パン屋さんから貰ったクリスマスプレゼント

暗黒神ゼブラ

パン屋さんから貰ったクリスマスプレゼント

パン屋さんから貰ったクリスマスプレゼント

私は宮辻茜(みやつじあかね)今年高校を卒業し、初就職をした。

私には八歳の時からの行きつけのパン屋さんがある

名前は"ちいさなパン屋"

このパン屋で私は心配なことがあるそれは

「おっまた来てくれたのか……なるほど今日は二百九十円だな。足りなかったとしても足りたってことにしてやるなら好きなの選びな」

これだ。

好きな物を選べるのは嬉しいんだけど……本当にこれでお店の経営大丈夫なの!?

……でも私が目指してるのはこういうお店なんだよね

私の夢、それは自分のお店を持つこと。

ただのお店じゃなくて誰もが幸せに楽しく過ごせるような……そんなお店にしたい

だからお客さんが欲しいけどお金が足りないって時は自腹をだしたり無料にしたりする。

だからここが私の理想そのもの……それに

本当ここの店主さんかっこよくて優しくて……もう最高に

「メロンパン二個ください」

メロンパン二個でメロメロってね……はあこんなしょうもないこと言ってる場合じゃないんだよね。

だって今日はクリスマスだし……夢ぐらい見たっていいよね

「あのね店主さん私ね……好きなんだ、店主さんの…………作るこのパン本当においしくてね。ほっぺた落ちちゃいそうになるね、いや実際は落ちてるかも、ほら見てぷるんぷるん……な〜んてね」

私今絶対ひよった〜!!

言いたいのはそれもあるけど……一番は……まあいいかな、私はこの人に対する想いを力に変える……なんて言ってるけど、ただ言うのが怖いだけです!!

「嬢ちゃんそれだけでいいのか? 他にも欲しいのがあれば言ってくれよ」

「ならお言葉に甘えて……う〜ん、どれにしようかなぁ、どれも美味しそうだし……気になるんだよねぇ。このレーズンパンっていいですか?」

「おう他にはどうする?」

「他に……か、じゃあこのメロンパンダって言うやついいですか?」

「おう、だったら二個で一個分の値段にしとくからな。んじゃこのベーコンパンとブルーベリーパンとチーズパンと明太子パンとスティックパンおまけで入れとくからな。アレルギーがないって言ってたからな」

覚えててくれたんだ

「そんなに、悪いですよ」

「いいっていいって、気にするな。美味しいって言ってくれる人のところに言ってくれるのが一番だからな。それにこれは俺からのクリスマスプレゼントだから気にするな。他には欲しいのあるか?」

「いいんですか!? でも流石にそこまでしてもらうのは悪いですよ……ちょちょちょなんでさらにパンを袋に入れてるんですか!?」

「えっ、サービスだけど……まあもうすぐ店を閉める時間だからさ……一応パンを冷凍して全国に届けるサービスもあるんだけどな、冷凍しにくいパンもあるからそれを入れとこうと思って。嬢ちゃんに色々食べて欲しいからな気にすんな」

「ありがとうございます。もうこれ以上は流石にいいんで会計お願いします……というか絶対足りないですけど、本当にいいんですか!?」

「だ〜か〜ら〜気にすんなって言ってんだろ!! 嬢ちゃんは美味しく食べてくれるからなこんくらい安いもんよ!! だからまた来な、出来る限りサービスしてやるからな。それじゃ二百九十円ちょうどってことで、毎度あり!! 帰る時気をつけてな、事故に遭わないようにな本当気をつけろよな!!」

