第33話 討伐! オピオタウロス!
海である。海すら何年振りだよという感じなのに、帆船である。これはマジで人生初めてで、なんかすげえ感動した。
一応海流というものがあって、その海流に添いつつ、風を吹かせて進んでいくと、まあめっちゃ当たり前だが出発点とは違うところに辿り着く。出発点にどうやって戻るかは後で考えるとして、効率的にたどり着ける場所があってそこに有用なものがあればそれは「航路」ということになって、いい航路を見つけたらかなり大儲けができる。というのは世界が違っても成立することであるようで、この世界でも、新航路開拓者を募るとたくさん人が集まる。で、この航路を開拓するには、ある海流に群なす巨獣、頭が牛で体が蛇のオピオタウロスの住処を通らねばならないという。
そこまで発見されて、もう多分また一年とか経過しているのだと思うが、オピおタウロスの住処を突破したものはまだいない。
「しかしッ! 今日がその日だ、野郎ども!!」
ケイミーという女船長が俺たちを紹介して、船員たちを盛り上げた。
ううん。いやそこまでの戦力になるであろうかというのは疑問だが……。
しかし、確かにもともと多分ラマイの森のあたりというのは魔力豊富な地で、その辺で育っているのと、あと多分種族的性質として、魔力の自然発生量がそもそも
ってなわけで船旅だが、まあなんというか、海というのは不思議な空間で、漠然とした恐怖と不安とともに高揚する気持ちがあって、これはなんかハマるのわかるなあと思う。さすがに船員の皆さんはもう慣れっこのようだが、俺とユスラはわりと日がな一日海を眺めていた。まあ風も吹かさなきゃいけないからそういう理由もあるのだが、全体としては途方もなさと美しさに囚われてである。
と、竜とかヴァリスの民ほどではないが、遠目からもわかる魔力溜まりが見えてきた。あれがオピオタウロスの住処か。
性質としてはかなり牛のようで、顔は水中から出している。で、食性としてもかなり牛で、マジで海藻を食って暮らしているらしい。そういう意味では無害ぽいが、でも、縄張りを横切ると集団で突っ込んできて船を怖そうとするらしい。で、縄張り自体はかなり広大で、これを迂回しようとすると岩礁地帯とかを通らざるを得なくて危険なので、まあ、根絶ってのは無理があるが、ちょっとかわいそうだけれども一体二体狩ってやって、俺らの方が強いというところを示せば、無闇矢鱈と突進とかしてこなくなったらいいし、少なくとも一回はここ抜けて別の土地への航路が拓けると、まあそういうことらしい。
まあしかし今はとにかくこいつ自体を狩ることが目的なので、集団に「思い知らせる」まではしなくて良い。したがって、縄張りの端の方にいる個体を船団で取り囲む。自分らの近くに電撃を落とすととんでもないことになるが、この個体から数百メートル離れたところに雷嵐地帯を作って、他の個体の接近を妨げつつ、銛当ての加護を船団全体にかけ続ける。オピオタウロス側が波起こしの魔法とかを使ってきたら、こっちは消波の魔法を当てる。何体か集まってきたが、文字通り一網打尽にしてやった。俺らの魔力もだいぶ失われたが、4〜5体までならこの戦法で行けるね。20とか来られたらちょっと分からんが。
ということで、一体のなるべく若そうなオピオタウロスを引き上げ、あとは血抜きをしながら船で曳いて、とりあえず一回港町に帰ることにした。さあ、どうでしょうか。ちゃんと牛肉の味がしますようにと、魔法ではなく俺はただ祈った。
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