第3話 イレギュラーという名の配信事故

【獅子音リオン 未だ嘗てないほど初見すぎる第3区域】

『チャット欄』

”これ、ヤバくね?”

”リオン!逃げろ!”

”それイレギュラーだ!”

”相性悪すぎるって!”


獅子音リオンが叫ぶ。


「ちょ、待てよっ!これは聞いてないってッッ!!」


第3区域にて、イレギュラーが発生していた。


”第8区域の魔物がなんでここに!?”

”ヤバいヤバいヤバい!!”

”今北産業。説明キボンヌ”

”待ってろ、今助けを読んでるから!!”

”第3区域には出ない敵にリオンが遭遇してんだよ!”

”説明助かる……とか言ってる場合じゃねぇな!!”

”第8区域の五つ目のサイクロプスとか現代最強の奴らが行かないと無理だろ”

”しかも水属性 リオンとの相性最悪すぎる”


高速でチャット欄が流れて行く。


水属性の五つ目サイクロプス。

普通の一つ目サイクロプスは第3区域から出現するし、その能力は怪力のみで、ワンパターンな攻撃ばかりするので倒しやすい。


しかし、今回登場した五つ目サイクロプスは第8区域から出てくる敵で、普通の奴の比じゃないほどの強さを持っている。

攻撃力+防御力が桁違いに強くなっていた。


加えて今回の敵は水属性。

普段の金棒による振り下ろし攻撃だけでなく水魔法も使ってくる。


それが『灼焔しゃくえん』持ちのリオンとの相性が最悪な理由であった。


そんな魔物がリオンの前に居た。


第8区域の敵を倒すなど、獅子音リオンには不可能。そんな実力は持ってない。第2区域の敵は粗方ヌルッと倒せるようになったので今回初めて第3区域に来たわけだ。


”逃げろ!!”

”全速力で!”

”速く!!”


同じようなコメントが一斉に流れる。


「ヴオォォォォォッ!!」


五つ目サイクロプスが身の丈ほどある太い金棒を持った手を振り上げる。


リオンがほのおまとった右拳を突き出す。


「こんなところで終わってたまるかッ!!」


激しく火花が散る。


「うぉぉぉぉぉ!!俺は負けねぇ!!」


”もしやいけるのでは!?”

”いや逃げろって!”

”闘いを選ぶとしてもジリ貧だ!”


そうやってコメ欄が慌てふためいていた時だった。


「おらっ」


突然、目の前にいたサイクロプスが左横に吹き飛んでいった。

それと同時に土埃つちぼこりが舞う。


基本的な膝蹴りである。

但し【筋肉増強剤】でマシマシに強化された蹴りだが。


「は……………?」


右拳を突き出していたリオンは目を見開くと、土煙の中から人が見えた。


「大丈夫ですか?」


「一体何が……?」


どうやら気が動転しているようだ。しょうがない。一人でやるか………いや、やっぱりか。


そして俺はゆっくりと起き上がるサイクロプスの方を見た。


ダンジョンに入って30分以上経過していたので、俺は様々なスキルを手にしていた。

―――――――――――――――

■攻撃スキル

・短剣(コモン専用) Lv5

・ドローンα Lv5

・ドローンβ Lv5

■補助スキル

・スニーカー Lv5

・筋肉増強剤 Lv5

・エナジードリンク Lv5

―――――――――――――――

新たに手にしたのは【エナジードリンク(通称エナドリ)】と【取扱説明書(通称トリセツ)】というもので、【エナドリ】は5秒ごとに最大HPの5%を回復してくれる有りがたいスキルだ。


【トリセツ】はまだLv1だが最大HP+20%という優れた性能である。


そして、『ゾゾサバイバー』の1回の戦闘(ダンジョンに入る時)でのスキル最大獲得数は10個まで。

攻撃と補助を5個ずつ選べる仕様になっている。


「ヴオォッッッッッ!!」


土埃から出てきたサイクロプスが雄叫びを上げた。相当苛立っているのだろう。


そして俺の周りを飛んでいるドローンα、βがターゲットを合わせ、一斉に攻撃し出した。


そして俺はゆっくりと右手を前に出し、口を開く。


「並列起動っ 『ゴブリン伝説』」


さぁ、闘いの幕開けと行こうじゃないか。

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