結局、可愛かったらなんでもいんじゃね?なラブコメ

燈芯草

第1話

 恋愛で何が大切かという問いに私は断固として容姿と答える。


 性格の良し悪し等どうでも良い。顔が良ければ全て良し。それが私の信条である。


 だからして今から私がやる事は、必然であり、当然の行為であるということだ。


「君がしてた事は、立派な虐めだ!斉藤さんに謝るんだ!」


 放課後の教室。複数の生徒は一人の美少女に軽蔑の目をやっていた。


「わ、私、虐めてなんか…」


 涙目で訴える彼女。


「証拠ならある。」


 一人の男子生徒がスマートフォンで動画を再生する。そこには二人の女子生徒が映っていた。一人は件の美少女、もう一人は斉藤さんと呼ばれていた生徒だ。彼等は文化祭の演劇を練習しているようだ。美少女が斎藤さんを指導する形で演習をしているのだが、何度か美少女は小馬鹿にしたような冗談を口にし、斎藤さんはそれを苦笑いで返した。


「そ、それは冗談で…」


「当人が虐めだと感じたらそれは虐めだよ!」


 美少女は、少しパーマのかかった短めの髪を小刻みに震わせながら、小さな手で制服を握っている。


 その様子は怯えるチワワのように愛苦しかったが、私はすべきことをする為に前へと出た。


「じゃあ君達がやっている事も虐めってことだな。」


 美少女を背に斎藤らの前に立ちはだかり、私は昂りを抑えながら淡々と言った。


「君の話曰く、今の状況を彼女が虐めだと感じたら虐めなわけだな。」


 すると問い詰めていた男子生徒がたじろぎながら反論する。


「こ、これは虐めじゃない!鷹麦さんが斎藤さんを虐めていたから謝罪を求めているだけだ。」


「だーかーらぁー、それが虐めじゃないのかって言ってんの。寧ろわざわざ人が多い教室で一人の女の子囲ってる方が悪質じゃないかな?」


「んな、でも!鷹麦さんに虐められたって人は沢山いるんだぞ!」


「じゃあ何?虐められたから虐め返していいって言いたいのか?」


「そ、それは…」


「てかお前、ただ自分が正義の執行者だと勘違いしてるだけだろ?自分が正しいことをしてるって思って気持ち良くなりたいだけだろ?」


「そんなことない!」


 顔を梅干しのように赤らめる彼。その様子を見兼ねた他の男子生徒が口を挟んでくる。


「お、お前だって鷹麦が好きだからイキってるだけだろ!」


 その言葉を受けて思わず私は口角を上げてしまう。


「あっはっは!お前らはそんな馬鹿だったのか?俺が鷹麦のことが好き?面食いの俺が鷹麦のこと好きにならない訳がないだろ?こんな可愛いんだぞ?好きにならない方が可笑しいだろ?お前らだってそうだろ?俺は知ってるぞ。お前らがこの後、傷心した鷹麦を慰めるフリをして好感を得ようって話してたのを。」


「そ、そんなわけないだろ?」


 さてと、そろそろか。


「おいお前らー何してるんだ?」


 するとそこに担当の教師が訪れる。


「いやー何でもないっすよ。ただちょっと文化祭の感想を語り合ってただけですよ。じゃあ僕はそろそろ用事が。行こう鷹麦さん。」


 私は彼女の手を引いて、静止を求める彼等を振り切って学校を出た。


「えっと…七瀬くん。」


 私は彼女の言葉を背に歩き続けた。


「あのー私…」


私は学校から離れるように歩き続けた。


「ねえ。七瀬…くん?」


 私は歩き続けた。そして、人影の一切無い潰れた工場へと辿り着く。


「よし。じゃあ鷹麦さん。」


 私は握っていた手を離して、振り返った。


「死のうか。」


 俺はスクールバックへ手を入れると、拳銃を取り出して、彼女の眉間へ銃口を向けた。

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