第3話 登山家の末路と試験終了。

別の地域で雪を降らしていたフブキは急激に強まった妖気を感じ取る。

その妖気がコユキの物だと分かった瞬間、フブキは嫌な予感した。


フブキ「コユキ……。自分を見失わないで!」


ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー


 雪が降り続く中凄まじい妖力は弱まるどころが強くなっていた。

少しづつ地面や木々、山小屋がパキパキと音を鳴らし凍り始めている。

コユキは一歩また一歩と登山家に近づく。登山家はさっきよりもカタカタと体を震わせる。寒さでどうにかなりそうな体を摩り暖めようとした。山小屋の中に入りたい。しかしドアはてついて開くことが出来ない。登山家はその場でしゃがみ込んでリュックの中からマッチ箱を取り出した。この場で小屋を燃やしてでも暖まろうと思ったがそうはいかなず、そのマッチすらも凍ってしまう。途方に暮れた登山家は最終手段に踏み切ろうとしていた。こんな現象が起きているのは、あの少女が現れてからだ。そうだ、あの子をさっき殺した雪男イエティ(熊)と同じようにライフルで撃ってしまえばいい。

登山家はじわりじわりと近づく少女をまとにして肩越しにライフル構え銃口を向けた。しかしそれさえもパキパキと凍っていく。クソっ!?と足元にライフルを放り投げた。次に懐からキャンプ用で使う小型のナイフを少女に目掛けて投げた。しかし少女はふわりと宙に浮き避けた。


登山家「くっ!?」


万事休すかと思い諦めかけたその時、今度は自分の番だと言わんばかりにコユキは登山家を足元から少しづつ凍らせていく。痛い、まるで剣山でずっとチクチク刺されているようだ。次第に身動きが取れなくなり呼吸がしづらくて荒くなる。冷たい冷気が直接肺に入っていくのが解る。こんなに苦しいなら一気に凍らせてくれれば楽なのに……。登山家の思いと裏腹に少女は楽に死なせてはくれない。次第に少女に対しだんだんと怒りが込み上がってきた。


登山家「(俺がお前に何をしたというのだ!!何もしていないだろがぁ!!)」


少女に向かって罵声を浴びさせたい。だが、凍ってしまってそれすらも出来ない。


登山家の苦しむ姿を眺めながら少女は無表情のまま銀色に光るから頬を伝い涙が流れる。滴る涙が地面に落ちてあられになる。

登山家の全身が凍りついたところで少女は妖力を使い果たしたのかその場でパタリと倒れた。


ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー❄︎ーーー


やっとのことで担当している地域全体に雪を降らし終えたフブキは直ぐにコユキの元へ瞬間移動した。そして倒れているコユキを抱き抱える。


フブキ「!?これ全部コユキが……」


フブキの目にはこの場で何が起こったのか理解するのにさほど時間は掛からなかったが、まさか自分の妹がここまで強い妖力を秘めていた事に驚きが隠せない。

凍漬けになった山小屋と1人の登山家。その周りには同じく凍ったライフルと小型のナイフ。

そして登山道にライフルで撃たれ血を流し、コユキが気づかない内に地面に倒れ動かなくなったイエティがいた。

突然、山の神が老婆の姿で現しフブキに伝える。


山の神「お主の妹は【合格】じゃ。目が覚めたら祠へ参れ」


言いたいことだけ言って山の神は姿を消した。相変わらず自分勝手な神だ。

倒れたイエティと凍漬けになった登山家をこのまま放っておけばすぐに麓の村人に見つられてしまう。そんな恐れからフブキは自身が作り出した雪で1匹と一人を覆い被せ、見つかりにくいようにした。そしてコユキを抱いたまま自分らの住む洞窟へ戻るのだった。


❄︎3話(完) 続く❄︎

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