第11話 謎は謎

「明るくて、素直で、それはもう凄くいい子だったのに……今ではすっかり、あんな子に……」


 なんで、急にお母さんっぽい口調になるの?

 しんみりとするを話していたのに……。

 思わず首を傾げてしまった。


 そんな私の事などお構いなしで、瀬尾くんは自分の顔を指差し、どこか寂しそうに笑って言葉を続けてくる。


「ちなみにオレだって、そこそこ有名だったんだよ? あいつと同じ中学で一緒にプレイしてたからさ……」


 おおっ!? これまた意外な新情報。

 二人の仲が良い理由は、コレかな?と思う。


「そ、そうなんだ。瀬尾くんがバスケが上手くて、そこそこ有名選手だった事も内緒にしておくね」


 悪戯っぽく憎まれ口を言うと、瀬尾くんは楽しそうな表情になる。


「村瀬さんの笑顔、初めて見たけど、そっちの方がやっぱりいいよ。」


 どうやら私は笑みを零していたらしい。


 ムっとした表情に変えて、プイと顔をそむけた。


 変な人。

 でも、須川さんもそうだけど、瀬尾くんもそれほどキライじゃなくなってる。

 うん、やっぱり変な人だ。


 私はお礼も言わずに、足早に階段を駆け下りて、後ろにいる瀬尾くんに向かって手を振り、何か言ってくるのをスルーして、そのまま一人で学校を出た。



 バスに乗って、ほんやりと考える。

 瀬尾くんから得た情報だけでは、須川くんはバスケを避けていたらしい。

 プレイするのも、観るのも遠ざけていた節すらある。

 だとしたら、何で自分から男女混交チームに出るって言い出したのだろう?


 瀬尾くんが不思議がっていたのだから、瀬尾くんに聞いても分からないだろうし、かと言って本人に尋ねると、秘密という約束を破る事になるから無理だし……。


 そして、ふと我に返る。

 そもそも、どうして私が他人の、しかも男子の事で考えないといけないのだろう?

 久しぶりに『可愛い』と言われたから?


 そう言ってきた男子はみんな、遠ざけてきたのに、今は言われた人の事を考えてる私も変な人なのかな。


 うん、今日の私は変だ。

 本来、気にするべき久保さんたちのグループではなく、須川くんの事を考えているのだから。


 それに、不本意な事に笑顔を男子に見せてしまった。

 バスの窓から見慣れた景色が、流れていく――。


 オレンジ色に染まった風景を見て、綺麗だなと思ったのも随分と久しぶりな気がする。


 この時間は、決まって男子から告られる時の時間と色彩だった。

 私が男子を振る時の色彩じゃ、好きじゃなかったのにな――。



***********

このテンポの悪さ(苦笑)

タグに日常系と予防線を張っておいてよかった……(違)

 

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