ダンジョンと化した学園を自由気ままに謳歌してたら、なんか『ラスボス』だと勘違いされたんだが!?【学園ダンジョン配信録】
プラズマン
高嶺の花1/アカシックレコード
私の名前は
どこにでもいる普通の女子高生……と一緒にしないで貰おうか?
フッフッフッ、なにせ私は、文武両道、才色兼備、軍人にも引きをとらない冷静な判断力と戦闘力を兼ね備えたスーパー女子高生なのだからッ!
……あいにく超能力者とかではないから、空飛んだり、目からビーム撃ったりはできない。だが人間にできる範囲のことなら大抵のことはできる。
三階程度なら落ちても無傷で着地できるし、爆弾製作やハッキングはお手の物、バック宙返りや逆上がりだってできるんだ。
フフンッ、凄いもんだろう?
まあ、そんな私だが普段は冴えない女子高生を演じている。成績はその気になれば首位独走できるが敢えて真ん中をキープし、体育の授業はその気になれば無双できるが敢えて無難に過ごしている。
何故そんなことするのかって?
それは私が、諸事情によって真の実力を隠して冴えない女子高生を演じるもここぞという時に強大な力の片鱗を見せてしまい「あいつは一体、何者なんだッ!」と周囲から驚愕の眼差しを向けられる謎の実力者ロールプレイをしたいからさッ!
いってしまえばスー○ーマンだ。
私は高校1年間、ずっと力をひた隠しにしてきた。野暮ったい眼鏡を掛けて正体を隠して、レンズ越しにずっとタイミングを見計らっていたのだッ! すべてはここぞという時のために。
……だが残念なことに、高校2年生になった今でもそんな時は訪れていない。
トラックに轢かれそうになる子供に遭遇したり、異能力バトルに巻き込まれたり、クラスごと異世界に召喚されたり、町がゾンビで溢れかえったり……そんなシチュエーションに遭遇しないのだ。
絶望的な程にドラマが始まらない。せっかく私がこんなにも二次元に片足突っ込んだような
現実はあまりにも、現実的過ぎる。
ドラゴンや宇宙人なんて存在しない。
漫画や小説のような劇的な展開が訪れることもない。
真の力を発揮できない以上、私は普通の女子高生のままだ。
これでは宝の持ち腐れではないか。
私はいつまでこの力を隠し通せばいいんだ。
ああ、はやく主人公になりたい。
物語の主人公にーー。
◇◇◇
「……」
私は机に頬杖ついて窓から外の景色を眺める。
今は昼休みだがそれはもうすぐ終わり、次の授業が始まる。科目はーーなんだったか。
視線を落とすと机の上には英語の教材が綺麗に積み重ねられていた。ああ、そうだ。英語だ。少し、ぼっーとしていた。
……さて、困ったな。暇だ。
次の授業まで中途半端に時間がある。
私は筆箱からペンを取り出して、それを指先で回す。
くる、くるッ、ヒュン、ヒュヒュヒュッ……!
そうだ。
テロリストがここに攻めてくる妄想でもしよう。
なにせ、ここは天下の
よし、テロリストの目的はお偉いさんの子供の誘拐。で、私がパニックに陥る学園でバッタバッタと敵をなぎ払い、周囲から「アイツは一体、何者なんだッ!?」とか言われて一目置かれるという筋書きにしよう。クラスにいる冴えない女の子、だがその裏の顔は……みたいな。
フフッ、興奮してきたぞ。
まず物語は、廊下の方から女子生徒の悲鳴が聞こえるところから始まーー
「キャアアアッッ!!」
ーーん、本当に悲鳴が聞こえてきたではないか。
ブウウン……ピタッ。
私はペンを回すのを止めて耳を澄ませる。
「にげろ!」
「なによコイツら!」
廊下の方が何やら騒がしい。その喧騒はGを発見したとかイケメン同士の濃厚BLキッスを目撃したとかそんなチャチなものではない。もっと恐ろしい……例えば死体を発見したとか、露出狂が校内に現れたとかそんな類いの常軌を逸した騒ぎだ。
「なんだ今の悲鳴」
「えっ、なに? 何かあったのかな」
教室から困惑の声が上がる。
みんな「えっ……怖」みたいな反応をしている。
まあ仕方ないだろう。休み時間に楽しく談笑をしてる中で突然、迫真の叫び声を聞いたらこんな反応にもなる。
みんなのテンションはだだ下がりだ。
だが私のテンションはバク上がりだ。
……もしかして、本当にテロリストが攻めてきたとでもいうのか?
いや、待て待て待て。
そんな馬鹿な話があってたまるか。いや、そんな馬鹿な話があっても良いではないかッ! たまらないなおい!
何に対する悲鳴なのかは定かではない。だがどうであれ、退屈な日常を過ごす私にとってはワクワクすることに変わりはない。感覚としては小学生の頃、校庭にワンちゃんが迷い混んで騒ぎになったアレに近いかもしれない。
今はワンちゃんよりテロリストの気分だから、重火器持ったガタイのいい筋肉モリモリマッチョマンとかが迷い混んで来てくれてたら嬉しいんだが……果たして。
ざわざわ、ざわざわ。
外の喧騒は勢いを増していく。
ああ、もう辛抱ならないぞッ!
なぜ誰も様子を見に行こうとしないのか。
私はペンを机の上に置いて席から立ち上がった。そして教室の扉へと向かい、そのドアノブに手を掛けた。
「……」
あー、緊張してきた。
手が震えているではないか。
「……」
テロリスト来い。テロリスト来い。
私は扉を勢いよくスライドさせた。
「ーーぐぎ?」
扉を開けると、そこには小さな子供がいた。
身体は緑で上半身裸。衣服は腰に巻いた茶色い布切れのみ。目は黄色で耳が尖っている。ぐぎ、ぐぎと鳴き声のようなものを発するその子の手には棍棒が握られていた。
その装いは、なんというか『ゴブリン』だった。
「……」
こいつは一体、何者なんだッ!
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