第44話 そなたのことを想っているよ(ジスside)

 わたしの愛する阿月が天上の国へ旅立ってから、半年の月日が流れていた。ライアやメビウスは普段通りの生活を送っているが、どことなく寂しげなのも感じていた。


 わたしも彼らと等しく……いや、それ以上に阿月のことを想う日々が続いていた。


 無事に王宮に辿り着けただろうか、アルファに襲われていないだろうか、王子の子どもを産めるような関係性になっているのだろうか……。


「早くそなたに会いたい」


 阿月に渡した角の付いたネックレスは、今も大切に持っていてくれているだろうか。


 魔王の公務は淡々とこなす一方で、いつしかわたしもメビウスのように大聖堂に向かうことが増えた。メビウスと共に祈りを捧げる。この大聖堂は魔王であるわたしを信仰する場であるから、自分に対して祈りを捧げても、さして大きなメリットはないのだが。何もしないで部屋で悶々としているよりかは、と思って今日も阿月の無事を祈る。


 我ながら酷な選択を示した。王子の世継ぎを産み、その子を冥界に連れ帰るというのは、実際に成功させるまでに時間と、緻密な計算が必要になる。


 1番の不安が、阿月がシュカ王子と身体だけの関係でいられるかどうかだ。子を成すための行為は必要であるが、王子に無理やり行為を強制されてはいないだろうか。


 まさか、シュカ王子と阿月が運命の番なんていうことがあったらーーいいや、そんなことを考えても仕方ない。


 今はただ阿月の無事を祈るばかりだ。

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