第2話 よし、店を探そう!
アイクが目を覚ますと、知らない天井だ…というわけでもなく、昨日見た少し汚い天井が広がっていた。
昨日の昼の十二時に寝たのにも関わらず、朝起きた時には、既に九時を過ぎていた。
部屋の扉の前には、朝食としてトーストが置いてある。
宿の人が持ってきてくれたのだろうか。
少し申し訳ないなと思いつつも、特に気にせずやや急ぎ目でトーストを食べ始める。
何せ今日はやることがたくさんあるのだ。
店を構えるためには、立地などがいい感じの物件を探したり、魔道具を作るための材料を買ったりする必要がある。
魔道具を作るには、それを形作るための材料が当然必要になるが、それに加え魔物の素材も必要になる。
アイクのいる国では、冒険者と呼ばれる人々がおり、町の外に現れる魔物を狩ったり、いろいろな依頼を受けて仕事をしたりしている。
簡単に言うとちょっと力が強い何でも屋みたいな感じだ。
ただ、ほとんどの冒険者は魔物の討伐を専門的に行っているのだそう。
冒険者に関することの全てを管理している組織はギルドと呼ばれていて、アイクはそこから魔物の素材を買う予定だ。
朝食を終え、早速いい感じの物件を探しに行く。
宿を出て五分もしないうちに物件を取り扱っている店が見えてきた。
直前で心配になって、もう一度自分の所持金を確認してから店に入る。
「らっしゃっしゃっせ~。何かお探しですか?」
店に入るなりすぐに気さくそうな店主に話しかけられたので、どんな物件を探しているのかを伝える。
「え~と、実は魔道具店を新しく開きたくて、人通りがそこそこで、ギルドから近くて、三階建てのところを探しているんですけどありそうですか?」
「んー、なるほど。その条件だとここくらいしかないかな」
提示された物件は人通りがそこそこで、ギルドから近くて、三階建てでという条件にぴったりのものだった。
しかも、前の持ち主がポーション屋を経営していたらしく、カウンターや商品棚などが残っているらしい。
これはいい感じだなと思いつ、ここにします、と購入する旨を伝え料金を支払う。
その額およそアイクの給料五年分。予算ギリギリである。
「はーい、お買い上げありがとうございます。じゃ、今ちょうど暇なんでそこまで案内しますね」
「ありがとうございます。わざわざすみません」
親切な店主の好意に甘えつつ、自分のものとなった家へと向かう。
「はーい、着きましたよ」
「思ったより大きいですね」
「それはよかった。ここはもう君のだけど、困ったら連絡してね」
「はい、わざわざありがとうございました。」
礼を告げると店主はご満悦の表情で店へと帰っていった。
いい人だったなと思いつつ、もう一度目の前の建物を見る。
外観は周囲の建物と比べてもかなりきれいに見える。
中に入ってみると、外からは想像できないくらい広々とした空間が広がっていた。
一階にある設備を確認してから二階に上がり、背負っていたバッグからそのバッグよりも遥かに大きいベッドや机、椅子などのもろもろの荷物を取り出す。
なぜこんなちっぽけなバッグに、その何十倍も大きいベッドや机、椅子などが入っていたのかというと、このバッグが魔道具になっているからだ。
これはアイクオリジナルのもので、物を無限に入れられる上に、中に入れた食べ物などは腐らないという優れものだ。
アイクのいた職場では、これを来月から作ることになっていたのだが、アイクがクビになったので作れなくなってしまっただろう。
ざまあみやがれゴミカスクソ上司、と思いつつ家具を設置し、三階には魔道具の研究に必要なものを並べていく。
一時間ほどかけてようやく作業を終えた。
我ながらなかなかいい部屋になったなと思いつつ、さすがに疲れたので休憩をとる。
これからどうやって魔道具店を経営していくべきだろうかとアイクは思う。
例えば、どんな魔道具を扱うのかというのは非常に大切だ。
今アイクが売ろうと考えているのは生活するのに必要不可欠な魔道具だ。
(浄水コップ→汚い水に使うとアホみたいにきれいになるぞ!)
(万能ランプ→暗い部屋を明るく、明るい部屋を暗くできる!昼間から寝られるぞ!)
(思念ペン→思ったことを自動で書いてくれるぞ!)
(万能毛布→暑い夏にはヒンヤリ、寒い冬にはポカポカするぞ!)
ぱっと思い付くのはこんなものだろう。
早速作業に取りかかる。
アイクとしては、できれば今日中に魔道具を作り終え、明日は無理にしろ、明後日からは店を始めたい。
(まあでも、これくらいなら夕方までには終わりそうだな)
宮廷で働いていた頃にこれの何倍もの量をこなしていたアイクからしてみれば楽勝だった。
(やっぱり魔道具を作るのは楽しいな)
浄水コップのような簡単な魔道具を作るのは久々だったので、少しの懐かしさを覚えつつも、黙々と作業を進めるアイクなのであった。
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