、観察している分には面白いけれど、恋人にするのは無理。他を当たって」
「は、アウゥゥゥゥゥゥゥ…………」
ズゥーン……と落ち込んだ。
黄昏先輩は、私が肩を落としても、気に留めることもなくさっさと閉館準備を進める。
「掃除してここ閉めるから、早く帰って」
「はいぃー……先輩さようなら」
「はい、さようならさようなら」
こちらは涙がちょちょ切れているのに、黄昏先輩と来たら、クール過ぎて全く微動だにせず私を図書室から追い出した。
私、
彼氏いない歴イコール年齢。
そして告白惨敗記録イコール年齢の女でもある。本日、めでたく告白惨敗記録が年齢と並びました。ちっとも、嬉しくない。
****
「だからね、未亜ちゃん。未亜ちゃんは直情的が過ぎてね、このまんまだと普通に恋は無理なの」
「無理ってなにぃ~、私は恋しちゃ駄目なんすか」
「あのね、未亜ちゃんはたとえるなら、合コンに出たら合コンですぐに彼氏ができてラブラブできる女子を引き立てるためのお笑い要員なの、なんというか、恋したいっていうよりも、面白い生き物になってるの。それじゃ全然駄目だからね!?」
「えっ……ひどい
「してません! だからたとえだってば!」
私が昨日、校内有名人の黄昏先輩にフラれたことは、どういう経由をたどってか既にクラスに知れ渡っていた。周りは私のことをこう言う。
「失恋記録ホルダー」と。嬉しくなんかないぞ。
友達の奈美子ちゃんはツッコむ。
「あのね。押して駄目なら引いてみろって言うでしょ? なんというかね、未亜ちゃんは押しつけがましい感じにどんどん押しちゃうから駄目だと思うの」
「押しつけがましいって……私が毎日毎日『こんにちは!』『差し入れどうぞ!』『今日も格好いいですね!』と言うののどこが押しつけがましいと……」
「気付いてない! 気付いてないから全然駄目なんだよ!?」
必死に奈美子ちゃんがツッコんでくれていても、私はいまいち納得できない。
だって。小学生のとき「目と目で通じ合う」って言葉を本気で信じて、好きになったクラスメイトを、そりゃもう毎日毎日、背中に穴があくんじゃないかと見つめていたけれど、全然通じなかった。
それどころか。
「あさぎり。なんというかこわい。というか、キモい」
……小学生男子の切れ味の鋭さよ。未だに私はその心の傷を抱えて生きている。
目と目で通じ合うなんて嘘っぱちだ。ちゃんと好きだとアピールしないと。だから私は好きになった相手に対しては、それはそうとアピールしまくった。アピールしまくって、必死で告白したものの、告白する頃にはだいたい相手に引かれていた。
「なんというか、朝霧は面白いけど、彼女にしたくない」
「面白いし、友達としては付き合いたいけど、恋愛的な意味ではナシ」
「いい奴なんだけどな、いい奴なんだけどときめかないんだ。ごめん」
な ん で だ よ 。
目と目で通じ合わないから行動してるのに、なんでどいつもこいつも私のこと全く好きにならないんだよ!?
それには友達は「ええと……」とアドバイスはしてくれる。
「未亜、なんというかね。ガツガツし過ぎて、その必死さが気持ち悪い」
「気持ち悪いんですか……恋する乙女は可愛くならないんですか……」
「それ。恋する私可愛いでしょアピールが無茶苦茶キモい」
「キモいって、言っていいことと悪いことがあるぞぉ!?」
「どんなトラウマ抱えてるんだ。とにかく、もうちょっと控えめに行ってみ? 上手く行くから」
そうかなあと思って、私は次に好きになる人を、控えめに。ただ見守るだけにした。そう。見守るだけ。見守るだけ。見守るだけ……。
「……朝霧さん、ストーカーするの辞めてくれないか?」
好きな相手に堂々とストーカー扱いされた。
やっぱり駄目じゃん! 私が泣きついたら、友達からは可哀想なものを見る目扱いされてしまった。
なんということだ。
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