18話 アイシャ初めてのお風呂
部屋に到着した後は3人でルームツアーを行った。とはいえ、1人部屋。いくら高級宿とはいえそこまで見る場所もなく、ルームツアーはものの数分で終わった。
「この後なにするにゃ?」
「今日は休日だからね。特に予定はないよ」
「にゃら早速みんにゃでお風呂入るにゃ!」
「お風呂はいいけど、さすがに3人は厳しいと思うよ」
お風呂も決して狭くはない。ただし前世の一般家庭のバスルームと同程度であり、とても3人で入れる広さではなかった。
「にゃー。にゃら今日はアイシャに譲るにゃ」
「譲るって何をだ?」
「ファンと一緒に入る権利にゃ!」
「えっ!?」
アイシャがバッとシュムへと視線をやる。
「い、いやあたしは1人でも……」
「アイシャ、お風呂の使い方わかるにゃ?」
「そ、それは……」
「にゃらファンと一緒に入るべきにゃ」
……シュムとアイシャが一緒に入り、僕が1人という選択肢はないのだろうか。
疑問に思いながらも成り行きを見守る。
「ぐぬぬ……」
アイシャが悩むように声を上げる。その顔は真っ赤に染まっている。
出会ってから毎日一緒に身体を拭いていたのだが、やはりいまだ僕の前で裸になるのは恥ずかしいようだ。いやはや、至って普通の感覚である。
「ぐがー! わかった、わかったよ! ご主人と一緒に入りゃいいんだろ!」
「決まりにゃ!」
……なるほど、どうやらそこに僕の意見は必要ないようだ。とはいえ僕としてはアイシャと一緒に入ることに恥ずかしさはあれど、嫌という感情はないためその決定に特に文句はない。
ただしアイシャが嫌がっているのならば話は別である。そのため僕はアイシャに声をかける。
「アイシャ、嫌なら断っていいんだよ」
「い、嫌じゃないし! ……ただ恥ずかしいってだけで、むしろ一緒の方が──」
「アイシャ?」
「な、なんでもねぇよ! さっ! いくぞご主人!」
「ちょ、わかったら引っ張らないで!」
「ごゆっくりにゃ〜」
こうして成り行きに身を任せた結果、アイシャと共にお風呂に入ることになった。
◇
「ふーんふふふーん」
風呂場にアイシャの鼻歌が響く。
「ご機嫌だね」
「ご主人に背中流してもらえるんだ。そりゃご機嫌にもなるさ」
「そういうもんなの」
「そういうもんだ」
「そっか。よし、それじゃまず全身流すよ〜」
「あーい」
僕はシャワーを手に取る。そして適温のお湯であることを確認すると、彼女の肩口から流していく。
「あったけぇ」
「頭も流すよ」
「あいあい」
言葉の後、頭からお湯を流し、手櫛で彼女の艶やかな赤髪をとかすように指を通していく。
こうして全身を流し終えたところで、僕は石鹸を手に取り泡立てる。
「それじゃ洗っていくよ」
「ど、どんとこい!」
僕は泡に塗れた手を彼女の肩に当てた。
「……んっ」
そこから背中、腰と優しく泡を広げるように洗っていく。彼女のスラリとした筋肉と女性特有の柔らかさの両方が僕の手に返ってくる。
……やっぱりアイシャも女の子なんだよな。
ある意味では当たり前のことを思いながら、僕は優しく手で洗っていく。
「アイシャどうかな?」
「気持ちいいよご主人」
「それはよかった」
そのまま今度は左手、右手と両手を使って泡まみれにしていく。もちろん翼と尻尾も忘れない。こうして背面が終わったところで次は前面である。
「そ、それじゃこっち向いてね」
「お、おう」
アイシャが向きを変える。彼女の主張する双丘が目の前にどどんと鎮座する。思わずチラとそちらに目をやった後、その視線を彼女の容貌へと向ける。やはりというべきか、アイシャは真っ赤な顔でこちらをジッと見つめていた。
「洗うよ」
「う、うん」
いつもよりも弱々しい返事が返ってくる。しかしそれでも胸を隠さずに張っているところから、彼女の気の強さが窺える。
