サンタさんの給料は?

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 毎年、12月になると『全国サンタ協会』のホームページに、『24日、25日だけの短期バイト! 日給1万5千円!』という、アルバイトスタッフを募る広告が出る。



 エリートビジネスマンの母九(ぼく)三太は、毎年この募集に応募する。普段はシャキシャキした営業マンで、何年もトップセールスマンとして活躍、会社からもお客様からも評価が高い。ちなみに高収入だ。だが、三太は24日と25日はサンタに変身する。そして自分の担当エリアの子供達にプレゼントを配るのだ。何年も続けているので、協会のアルバイトスタッフのフォロー担当とも顔馴染みだ。


「母九さん、今年もよろしくお願いしますね」

「ええ、任せてください」


 三太は、妻と息子には叱られている。毎年、クリスマスは家にいないからだ。だから、サンタの姿で真っ先に自宅に寄って息子にプレゼントを渡してから他の家を回るようにしている。



 墨藻(ぼくも)三太郎も、毎年このアルバイトをしている。三太郎はフリーターだ。賞与も無い。低所得だ。だが、毎年この仕事をする。だから、クリスマスは恋人と一緒に過ごせない。恋人は不満そうだが、三太郎はなんとか理解を得ていた。ちなみに、三太郎が結婚しないのは所得が低くて嫁を養えないからだ。三太郎も、最初に恋人にプレゼントを渡してから他の家を回る。



 仕事が終わり、日給を受け取る時、フォロー担当から三太は話しかけられた。


「母九さん、日給を2万にした方がいいですか? 毎年バイトの応募者が減っているので日給をアップしようかと思ってるんですけど」

「どちらでもいいです。私はこの仕事に『やりがい』を感じているからやっているんです。ですから、日給にはこだわりません」

「そう言っていただけるとありがたいです。そうですよね、母九さんは高収入ですしね。来年もよろしくお願いします」



 三太郎も、フォロー担当から話しかけられた。三太郎もフォロー担当とは顔馴染みだ。


「墨藻さん、日給を2万にした方がいいですか? 毎年バイトの応募者が減っているので日給をアップしようかと思ってるんですけど」

「どちらでもいいです。僕はこの仕事に『やりがい』を感じているからやっているんです。ですから、日給にはこだわりません」

「墨藻さん、フリーターだから給料が高い方が良いのでは?」

「この仕事に関しては、給料は関係ありません。給料が無くてもやりますよ」

「墨藻さん、ありがとうございます!」



 しかし、最近の子供達は、こんなことを言う。



「プレゼントは現金がいい!」







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