第1話

 「あれ、さっき海に投げ出されて死んだはずが」


 目を開けると知らない部屋だった。ベッドに寝かされている。なんだか異世界のようだった。周りを見渡していると


 「ああ良かった。目を覚ましたんですね」


 後ろから声が聞こえた。振り返ってみると一人の女性が立っている。


 「あなたは誰なんですか? もしかして僕を助けてくれた?」


 「私はアネットって言うの。あなたが森で倒れていて、心配でここに連れてきてしまったの。目を覚ましたようでよかったわ」


 「僕は琉海るかと言います。助けてくれてありがとうございます。もう大丈夫そうなので帰ります」


 なんだかよく分かっていないまま、感謝をする。この世界は何なんだろう。動こうとした時、袖がめくれて大きな擦り傷が現れる。するとアネットは


 「まだ傷が残ってたのね。ちょっと動かないで。治してあげる」


 そう言って、何かを唱える。なんということだろう。みるみる傷が塞がって、何もなかったような元の状態に戻った!


 「え、それって」


 「そう。これが私のスキル【治癒】相当大きな傷以外は治せるの」


 「スキルって誰でも持ってるんです?」


 「そうよ。この世界の人はみんな持ってるよ。あなたのスキルはなに?」


 「えっと、スキルってどうやってわかるんですか」


 「まさかスキルの知り方を知らないの!? スキル開示って心の中で唱えればわかるわよ」


 そう言われて僕は、「スキル開示」と心の中で唱える。すると目の前にいきなりデジタル的な画面が出てくる。


 「いま出てるこの画面ってアネットさんに見えるんですか}


 「いや、見えてないよ。スキルの画面は本人しか見れないの。ねえ、どうだった?」


 「あ、スキル……【釣り】、ですね」


 「釣りってあの海とかでやるやつ? 何の能力が使えるの?」


 「この能力って欄で見るんですかね。……えっとどこでも釣り具一式が出せる能力しかない、ですね」


 「まだ能力開放ができてないんだろうね。能力を使っているうちにスキルポイントっていうのが貯まるから、それでどんどん新しい能力が使えるようになったり、強化ができるよ」


 「経験をしなきゃなんですね。親切に教えてくれてありがとうございます。じゃあ僕はこれで」


 「もう行っちゃうんだ。なんかあったらここに来ればいいからね。それじゃ頑張って」


 僕は、助けてくれた人の家を後にする。おそらく僕がしたのは、異世界転生というものだろう。それももらったのは、スキル【釣り】、か。なんだか自分にあっている気がする。能力を使わないと、スキルポイントが貯まらないと言っていたし、とりあえずは、海か川を目指すことにしようか。


 僕は一人で歩いていく。









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