葬式
目失走
葬式
彼が死んだ。
私の彼が死んでしまった。
自殺、だったらしい。
家に帰ってきたお父さんが最初に彼を見つけた。
大きな葬式会場には彼の死を弔う人で溢れかえっていた。
クラスメイト、教師。
彼は学校でとても人気者で、友達が大勢いた。
のに、なんで自殺なんてしたんだろう。
声をあげて泣く女の子が何人かいた。
彼が好きだったのだろうか。
まあでも彼は私のものだ。
ずっと一緒にいた。
愛し合っていた。
体の関係だけじゃない。
心から彼を愛していた。
彼だってそうだ。
言葉にしなくてもわかる。
最初に手を出したのは私。
ずっと彼に想いを寄せていて、いけない事だとわかっていても、この衝動を抑えることなんかできるわけなかった。
最初は彼も混乱していた。
けどだんだんと受け入れてくれる様になった。
何度もすれ違って私が声を荒げた。
その度に彼はブルブル震えながら、貴方がいないと生きていけないと最終的には私に縋りついた。その姿がなんとも言えないぐらい可愛いかった。
両親には内緒。
だって言っても認めてもらえないだろうから。
きっと誰も許してはくれない。
その背徳感さえ、私には幸せの一つだった。
彼の遺書はとても短いものだった。
ノートのページを無理矢理ちぎって、殴り書きの字で「もう限界」と書かれていた。
何がだったんだろう、どうして言ってくれなかったの?
貴方は私のものなのに。
いくら泣いたって彼は帰ってこない。
そうわかっていながらも、涙が止まらなかった。
愛し合っていたのに、なんで言ってくれなかったの?
貴方と恋人になれたら、私はそれ以外、何も必要なかったのに。
涙を必死に拭っていると、声をかけられた。
彼の担任の先生だった。
彼は、ハンカチで額の汗を拭きながら、慰める様に言った。
「息子さんの突然の訃報、誠に残念でなりません。心からお悔やみ申し上げます」
葬式 目失走 @meshitukakeru
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