子狐と鬼

藍無

第1話 雪の日

雪がしんしんと頭の上につもっていく。

時々、頭をふって頭に乗っている雪を落とすが、それでもまたつもる。

その繰り返しで、私は疲れていた。

手足がかじかむ。

「寒いよぉ。」

一人、そうつぶやいた。

その言葉は、空から降り積もる雪に吸い込まれていきそうだった。

「君、こんなところで何をしているの?」

誰かが私にそう聞いた。

上を見上げる気力もなく、私は、

「お姉ちゃんを待っているの。」

と、言った。

「でも君、ここはすごく寒いし、手がかじかんでいるよ。とりあえず、うちへおいで。」

優しい声で、その人は言った。

確かにここはすごく寒い。

しかも、もうお姉ちゃんが待っていてね、と言ってから何日もたっている気がする。おなかが空いた。

「わかった。」

私は、なんとか冷たい唇を動かしてそう答えた。

次の瞬間、とさっと体が倒れた。

「大丈夫!?」

その人が驚いたような様子で私に駆け寄ってくるのがわかった。

もう、疲れたよ。

少しだけ、眠ってもいいよね。

次の瞬間、私の意識は途絶えた。


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