第8話 ショック②

 昼休み。

 相変わらず夏宮は友達に囲まれている。

 そんなに俺ってどうでもいい存在だったのか――!?

 そんな考えが脳裏に浮かぶ。

 いやいや、俺は何を考えてるんだ。別に夏宮の事なんて好きじゃないのに……!


「ねぇ生ゴミ」

「……またお前か」

「あたしじゃ悪いの? それとも何? メル友の夏宮とご飯食べたかったの?」

「……いや、そういうわけじゃ」

「ふーん。なんか、不満そうな顔に見えるけど?」

「そ、そんな顔してたか俺……!?」


 そんなに俺は夏宮のことが――。

 いや、性格良くて胸が大きい美少女が気になるのは雄として当然のことだ。何を恥ずかしがってる秋山 宗太郎。


「でさ、今日もあ、あたしとご飯食べな、い……?」


 桃花の声色にはいつものようなハリがなく、なんだかたどたどしい様子だ。

 やっぱり朝の件が堪えたのだろう。

 大方、俺が幼馴染である自分より先に他の女とメアドの交換をしていたのが気に食わなかったのだろうな。


「あ、アンタみたいな生ゴミに構ってあげられるのなんて……あたしぐらい、だし……?」

「おいおい、そこは自信満々に言ってくれないと困るぞ」

「だ、だって――」


 桃花は今にも泣きだしそうな声色で何かを言おうとしている。

 ……めんどくさいが、ここは俺が男を見せるしかないようだ。


「昼飯、さっさと行こうぜ。目的のパンが売り切れちまう」

「……うん」


 俺は桃花の手首を掴んで購買部へと向かった。

 そしてまたもや桃花の金でパンを買って、中庭のベンチに座った。

 今日は昨日とは打って変わって曇り空だ。

 桃花は下を向きながらちみちみとパンを食べている。


「……なぁ、朝の事ってそんなに落ち込むことか?」

「……」

「俺が夏宮とメアドを交換したのは夏宮が俺を監視するためだ」

「……」

「いわば夏宮のエゴだ。だからそんなに気にするなよ」

「……ふーん、そうなんだ……」


 やっとしゃべりだしたと思えばかなりのローテンションだ。

 これの解決法は俺と桃花でメアド交換することなんだが、どうもこっぱずかしくて提案できない。

 そんなことを考えてるうちに、桃花はもうパンを食べ終わった。

 そして無言で教室に戻っていった。

 俺もパンを詰め込むように食べて教室に戻った。

 別に桃花を追いかけたかったからじゃない。


 今日の帰り道は一人で帰った。

 夏宮は友達と帰っていて、桃花は今日は一緒に帰ろうと誘ってこなかった。

 本来なら一人で帰るのがデフォルトで、女と二人で帰るだなんておかしいはずなのに……。


 スマホを見ても夏宮からの通知は無し、か……。

 あー、どうしてもモヤモヤする。この件で不登校に戻れそうなぐらいモヤモヤしてるー。

 でも不登校になったら夏宮が俺を許さないだろう。

 だから夏宮に俺からメールして色々話すぞ……!




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