推測



「すいませーん」

小学校の入り口付近にある、来客時の対応窓口にきた。


「はい、どうかされましたか?」


「すいません、昨日ここに避難しようとした者なんですけれども」


「はいはい、少々お待ちください。」

この手の質問にかなり慣れているようだ。




「お持たせいたしました。こちらにお名前と訪問理由をお書きください。」

渡された紙には似たような理由でここを訪れた人たちの名前が書きこまれていた。どうやら同じような人が何人もいたようだ。



「はい、書きました。

それでなんですが、昨日のミサイルに対する避難の時に地下に避難するように誘導があったじゃないですか、ここの小学校って確か地下がありますよね。」


「はい、ありますね。実際に昨日も何名か避難に来た方がいらっしゃいました。」


「なるほど、やっぱりそうでしたか、ありがとうございます。

それと、少しおかしな質問かもしれないんですが、昨日避難の時にこの小学校の正門のところに、なにか大きな動物みたいなものがいませんでしたか?」


「すみません、ちょっとわかりませんね。どこからそのような話を?」

どうやら隠したい何かがあるようだ、動揺が手に取るようにわかる。


「いえ、知り合いが何かを見たって言っていたので。そうですか、変な事聞いちゃってすみません。」


ありがとうがざいましたー、と言いながら受付を離れる。


ふりをした。




**********



「もしもし、はい、はい。そのことなんですが、このまま隠せそうですか?いえ、もちろん彼女には助けていただいたので協力したいのはやまやまなんですが、今日既に3人もライオンについて聞きに来てるんですよ。しかもなんか話が広がっているらしくって。はい、その方は他の人から聞いたらしくって...」



ビンゴ!!



どうやら一発目で当たりを引いたようだ。

さて、他の人に見られないように帰るとしますか!




***********


家についてダンジョン探索の準備をする前に、先ほど聞いたことをまとめる。


俺の予想があっていれば、この世界はかなりファンタジーなことになっているようだ。





まず、一つ思い違いをしていたのかもしれない。

あのとき、動物園から脱走したライオンが小学校付近まで逃げてきたのだと思った。実際ここから遠くない位置に動物園がある。


しかし、あの後いくら調べてもその動物園の動物が脱走したという情報が出てこない。

つまり、あのライオンは動物園のライオンではないということだ。

いや、予想が正しければライオンでもないかもしれない。


ヒントのカギとなったのは、オオカミにまたがって駆ける少女を見たという投稿。

普段であれば嘘、乙となっているところだが、今回ばかりは本当だったのかもしれない。


この『オオカミと少女』

政府の発表したいわゆる【正体不明の現象】。

つまり「何らかの能力を用いた人為的な」ものだったのでは?


同じことがあのライオンにも言える。

誰か、つまり受付女性の言う「彼女」によって、連れてこられた、あるいは生み出されたライオンだったのではないだろうか。

まあ、大穴で「彼女」=ライオンという可能性もあるな。



そして、どうやら「彼女」はそのことを隠そうとしていることが分かった。

また、受付女性の言っていた『彼女には助けていただいた』という発言。


かなり仮定を用いた推測にはなるが、その「彼女」がライオンを使って避難を「助けていた」のではないだろうか。

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