第2話

チャイムが鳴って、先生が静かに教室から出て行く姿を見送った。


 まだ理科教師室にいけないあたしは、今日ラストチャンスの後姿を見て名残惜しくなる。


 クラスメイトは噂の中心の金原先生の方をちらちら見ながらなにかささやきあっている。


 あの噂の収束の気配はまだない。





 不安だけど、今のあたしは比較的落ち着いていた。


 また、この前のビジネスホテルの夜みたいに、抱き合ってお互い満たされたい。


 あの夜の事、思い出すだけで、ほっぺが緩んでいきそうだった。


「顔が緩んでるぞ」


 隣の席に座った卓人が呆れたようにあたしをみていた。


 そりゃ、にやけるなって言うほうが難しい。


 「嬉しいに決まってるよね、茜ちゃん」


 真由まで何故か嬉しそうに笑ってくれた。


 そういう気持ちってなんだかとっても嬉しい。





 そこへ、いつものように笹塚クンがやって来た。


 話をしたいと思っていたから、ちょうどよかったよ。


 笹塚クンは廊下を振り返りながら教室にはいってきた。


「先生、やっと復帰したんだね。相変わらずって感じだけど」


 さすがの笹塚クンも心配そうだった。


 笹塚クンにも随分お世話になってしまったんだ。


「色々ありがとう」


「ううん、なんか清香が関わっているからさ。アイツ怖い女だもん」


 笹塚クンは適当に空いて居る椅子を引いて、座った。


「怪我の方はよさそうなの?」


「まだギプスはしていないとダメみたいだけど順調みたいだよ」


 先生は退院の時、ギプスを新しくしたようだった。


 あの変な顔のプリクラがなくなってくれてよかったよ。





 笹塚クンはまだ廊下のほうを気にしていた。


「あの、笹塚クンに頼みたいことがあるんだ」 

 整った横顔に、意を決して声を掛けてみた。

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