僕はジッと視線をやりながら、豊かな乳房へとチョンと指先を当てる。そこからおそるおそる手のひらで包み込むように触れた。決して力を入れていないのに、全ての指が柔らかなそれへとふわりと沈み込む。
……相変わらず暴力的な大きさと美しさだ。
僕はその感触を感じながら手を動かし、彼女の胸部にも泡を広げていく。
「次はお腹ね」
「ふぅ……ふぅ……おう」
僕は胸から手を下に滑らせる。そしてうっすらと腹筋が割れている綺麗なお腹に手のひらを当てる。
「大丈夫? こそばゆくない?」
「ん、ひゃっ……だ、大丈夫」
本当に大丈夫か? と不安になったが、本人が大丈夫というのなら問題はないかとそのまま続ける。
こうして上半身は洗い終わった僕は、続いて下半身の洗浄へと移った。
色々と言いたいことはあるが、一つ眼福だったとだけ言っておこう。
◇
その後、アイシャにお返しとばかりに全身を洗ってもらった。それはもう文字通り全身である。
その際に僕の局部を恥ずかしげに、しかしジッと見つめていた。彼女も16歳。子供のそれとはいえ、興味がある年頃なのだろうか。
こっちも視線を向けられ、手で揉みくちゃに洗われ、正直反応しそうではあった。が、10歳の僕には未だその機能は備わっていないようだ。
いつか反応してしまう日が、そしてそれを彼女たちに見られてしまう日が来るのだろうか。その時は──
……だめだだめだ。変なことを考えるのはよそう。そうだ、身体を洗い終わったことだしお湯に浸からなくては。
「ご主人、あたしが先に入ればいいのか?」
「そうだね。アイシャの方が身体が大きいし、そうしてもらおうかな」
「おう」
言葉の後、アイシャはゆっくりとお湯に足を触れさせる。そして温度が問題ないことを確認すると、全身を湯船に沈めた。
「くはぁ……」
「どう? 初めてのお風呂は」
「なんだよこれ、最高だな。シュムがあれだけテンション上がる理由もわかるわ」
「でしょ?」
「ご主人寒いだろ。ほら、ここに来な」
アイシャはそう言うと、両手を広げて僕を歓迎してくれる。僕はそこに収まるように湯船へと身体を沈めた。
途端に全身を柔らかな感触が包む。それは彼女が僕をギュッと抱きしめたことでより強まった。
「ちょ、ちょっとアイシャ」
「いいだろーこんくらい」
「まぁ、いいけどさ」
湯の温かさと、アイシャの柔肌を感じながら、無言の時間を過ごす。時折チャポンという湯の音が響く中、不意にアイシャが僕の肩に顎を乗せた。
「なぁ、ご主人」
「ん?」
「最初はご主人に負けて何クソって思ったけどさ、今はご主人に買われてよかったって思ってるぜ」
「どうしたの突然」
「なんか急に伝えたくなってな」
「僕もだよ」
「ご主人?」
「僕もアイシャと仲間になれてよかったって、心の底からそう思ってるよ」
「へへっ、なんか照れるな」
アイシャが僕を抱きしめる力を強める。その温もりを感じながら、僕は自身の考えを伝えた。
「……実はねこのままある程度お金に余裕ができたら、アイシャを奴隷から解放しようと思っているんだ」
「解放……」
「アイシャはさ、奴隷じゃなくなっても僕の側にいてくれる?」
「んー、どうしよっかなぁ」
「えっ!?」
「にしし、冗談。ずっと側にいるよ。だってご主人と一緒なら退屈しないだろうしな」
「もう、驚かせないでよ」
「わりぃわりぃ」
アイシャはそう言ってニッと笑う。それから続けるように声を上げた。
「ま、なんにせよこれからもよろしくってことで」
「うん。よろしくね、アイシャ」
言葉の後、僕たちは一緒に存分にお風呂を堪能した。
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