第16話 光庭園異聞III 第二話「融合実験体」



研究所の地下実験室。消毒液の臭いが漂う空間に、五人の被験者が横たわっていた。


私もその一人。高額報酬につられて参加した集団実験。しかし、これが悪夢の始まりだとは知らなかった。


「被験者の皆様、本日は特別な実験にご協力いただきます」


エルメスのワンピースに身を包んだ明美博士が、優雅に実験室に入ってくる。その手には、真紫の液体の入った点滴バッグ。


「これから、人類の限界に挑戦します」


看護師たちが各被験者に点滴を開始する。液体が体内に入った瞬間、激痛が走る。


「あ...ああ...」

隣のベッドの女性が悲鳴を上げる。

彼女の腕が、まるでゴム細工のように伸び始めた。


「素晴らしい反応です」

明美が嬉しそうに観察している。

「細胞間の境界が溶け始めています」


私は自分の体に起きている変化に気づいた。

皮膚が柔らかくなり、まるで溶けているよう。そして...隣のベッドとの間に、肉の橋が形成され始めていた。


「やめて...やめてください!」


しかし、明美は冷ややかな微笑みを浮かべるだけ。

「実験を中止することはできません」


五つのベッドの間で、肉の橋が次々と形成される。

私たちの体が、徐々に一つに溶け合っていく。


最も恐ろしいのは、意識がはっきりしていること。

五人分の痛みと恐怖を、同時に感じ取れてしまう。


「私...私たちの意識が...」

誰かの声が響く。もはや、誰の声なのか判別できない。


実験室の天井一面が鏡になっている。

そこに映るのは、おぞましい姿。五つの顔を持つ巨大な肉の塊。それぞれの顔が、苦痛と恐怖に歪んでいる。


「完璧な融合です」

明美が記録を取りながら言う。

「五つの意識を持つ単一個体の誕生」


私たちはもう、個別の存在ではない。

それぞれの記憶、感情、痛みが、この歪な肉体の中で永遠に混ざり合う。


「これからが本当の実験の始まりです」

明美の声が響く。

「あなたたちの中で、誰の意識が支配的になるのか...」


実験室に、五つの声が重なった悲鳴が響き渡る。

それは永遠に続く拷問の始まりだった。


(続く)

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