『喰う女 −白雪の狩場−』
ソコニ
第1話 「吹雪の檻」
標高2000メートル、豪雪に閉ざされた高級スキーリゾート「白雪山荘」。
私は女性誌の取材で、この山荘のオーナーである明美さんを訪ねていた。華やかな噂の絶えない彼女は、シャネルの純白のスーツに身を包み、まるで雪の女王のような美しさで私を出迎えた。
「よくいらっしゃいました。素敵なリポートにしましょう」
その声には、どこか氷のような冷たさが潜んでいた。
ロビーの大きな窓の外では、猛吹雪が視界を白く染め上げている。山荘への唯一のアクセスルートであるロープウェイは、この悪天候で運行を停止していた。
「今夜は、皆様を特別なディナーにご招待します」
明美が艶然と微笑む。
山荘には他に、モデル、カメラマン、実業家など、10名ほどの宿泊客がいた。全員が明美の招待客だという。
夕暮れが近づき、吹雪が一層激しさを増す中、異変が始まった。
ディナーに招かれた実業家の一人が姿を消した。
捜索に向かった従業員も戻らない。
「見つかるはずがないわ」
明美の声が、突然、背後から聞こえた。
振り向くと、彼女の姿が変貌を見せ始めていた。
純白のスーツが裂け、中から真っ白な肉が零れ落ちる。
その肉塊は、まるで雪のように床に積もっていく。
「この山荘は、私の狩場なの」
窓の外で、雪の中に人影が見えた。
しかし、それは人ではなかった。
白い肉塊で出来た人型の何か。
その表面には、行方不明になった人々の顔が浮き上がっては消えていく。
「さあ、あなたも私の一部になりなさい」
明美の体が、純白の肉の奔流となって迫ってくる。
その先端には、無数の顔が浮かび上がっている。
全て彼女の顔。全て歪んだ笑みを浮かべながら。
(続く)
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