第一章 スケルトンダンジョン攻略 前編

初日

奇妙な地震

地震大国 日本

世界で発生する地震の約10%、マグニチュード6以上の地震の約20%が日本国内で発生している。

日本の比較的小さな国土に対して、発生割合の高さが伺えるだろう。


このため、巷では日本人の「地震慣れ」がささやかれている。

地震が起きても大きさ次第では反応もせず、SNSを確認するだけ・・・



この日起きた地震は【震度4】

日本に住んでいると年に数回程は経験する。

しかし、今回の地震にはいくつか奇妙なところがあった。

一つは震源が特定できなかったということ。


そして、この揺れは日本だけではなかったということ。




************



8月初旬の夜。大学生になり初めての夏休みに入り、溜まっていたゲームにやっと手を付けられた。プレイすること2時間程、ふと時計を見ると夜の10時を回ったところだった。


全ロス(キャラクターやアイテムなどをすべて失うこと)し、キリもいいので、一度飲み物でも入れようと思い立ち上がると、地面が揺れているのを感じた。


いつも揺れの基準にしている部屋のハンガーを見るとまだ揺れている。最近の地震の中では時間も長く大きめの揺れだった。


少ししても地震速報が流れなかったため、震源はどこかとスマホで調べながら、飲み物を取りに行く。部屋の中に倒れて困るものも特に無い。


部屋に戻りSNSを確認していく。想像よりも大きな地震だったようで、各地で揺れたことが投稿されている。

情報が錯綜しているようで様々な投稿を確認できる。自分の安否情報からよく分からない加工画像まで貼られており、動物園からライオンが脱走したという投稿を見て、一時のフェイクニュース問題を思い出した。


そして奇妙なことに震源を調べても情報が出てこない。

諦めて震度の分布を表すマップを見てぎょっとした。


(すべての地域が震度4?!)


日本の全体に震度4を表す薄黄色の四角いマークが表示されている。

これは流石にただ事ではないと思った。


(家族に安否の確認を...)







その時、スマホからけたたましい警報音が流れた。






同時に外からサイレンが聞こえてくる。






耳を傾けると      弾道ミサイルの警報だった。


緊急速報のメールを慌てて確認する。


内容は、


「ミサイルが発射された・落下推定時刻は約10分後の午後10時15分・落下予測地点は東京、大阪、名古屋、札幌、福岡・・・・」


あまりにも突然の出来事に頭が真っ白になる。





【すぐに頑丈な建物や地下などに避難してください。それができない場合は、屋内に避難し、できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋へ移動してください。】



外のサイレンから流れる避難誘導を聞いて我に返る。




(確か近くの小学校が緊急避難所で地下があったはず・・・!)


過去の自分の準備の良さに感謝しながら、急いで貴重品を身に着け、防災バッグを引っ張り出して準備を整える。



家を飛び出し表に出ると、喧騒が広がっていた。


道路には、我先に避難しようと車に乗り込む人、路上で泣き叫ぶ人、何故か殴り合っている人々、なかには避難誘導を行っている人もいる。


(避難所まで急いで5分、あと何分残っているか分からない。悪いがここにかまっている暇はない。)


騒いでいる彼らを無視して走り出す。


重いバッグを背負っているにもかかわらず、自分でも今までに出したことが無いようなスピードで走っているのを感じる。






もう少しで目的地である小学校が見えるはず!!











はずだった...


道を塞ぐような車両の渋滞。加えて歩道に乗り上げ炎上、大破している車


(避難時は車を使うなよバカが!!!!常識だろ!!)


心の中で罵りながらも、必死に迂回路を目指す。




迂回路として突っ切ろうとして侵入した工事現場。

避難が間に合うか分からない焦燥感。





そんな中、視界の端にが映った。






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