魔道具師アイクのキセキ~奴隷のようにこき使われた挙げ句クビにされたので店を開きます~
ツキ
第1話 職業:無職になりました!
「お前、クビなwww」
「え、どういうことですか?」
ある日、会議室に呼び出され、そこで突如として向けられた言葉に、アイクは驚いた。
アイクは別に勤務態度が悪いというわけでもなく、むしろ良い方であると思っていた。
史上最年少だとかちやほや宮廷魔道具師になったのだが、結局、実力が足りなかったのだろうか、などと考えているうちに、上司であるグリース・ヴァルツから言葉を向けられる。
「だ~か~ら~、クビだっつってんの!一回で理解しろよ」
「私が仕事でなにかミスでもしましたか?」
特に心当たりがないのに、なぜかキレている上司に向かってアイクは言葉を返す。
「いや別に。ただお前はもう用済みだってことwww」
そう言ってグリースは、ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべる。
状況が理解できず、絶句するアイクに、グリースは続ける。
「ついでに今までのお前の手柄、全部俺がもらっておいてやったぜ」
ようやく理解が追いついて、 一瞬だけ、ほんの少しだけ殺意が湧いたが、もう正直どうでもよかった。
ため息をついて、ゴミカスクソ上司の顔を見る。そして、今までありがとうございました、とマイナス百億の感謝を込めて会議室を出る。
「せいぜい元気でな~」
などと声が聞こえた気がしたので心の中で、黙れよゴミカスクソ上司、と言っておく。
さっさと荷物まとめて出ていこう、という考えだけが出てきて、とりあえず出ていく準備をする。
そこでふと気がついた。アイクの今いる、そしてちょうど今辞める職場では、国からの依頼で魔道具を開発、作成してるのだが、作成している魔道具の中にはアイクしか作り方を知らないものがあったなと。
(まあ、もう関係ないしいいでしょ)
それにあのゴミカスクソ上司はなにも言っていなかったので特に問題ないということだろう。
そんなことを考えているうちに荷物をまとめ終わった。
同僚は二十人ほどいるが、仲のいい同僚は一人もいないので、特に挨拶をすることも、振り返ることもなく出ていく。
その後しばらく広場で佇んでいると、ようやくこれからのことに頭が回り始める。
(これからどうしようかな)
実を言うとアイクには家がない。というのも、ほぼ毎日、職場で寝泊まりしていて、家が必要なかったのである。
とりあえず、寝るところを探すかという結論に至ったアイクは、近くの宿屋に入る。
幸いなことに、空いている部屋があったので、お金を払い、すぐに部屋に向かう。
入ると意外と広く、驚いた。
5000エンというお手頃価格にもかかわらず、朝昼夜の三食つく上に、この広さはかなり良心的だろう。
だるかったので、とりあえずベッドにダイブする。
これからどうしようかな、と本日二度目の自問自答をする。
(そう言えば昔、大人になったらお店を開く~とかいってたなあ)
と考え、ん?じゃあ店開けばいいんじゃねと思い付く。
店を開くのには土地、施設、人などいろいろなものが必要だが、そのほとんどは金で解決できる。
幸運?にも、宮廷魔道具師だった頃は、休日などなく、お金を使う機会がない上に、給料だけは無駄に高かったので、アイクの貯金額はかなりのものになっている。
子供の頃からの夢を叶えられる状況にしてくれたという点では、あのゴミカスクソ上司に感謝すべきかもしれない。
それはさすがにないな、と思いつつ今後の予定を立てる。
五年ぶりに手に入れた自由を実感しつつ、昼の十二時に寝るという極楽、極悪ムーブをかましたアイクなのであった。
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