本当こう言われただけで喜んでる私って

「ありがとう店主さん……また来るから待っててね!! 絶対来るから!!」

カランカラン

そしてお店を出た私は自転車に乗り家に向かった。

一時間三十分後

私は帰っている途中イルミネーションを見つけたので自転車から降りた眺めることにした。

イルミネーションを見ていると本当にクリスマスなんだなぁって思う

次の機会な誘おうなんて……本当私の意気地なし"次の機会"が来る保証なんてないのに

……!! あれは、店主さん

店主さん一人……なら声をかけてもいいよね

すぅ、はぁ……よし

「……て……んしゅ……さん…………あはは、やっぱりそうだよね」

私が見たのは女性が店主さんのところに走って行っているところ。

そこだけならまだ私にも可能性があると思ったのだが、女性が放った言葉を聞き私は諦めざるおえないと思った。

その言葉は

『義弘さん……毎年誘ってくれるわよね。やっぱりここが私が義弘さんにプロポーズした思い出の場所だからなの?』と

……店主さん結婚してたんだそういえば私店主さんの名前知らなかった

店主さん私の声が聞こえたのか私の方を向いてくれた

あぁやっぱり私店主さんのこと好きなんだ

自分の気持ちに気づいておきながら何年も伝えられず、次の機会また次の機会と引き延ばした結果がこれだ

……でも店主さんの笑顔っていつ見てもやっぱりかっこいい

私はすぐに自転車に戻り、無我夢中で漕いだ。

三十分後自宅に着いた私は

「店主さんから貰ったクリスマスプレゼント……気持ちの整理をしたいから、明日食べよう。今日はもう寝よう……母さんも父さんもいないし一人はちょっと、いやだいぶ寂しい」

私は帰ってからお風呂に入り泣き、何も食べずに布団に入った

涙は明け方三時二十一分まで流れた。

私が眠りに入ったのは泣き疲れたその後だった。

ピピピピピピピピピ

カチ

「……んん寝てた。もう五時か早いなぁ……ふぁ、結局今でも考えちゃってる…………ティッシュティッシュ」

ジュルルルルル

そして私は鼻水と涙を出し切った後いつも通り出勤した

十二時間後

やっと仕事終わった今日は残業なかったからよかったなそれに……行こっかな"ちいさなパン屋"

チリンチリン

「こんばんはぁ……今日も来ました」

すると店主さんが

「どうした嬢ちゃん元気ねぇな、なんかあったか?」

すみませんあなたには言えません

「昨日仕事で失敗しちゃいまして、あはは……あは」

「泣くなんて……そんなに辛かったのか、今は俺しかいない……だから好きなだけ泣きな。見られたくねえなら俺はあっちの部屋行っとくから安心しな」

だからあなたのそういうところが好きなの

「あはは、ちょっと泣くところは見られたくないです……少しだけお願いしてもいいですか?」

「ああ分かったそれじゃあ落ち着いてきたら呼んでくれ」

二十一分後

「ぐすん……ふう、だいぶ落ち着いてきた。店主さん落ち着いてきました!!」

タッタッタ……ガチャ

「そうかそれはよかった……じゃあこのブルーベリーパンを二つサービスしとくな。他にも欲しいのがあれば……」

やっぱり伝えたい

「あの店主さん……本当は仕事で失敗したんじゃなくて……失恋しちゃいまして、それでなんですよ」

すると店主さんが

「嬢ちゃんを泣かすなんて……どんなやつなんだ!! しかし理由も聞かずに怒るのもダメだよな」

どんなやつと聞かれたので、私は店主さんを指さした

「あ……あなた、です」

すると店主さんが

「すまん、俺のせいだったなんて……もしかして昨日来てたのも…………なんて言葉をかければいいのか」

と謝ってきたので

「ちっ違うんです!! 店主さんが謝る必要ないです!! 昨日伝えようと思ったんですけど、奥さんいたんですね……店主さんが幸せそうだったんでよかったです。私が勝手に諦めただけですから……まっまあ、ここのパン美味しいからこれから来るつもりなんで……いいですか?」

「来てくれるのもパンが美味しいって行ってくれるのも嬉しい……けど辛いなら間を空けてくれてもいいんだぞ」

「いえ、私はこれからも来るんで……もし、もし私が店主さんと友達になりたいって言ったら……引きますか?」

「ま〜〜〜〜ったく引かないぞ!! ああこれからもよろしくな……そういや名前教えたなかったな、俺の名前は勝俣義弘(かつまたよしひろ)これからも美味しいって言ってもらえるよう頑張るからな!!」

「ありがとうございます、てん……勝俣さん私こそ友達としてよろしくお願いします」

そして私と勝俣さんは友達として仲良くなりその後奥さんの勝俣悠(かつまたゆう)さんとも仲良くなり、特に悠さんとは二人で飲み会をしたりカラオケに行ったりするほど仲良くなった。

……でもまだ好きって気持ちも多少なりとも残っているが、これは友達として……と思えるぐらいにはなった。


おしまい

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