1章

第01話 小学校でのいじめ

「うええぇぇっ!」


 給食の後、ぼくはトイレで吐いていた。別に給食が不味かったわけではない。もちろん、食べすぎたわけでも食中毒になったわけでもない。ただ、精神的に限界が来て吐いてしまっただけだ。




 ぼくは小学生の時、酷いいじめに遭った。戦いゴッコと称して殴る蹴るの暴力を受けたり、罰ゲームだと教科書に落書きをされたり。


「ほら、かかってこいよ」


「戦いゴッコなんだから、お前からも攻撃していいんだぜ〜」


 スクールカースト上位の男子達が数人でぼくを囲んでいた。三月生まれで一年生のときから小さかったぼくは、格好のいじめの対象になっていた。低学年のときは本当に『戦いゴッコ』だと思っていたが、ぼくは一方的にやられるばかりだった。


「このっ……」


 意を決して、ぼくは一人の男子に殴りかかる。だが、それは簡単に受け止められてしまった。


「やるじゃねーか。じゃあ、おれたちもやり返すぜ?」


 そう言うと、その男子が反撃してくる。ぼくも何とか腕で防御しようとするものの、別の男子に後ろから羽交い締めにされ、まともに腹を殴られてしまう。


「うげっ……」


「うげだって! うげだって!」


 思わず口から漏れた嗚咽混じりの声を、周りの男子が真似して囃し立てる。すぐにクラス全体で合唱が始まる。ぼくは目尻に涙を浮かべながら反撃しようとする。だが、すぐに別の男子に脇腹を蹴られる。


「ゲホッゲホッ……」


 苦しみのあまり、思わず地面にうずくまって咳き込んでしまう。


「ちょっと〜、横から攻撃するのはフェアじゃないんじゃな〜い?」


「そうだね。ショウくん、ごめんね」


「ごめんね! いいよ!」


 そんなぼくを見下ろしながら、からかう口調でフォローする女子。それに対し、ぼくに対してふざけながら謝罪の言葉を口にしてくる男子。さらに、それを一年生のときに教わった仲直りの言葉で囃し立ててくる別の男子。


 クラス中がぼくの敵になったような気がして、目から涙が溢れてくる。


「泣ーかした、泣ーかした! せーんせに言ったろ!」


 そんなぼくを囲んで、またクラス全体で合唱が始まる。男子も女子も、不良も優等生も。ぼくの味方になってくれる子は一人もおらず、完全に孤立していた。


「お前ら、いつまで騒いでるんだ! チャイム鳴ってるぞ!」


 先生が教室に入ってきて大きな声を上げる。それでクラスメート達は散り散りになる。ぼくだけがその場にうずくまったままだった。


「ショウ! そんなとこで寝てないで、お前も席に戻れ!」


 先生の怒号が教室に響き、ぼくはしぶしぶ席に戻る。その間も、小さくクスクスという笑い声が聞こえてきて、ぼくは教室から逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。

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