神出鬼没? ぼっちの美雨ねえさん

七七七(@男姉)

ぼっち牛丼

 ざわざわ…ひそひそ…


 先より、ここ牛丼『松明屋たいまつや』の店内が、なにやらざわめいているのはなぜか。

 

「…あんなスタイル抜群のド美人が、なぜひとりでこんな牛丼屋に…」


「うん、俺も思った」


 そう、カウンター席のみの店舗とあって、なおさら浮いた印象。その長い黒髪の美女こそが、このざわめきの理由である。


「もしかして、彼氏と待ち合わせかな」


「あいや、どこの世界に、牛丼屋で待ち合わせするカップルがいるんだよ」


 概ね確かに。


 で、その男性陣の視線を一身に、やがて牛丼の並とサラダを食べ終え店を後にした彼女は、房内美雨ぼうちみう。28歳。


 そもそも、どこへ行くにも何をするにもひとり…そんな彼女のことを、人は『ぼっちの美雨ねえさん』と呼ぶ。

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