スケルトンダンス(仮題)
無職無能の素人
第1話 生まれ変わっても底辺
西暦20XX年。俺の人生は詰んでいた。
金が無い、スキルが無い、歳を重ねて体も思い通りに動かなくなってきた。
誰かの助けに縋るのは嫌だ、馬鹿にされるのは嫌だ、同情されるのはもっと嫌だ。
他人に迷惑をかけないように生きてきた。善良だった自信はある。
だが社会の一員として生きるのは難しい。そこからこぼれ落ちた分際で、下らないプライドに縋り続ける自分が間違っているのは重々承知だ。
それでも俺は!人でありたい!
だからナイフを振り回す男の前に立ち塞がった。
どんな事情があったのか知らない。汚れた姿で何かを喚き散らしてナイフを振り回す男。
こいつも俺と同じだ、目を見れば分かる。俺だって何度も同じ事を考えた。
暴れる男のナイフが腹に突き刺さる。激痛が走るが最後の力を振り絞り、男にしがみついて道路に転がった。
揉み合う中、突然のライトに目が眩む。大きなトラックが迫ってきた。ここで終わりか。
だが俺はツイてる、こいつは悪党として生を終わらせるが、俺は悪党から他人を守った正義として終わるんだ。
価値の無い自己満足。だがそれでも俺が人生の最後に得たものだ。
「悪いな、助かったぜ」
「ちくしょう!ズルいぞ!」
間違いなく通じ合った。こいつと俺、大した差は無い。ほんの少し違えば逆だったかもしれねぇ。
「生まれ変わったら今度は俺が悪党をやってやるよ」
「生まれ変わったら俺が正義になる!」
踏み潰されて互いの命が終わる。正義などと思い上がったところで、俺の為に祈ってくれる人など1人もいなかった。
熱い。冷たかった体に熱い何かが入り込む。俺は死んだんじゃ?
ふと気がつくと暗く温かい場所にいた。なんだ?俺は生きているのか?
立ち上がろうとしたが体が動かない。麻痺?いや、何かに埋もれているのか?
くそっ!邪魔だ!ふんぬぁぁぁ!
体を押さえつける何を押しのけて立ち上がった。ここどこだ?
ひしめく満天の星。夜のはずなのに周囲がよく見える。灰色の夜?周囲には沢山の人が倒れ、乾いた血も見える。
(なんなんだよこれ……)
恐ろしい、夥しい死体が連なる地獄のような場所。戦場か?なんで俺はこんな所に?
カタカタ…、カタカタカタ……
(なんだ!?)
近くで死体が動き出したかと思うと、腐った肉がズルリと落ちて骨だけが立ち上がった。そのまま時間が止まったかのように突っ立っている。空洞の眼窩は虚空を見つめ、かすかな風に骨がこすれる音だけが響く。
(骨!?ス、スケルトン!?何がどうなってるんだよ!)
俺は力が抜けて座り込んでしまった。地獄に来てしまったのか?俺はそこまで悪いことをしてしまったのだろうか?うなだれて下を見ると、骨だけになった自分の足が見えた。
何も怖いことなんて無かった。俺も仲間だ。
俺はスケルトンとして蘇ったらしい。
生まれ変わったら悪になるとは言ったが、悪霊になるとは言ってないだろうがよ。
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