第12話 その心、烈火の如く

 頭が揺れている。衝撃が身体に伝わる。反撃をもらったんだ。当然だ。

 ぼんやりと周りを見回していると、セラの声が聞こえる。


「リオス! リオス! しっかりして!」


 俺はセラに担がれていたようだった。朦朧とした意識の中で状況を確認する。

 ミリィが広域攻撃魔法を展開して魔獣たちを一掃している。

 セラは斧を捨てて俺を退避させることだけに注力しているようだった。

 そして、ガイアドラゴン。またしても胸が大きく膨らみ始めている。


「セラ……ブレスが……来る」

「わかった! ミリィ! お願い!」

「いまやります!」


 ミリィがより強固な土壁を作り上げた。その陰にセラが滑り込んだ。


「っ! リオス? どうしたの?」


 俺はセラの右耳にナイフを軽く刺して穴をあけた。そして、俺の耳についていた紫の宝石の金色のピアスをセラの右耳につけた。【身体狂化】のレガリアをセラに託した。


「受け取ってくれ。俺のレガリア」

「れがりあ?」

「特別な力だから大事に使ってほしい」


 瞬間。セラが力に包まれたように輝いた。そして、セラは自身の変化を不思議そうに感じている。


「二人とも、俺を置いて逃げるんだ!」

「そんなことできません!」

「セラも頑張るから!」

「約束しただろ? これは絶対だ!」


 俺はブレスが終えるとガイアドラゴンに突っ走った。

 身体が思うように動かない。ふらふらとしながらも【加速】のレガリアで思い切り、身体を前に進める。

 後ろは見ない。ちゃんと逃げられているだろうか?

 俺は渾身の力を込めて聖剣を振り抜いた。しかし、剣が弾かれてしまった。俺は地面に転がる。

 そのまま前脚で踏みつぶされそうになる。だけど、逃げることは出来ない。俺は死を悟った。巨大な前脚が空を埋め尽くすように近づいてくる。

 しかし、身体がぺちゃんこになることはなかった。


「リオスはセラが守ります」

「セラ?」

「力が沸いてくるの! すごい何でもできる気がするの!」

「二人とも早く逃げてください!」


 ミリィが巨大な土の棘を横っ腹に突き立ててバランスを崩した。


「セラ! 回り込もう!」

「はい!」


 ガイアドラゴンの股下を抜けて奥に逃げる。そこにある光景に驚いた。


「宝の巣か」


 ガイアドラゴンが集めた金目の物がたくさんあった。目が着いた瞬間。電流が走る感覚を得た。


 (もしかしてここにレガリアが?)


「セラ。俺を信じて下がってくれるか?」

「死ぬためじゃないんですよね?」

「あぁ! きっとここにレガリアがあるはずだ!」

「それってこの力のようなものですか?」

「そうだと思う!」

「わかった! セラが足止めします!」


 俺は巨大な鳥の巣のような宝がいっぱい入ったものの中を漁り何かないかを探してみる。金色の聖杯やダイヤのリングなど金目の物がたくさんある。


「見つけた!」


 俺はその宝の中から鮮血のようなワインレッドの宝石に金色のリングの指輪を見つける。それは間違いなくレガリアだった。

 俺はレガリアをセラに向かって投げる。


「セラ! これを使うんだ!」

「これはなんですか?」

「【戦斧召喚】のレガリアだ。手の中に斧を思い浮かべるんだ!」

「わかりました」


 セラは目を瞑り、手を天上にかざした。すると真っ黒で巨大な戦斧が現れた。赤い縁取りがされた武骨な大斧。


「これが戦斧。セラの斧」


 セラは戦斧を構えて跳躍をする。疾風の如くガイアドラゴンの土魔法による攻撃を避けながら前脚を斬り裂いた。


 俺は聖剣を構えて祈りを込める。


 (頼む! みんなを守る力を俺に貸してくれ!)


 聖剣は俺に応えるように巨大な光刃を伸ばした。そのまま反対側の前脚を切り落とした。ガイアドラゴンがもだえるように咆哮をあげる。

 そして、俺が動く前にセラが動いていた。


「みんなを守るための力をセラにください!」


 巨大な戦斧の刃が輝きながら大きくなる。そのままセラは上空に跳びあがり前方に一回転してガイアドラゴンの首を切り落とした。


「やったのか?」


 ガイアドラゴンは動かなくなり鮮血を流している。

 俺はみんなを確認する。セラは戦斧をレガリアに納めてその力に驚愕している。ミリィは肩で息をしながらもなんとか無事のようだ。


「勝ったのか!」

「やりました! セラの勝ちです!」

「無事でよかったです!」


 みんなで駆け寄り勝利を喜んだ。俺たちは崩れるようにその場に倒れ込んだ。まさか倒せるとは思っても居なかった。俺たちは擦れるような笑い声をあげた。

 俺は宝物たちが集まった宝石たちをかき集める。金銀財宝がざっくざくだ。

 宝石たちのなかにちょうどいいレガリアがあった。黄色い宝石に金色の腕輪のレガリア。俺は不意に笑みを浮かべた。


「【収納】のレガリアだ」

「収納ですか?」

「あぁ、こうすると空間を開いて物を収納することが出来るんだ」

「便利ですね」

「あぁ、これでレガリアの保管が楽になる」


 これは最も欲しかったレガリアなのかもしれない。俺はガイアドラゴンを虚空に収納した。その光景を見てミリィとセラが目を丸くしてる。


「レガリアが順調に集まっている。あとは奪われたレガリアを取り戻さないと」

「でも、このレガリア? セラがもらっていいの?」

「うん、セラが使ってくれると嬉しいよ」

「ありがとう!」


 俺たちはガイアドラゴンを倒したことでレガリアを取り戻すことが出来た。俺は満足げに二人に言った。


「帰ろうか?」

「「はい!」」


 俺達はガイアドラゴンを討伐してレガリアを回収した。

 荒れた地面を踏みしめながら、街へと戻った。

 街に戻ったらそれはもうお祭り騒ぎで大忙しだった。

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