別れる前にもう一度……

Wildvogel

第一話 来週、サッカー観戦に行かない?

 七月のある日、ベッドに腰掛けている僕の携帯電話に一通のメールが入った。

 

 僕はメール画面を開き、送り主を確認する。



友里子ゆりこ……」



 メールの送り主は、数週間前まで僕が交際していた、同い年の女性だった。


 何事だろうと、僕は友里子から届いたメールを開封する。


 そこには、こう綴られていた。




【別れよう】




 僕はその文字を見た瞬間、顔を俯ける。


 そして、目から溢れそうになったものを抑え、承諾のメールを送った。


 

【分かった。今までありがとう】と。



 送信が完了すると、僕は右手に持った携帯電話を寝室にベッドの上に置き、ゆっくりと腰を上げる。


 そして、寝室の窓に映る景色を眺め、友里子と交際していた機関のことを振り返る。


 その中で、僕は一つだけ後悔していたことがあった。


 それは――。



「友里子とサッカー観戦……」



 僕と友里子はサッカーが好きで、いつか一緒にサッカー観戦することが夢だった。


 しかし、お互いのスケジュールが合わず、なかなか会えない日々が続いた。


 おそらく友里子は、そんな日々に嫌気がさしたのだろう。



 僕はゆっくりと腰を上げ、窓際に立つと再び景色を眺める。


 するとしばらくして、再び僕の携帯電話にメールが入った。


 メール画面を開くと、友里子の氏名が僕の目に映る。



「どうしたんだろ……」



 一瞬だけ、淡いを期待を抱いた僕は邪念を振り払うように首を数回横に振り、メールを開封する。


 次の瞬間、僕の目にこのような文章が映る。




【最後に、わがままなお願いを聞いてもらっていい? 来週の土曜日って予定空いてる? もし空いていたら、サッカー観戦に行かない? チケット二枚あるの。一枚は、私の分。もう一枚は、俊太の分。サッカー観戦しないまま別れたら私、絶対後悔しちゃうから……】


 

 メール画面を見つめながら即答するように小さく頷いた僕は、いつの間にか友里子に承諾のメールを送っていた。

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