旅のきっかけ

森杉 花奈(もりすぎ かな)

宿屋の息子

 僕が旅を始めたきっかけは、村を救うため

だった。

村は寒冷地にあり、深刻な食糧不足だった。

いつもひもじい思いをしている村の皆たち。

寒くて標高の高い村は、いつも食糧不足だっ

た。

 僕の家は宿屋をしていて、ある時立ち寄っ

た旅人に、こんな噂を聞いたのだった。

「西の国に行けば、寒い土地でも豊かに育つ

ギム芋という食べ物がありますよ。そして、

ギム芋はとても美味しいですよ」

そうだ。ギム芋が村にあれば村を救えるかも

知れない。ギム芋の種か苗を手に入れられた

ら村人たちを食糧不足から救えるかも知れな

い。西の国へ行ってギム芋を手に入れよう。

 そうして僕は西の国へ旅に出たのだった。


 西の国へは徒歩では行けない。馬か、馬車

に乗るしか方法はなかった。

僕は馬車に乗ることを選んだ。

西の国へ向かう馬車の中には客が何人か乗っ

ていた。行商人と女性の剣士だった。ふたり

からギム芋のことについて何か聞けないだろ

うか?僕はギム芋について尋ねてみた。

「ギム芋?あれは確かに美味しいわ。西の国

の市場ならどこでだって買えるわよ。私は大

好物だけど」

「ギム芋なら西の国北部地方の特産品だよ。

何でも、寒い地方でも豊かに育つらしいね」

 良かった。旅人さんの話は嘘じゃなかった。

あとはギム芋の種か苗を手に入れられれば、

きっと村を救える。馬車はどんどん進む。

西の国へはもう少しで着きそうだ。まずは

市場を訪ねよう。僕は期待で胸がいっぱいに

なった。


 西の国に着いた。まずは市場を探さなく

ちゃ。辺りの人に市場の場所を聞く。

「市場(バザール)ならあっちだよ」

親切な通行人がバザールの場所を教えてくれ

た。僕はバザールへむかった。


 バザールは人でいっぱいだった。バザール

のギム芋売り場へ向かう。その店ではギム芋

料理が並べられていた。

「あのう、すみません。ギム芋の種か苗って

お譲り頂くことは出来ませんか?」

「うちにはないねぇ」

いきなりの玉砕。僕がどうしようか悩んでい

るとお店のおばちゃんが親切に教えてくれた。

「種屋さんになら売ってると思うよ」

「ありがとうございます」

僕はお店のおばちゃんに種屋さんへの地図を

書いてもらうと種屋さんに向かった。

「ギム芋の種かい?あるよ。買っていきな」

何とかギム芋の種を手に入れた。これで村の

皆を救える。僕はとても嬉しくなった。

 村に帰ると幼馴染のセリナが出迎えてくれ

た。何してきたの?と尋ねられる。人助けだ

よと答える。ギム芋は根付きがよく、また、

たくさん収穫できた。村は食糧不足から救わ

れた。僕は村の皆から感謝された。

 僕は心の底からこれで良かったと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

旅のきっかけ 森杉 花奈(もりすぎ かな) @happyflower01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る