作家の悪夢

揺月モエ

作家の悪夢

私は最近、悪夢を見る。


私は、先日『悪魔と籠の鳥』という作品を書き上げた。


その中で、主人公を想っていた弟が出てくるのだが、無残に主人公に殺されてしまう。


悪夢というのはその弟に、「なんで僕を殺した』と言い、私を殺すのだ。


言い訳の暇も無い。毎回私は色々な方法で殺される。


目の前が真っ赤になって、そして目が覚める。


「いつまで続くんだろうな」



そんな悪夢の夜が続く毎日だったが、ある夜。


「おい」


「あ、はい」


また殺されるのだろうか…と思っていた。


しかし、予想外な言葉が投げかけられた。


「お前はなんで小説を書くの?」


「え?はい?」


私はこの質問に戸惑った。


「なぜ僕をあんな役にしたんだ?」と言われるものだと思っていた。


「質問に答えろ」


「あ、はい」


私は質問に答えるしか無いのだ。


私は小説にどんな想いを託してるか考え答える。


「私は恋愛を小説の中で体感したいから書いてる。だから主人公達は私の分身みたいなもの。ドキドキしたいから私にとって執筆は自己満だよ」


「変なの」


と彼は笑う。


「だろうね、でも私は物語の中で恋愛するモットーだから」


そう、私にとって小説を書くことは自己満だ。


好きだから、ドキドキしたいから書くのだ。


「アンタの気持ちは分かった。だったら書けるまで書けばいい」


「うん」


「ああ、あともう殺しに来ないから」


「さいですか」


「じゃあな」


その声と共に夢から覚める。


今日はいつもより目覚めがいい。


それはきっと殺されてなかったからなのもあるが、それだけじゃない気がする。


これからも私は私のために書き続ける。


それが私の生きがいだから。


END

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作家の悪夢 揺月モエ @nakamoe0429

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