三面美人すぎて天寺先輩は青春ライフが送れない
結城辰也
第1話 三面美人すぎる天寺さん
美人の定義ってなんだと思う? 顔が良い? 性格が良い? スタイルが良い? そんな夢のようなステータスを持ち合わせた三面美人すぎる先輩がいたとしたらどうだろうか。
とはいえ転校一年目の俺では噂を耳に入れることしか出来ない。深掘りしていくとなんでも風紀委員長に目を付けられているほどだとか。一度でもいいから拝みたい限りだ。
今の俺は転校初日のため職員室に来るように言われていた。教室まで先生が先導してくれるようだと安心していた。だからこそグラウンドの土を踏み締め
だけど突き進めば突き進むほどに安心は薄れていきみんなと仲良く出来るかが不安になっていった。靴箱に差し掛かると急に影が覆い被さり不安を煽った。心の中で大丈夫と思ったが不安は拭いきれぬまま職員室に向かうことになった。
一度だけ下見にきたことがあるから迷子になることはなく自然と
「嫌です! 絶対に!」
職員室の中から謎の声が――。ふとしたときには職員室の扉を開け中に入ろうとしていた。なぜかそうしないといけないような気がした、ただもの凄く嫌がっていたから。
「天寺さん! 私は風紀委員長ですから! これ以上は逃す訳にはいきません! 分かってください!」
後悔は先には立たない。絶対に入るタイミングを間違えた。でももう後戻りは出来ない。ここまで来て尻尾を巻いてなんて出来ない。とにかく先生の元に急ごう。
「これ以上の風紀を乱す行為は――」
「行為ってなんですか?! 私はなにもしていません! ただ――」
「それでも三面美人と言う肩書きは風紀を乱します! 直ちにおやめください! 天寺さん!」
突然の言葉に俺は足を止めた。三面美人だと? 幸いなことに先生は俺に気付いていない。ここは立ち止まって盗み聞きをだな。
「そんな三面美人はみんなが勝手に」
生まれ持った定めが生き辛さをか。一年の分際で出て行っていいものか。しかも転校初日だぞ。変に目を付けられたくない。ここはどうすればいいんだ。
「停学処分になってでもですか」
「先生もいるところで問答無用に言うなんて! 酷いです! 私の意見も聴いてください! お願いしますから!」
「分かりました。停学処分に移行しますね、これも仕事ですから」
駄目だ。抑えきれない。なんでも
俺がハッとしたときには三人の輪に入りこんでいた。意図せぬ行動だったので気付いたときにはしまったと言う後悔の念しかなかった。
「どちら様でしょうか」
風紀委員長が話し掛けてきた。突然の問いかけに思わず目線を逸らしてしまった。でもなぜかこのときだけは本気で逃げちゃ駄目な気がしてきた。逸らしていた目線を力強い眼差しに変え睨み返した。
「俺のことなんてどうでもいいだろ! ただ彼女の話を聴かずに一方的な態度でいる貴女こそ風紀を乱していると言いたいんだ!」
「失礼な?! 私はただ――」
「彼女は嫌がっているんだ! そんなに彼女が悪いって言うんならこの俺がどうにかしてやる!」
「いいでしょう。確かに早計だったかも知れません。そこは認めましょう。でも! もし停学処分中に間に合わなければ卒業を剥奪しますからね。覚悟しておきなさい。その――」
「俺の名は
「飯塚……ね。私のクラスでは知らない顔」
「当たり前だ、転校して初日だから」
「転校って聴いてない。ということは――」
「そうだ! 俺は一年生だ!」
「一年でどの口を?! ……まぁいいでしょう。約束はしましたからね。覚えておいてくださいね、今日以外は貴方たちは停学処分だと言うことを」
「覚えておけばいいんだろう!」
俺がそう言い職員室から出ようと三人の輪から外れた。三人に背中を見せたままなにかを言おうとしたら急に職員室のどこからか声がした。
「待って! 飯塚さん! そろそろ授業の時間!」
そうだったとこのまま廊下に出て俺はどこに行こうとしていたのか。ここは冷静になって先生の元にいかないといけない。
なんだかんだ恥ずかしい思いをしながら三人を素通りするとすれ違いざまに誰かが囁くように言ってきた。
「飯塚君、放課後……門で待ってるから」
この感じからして風紀委員長でもなければ先生でもない。ということは出会ってしまったらしい、三面美人すぎる
これから俺と天寺先輩は停学処分中になんとしてでも三面美人すぎる部分を改善しないといけない。言ったからには全力を尽くそうと思う。
果たして俺と天寺先輩は無事に卒業出来るのだろうか。
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