第二話 「もしかしたら……」

 友里子とのサッカー観戦前日の仕事終わり、僕は同僚の慎吾しんごと居酒屋で食事をしていた。



「サッカー観戦?」


「うん。お互いの気持ちが通じたみたいなタイミングで、メールが来てさ」



 僕は慎吾の問いに答えると、ビールジョッキを傾ける。


 半分ほどを飲み干すと、テーブルにゆっくりとジョッキを置く。


 正面を見据えると、何かを言いたそうに慎吾が腕を組みながら僕を見つめていた。


 僕は特に気にすることなく、右手に箸を持つ。


 慎吾は天井から吊るされた照明を見つめ、呟くように言葉を発する。



「もしかしたら……」



 慎吾の言葉を聞き、箸を持った僕の右手の動きが止まる。


 ゆっくりと視線を正面に移した僕は、慎吾にその先の言葉を尋ねる。


 すると慎吾は僕に視線を向け、こう答えた。



「いや、なんでもない。さ、呑もうぜ」



 慎吾の表情には微かな笑みがあった。


「楽しく呑もうぜ」という意味なのか、それとも別の……。


 あれこれ考えながら僕はお店自慢のから揚げに箸を伸ばした。


 

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