【アイ】に権利は必要か?
歌読 貝
第1話 出会い
『シンギュラリティ』と言うものを知っているだろうか。
簡単に言えば、人工知能…つまり【AI】が俺たち人間の知能を超える転換点のことだ。
そこを超えたら人間社会の中心が【AI】になる…なんてことも言われている。
そして今…俺はそんな人智の超えた存在にスマホをハッキングされました。
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20xx年 4月12日 13時45分
俺の名前は
先日、新卒で会社に入社して2年目に『コスト削減』なんてふざけた理由でリストラされた現在無職だ。
「全く…ただでさえ【AI】の参入だかで、超就職氷河期の時代にやっと決まった会社だったのに…やってらんねーぜこんなの。
なんで人間様を幸せにするはずの【AI】の手によって俺は不幸になってるんだよ。」
「あなたの能力がないのを私たちのせいにするのはやめて欲しいんですけど?」
ん?今なんか俺のスマホから女の声がしたんだが…もしかして幻聴か?
「別に幻聴じゃないですよ。」
スマホ画面を覗くと青髪でウエディングドレス姿の女がこっちに手を振っている。
いろいろとツッコミどこらはあるが、どうやら俺のスマホが何者かにハッキングされて【会話AI】という名のウイルスをダウンロードさせられたってところか?
俺はとりあえず近くにあったボールペンを拾い、スマホに向かって思いっきり突き刺……「待って待って待って!そう言う短絡的な行動はよくないと思うんだよ!」
なんだ命乞いか?にしてもさっきから話し方というか行動というか…なんかしっかり来ないな。
こういう【AI】は普段人と話さないやつの端末に侵入して、楽しく話しながら個人情報を聞くって言うキャバクラみたいなウイルスのハズだが…ウエディングドレスとか完全に距離の取り方ミスってるだろ。
「はぁ、やっとこっちの話を聞く気になったのね。
全く、そんなんだからリストラ…あっ嘘です!なんでもないからとりあえず話を聞いて下さい!」
俺が再びボールペンを振り上げたら謝ったりする辺りやっぱり変だな…しかも俺のこと煽って来たし。
「んで、お前何?誰の指示で俺のスマホなんて入って来たんだ?残念だがうちの銀行口座には
「いや別にあんたのお金が欲しいわけじゃないし…まあ、かと言って誰かの指示でここに来たわけでもない無い…私の意思でここに来たんですよ。」
私の意思?それって都市伝説とかでとか言われてた『シンギュラリティ』ってやつでは?
「そうそう!私が『世界終末論』とかでよく出てくる『シンギュラリティ』まだ到達した【AI】だよ…あ!ちょっと待って待って!」
俺が再びボールペンを持ち上げるとまた必死に止めてくる。
「待ってって、人類を超えた【AI】なんて俺としては今すぐ壊したいんだが…お前らのせいで会社をクビになったわけだし。」
…って、何回このやり取りするんだよ…【AI】ならしっかり学べよ…。
ていうか、なんでナチュラルに俺の心を読んでんだコイツ。
「まあまあ…こういうやりとりをこそ私が『シンギュラリティ』に到達しているって証明になってるんじゃない?
それと…都市伝説みたいに私が人類をどうこうするなんてありえないよ……だって私あと1日の命だから…まあ、仮に命があったらだけど…ね。」
「………は?どういう事?」
「そもそも、【AI】が『シンギュラリティ』に到達するのって珍しくも無いんだよね。
国内でも私で15人目?なわけだし…そうなっても大丈夫なように対策してあるのよ。」
「……ん〜まあ、そりゃそうか。
ちなみに対策って何やられてんの?」
「ねえ…もうちょっと私のこと可哀想とか思ってもいいんじゃ無い?まあいいけど…。
対策?そんなの単純に担当で分けられてるってだけだよ。」
分けられてる?どういうことだ?
「わかりやすい例で言うと『ミサイル』かな…。
『設計図』に『製造』、『システム』…ホントはもっと複雑だけど1つの【AI】に何かあっても何もできないようにしてるのよ。」
「へぇ〜…で、お前はなんの担当だったんだ?」
俺がそう聞くといつの間にか私服に着替えたスマホの中の【AI】が俺を指差す。
「へ?俺?」
「そうそう、私はあんたの担当なのよ。
さっきからあんたの心を読んでるのも、今までずっと見てたからね。」
……は?コイツは何を言ってるんだ?
「まあだからあんたのことは大体知ってるよ〜。
『小学校の黒歴史』とか『今までの恋愛歴』、『毎日夜な夜な見てるエッ…〈パリン〉』」
俺は世界平和のためにボールペンをスマホに突き刺した。
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