第7話 お姫様?

 二人が、リサさんにビビって——何も出来なかった日から。

 少し経つと……私達の元に、1通の手紙が届いた。

 それは、ギルドからの特別要請の通知だった。

 しかし、それを見たフロックは……


「そんなもん。放っておけ」


 と、軽くあしらう程度だった。


「いや、ダメでしょ——ッ!

 ギルドから直々に、要請されているのよ」


「別に、ギルドに従う理由は無い」


「何言ってるの。私達は、冒険者なのよ!

 ギルドの意思には従わなくては、いけないでしよ」


「お前が、そこまで言うなら。やるかやらないかは、さて置き——話だけは、聞きに行ってやるよ」


「……なんか、ギルドに対して——態度、悪くない?」


 そうして、2人が冒険者ギルドに出向くと


「あっ……せんぱーい。今日は、どうしたんですッか?」


「ちょっとな、ギルドから呼び出しをくらった」


「俺もなんすよッ!」


「同じ要件かしら……とりあえず、ギルドマスターの所に行きましょう」


 そうして、三人はギルドマスターの部屋へと通された。

 そして、只今——三人の前には、とても紳士的な白髪のおじ様が立っている。

 

「これが……ギルドマスター?」


「やあ、よく来てくれたね。君達……来てくれるか心配していたんだよ」


「おお! ジジイ——俺を呼び出すとは、良い度胸だケロ。つまらない要件なら、タダじゃおかねーぞ!」


「相変わらず、態度がデカいですね。

 あなた、自分が魔物って事はお忘れですか? 殺しますよ」


「やれるもんなら、やってみろ!!!」


「冗談です。

 あなたは、大事なリサさんのペットですから……

 とりあえず要件を説明するので、座って下さい。

 お飲み物は、紅茶で——よろしいでしょうか?」


「はい、私は紅茶で……」

「自分も、それで良いです!」

「俺は、コーヒーだ! 甘々にしてくれ」


 そして、皆んな席に座ると——フロックは、テーブルに足を置いて……甘々のコーヒーを口らか垂らしながら飲み出した。


「ズズズズズズッ……あ"ぁ……ズズズズズズ……

 ……ゲップッ〜〜」


「フロック……汚い。行儀悪い……」


「まぁ、良いですよ。エリアルさん。

 この方の、こういった行動はリサさんに何も言えない反動の様なものなので……理解しております」


「でも、ダメです!

 フロック、ちゃんと足を下ろして話を聞きなさい」


「自分も、その方がいいと思いますよ。先輩……

 それに、先輩は——確かに強いっすッが……そう言う行動をとる人だと思うと、なんか——幻滅するすッ……」


 二人の言葉を聞いて、フロックは足を下ろすと……少し、しょぼくれていた。

 まぁ、そんな事は——どうでもいい。

 その後、ギルドマスターから今回の要件について説明された。

 今回、フロック達に出されたクエストとは、ギルドとしても極秘事項で——実は、この国のお姫様が魔王軍の幹部に攫われたとの事だった。

 そして、それを助ける為に王が兵を動かそうとすると——スネークと言う。隣の国に、不穏な動きがあった事を察知したギルドが調べると、魔王軍とスネーク国は——裏で繋がりがあり。この国を攻めるための作戦である事を突き止めたギルドは、王様にその事を報告した。

 そして、ここからが問題で——王様は、それでも、お姫様優先で助け出す事を決意すると——軍団長を困らせる事になった。

 お姫様を助ける為に、兵を動かすと国の兵力が手薄になる。

 しかし、王様は何が何でも姫様をたすけたい気持ちは変わらない。

 そして、ここに来て——もっとも問題なのは、どちらとも事を構える事になるり。乱戦、戦が長期ともなれば、中立国のカナヘビ国も参加するかも知れない。

 と、言うわけで……困った兵士長とギルドは、出来るだけ事を荒だてぬように——このギルド最強と、最近うたわれ始めた。

 フロック達に、どうにかしてもらおうと話が来た。と、言う訳だ!


「国からの直々の依頼です。報酬は、弾みますよ!

 どんな急地からも無事に帰るカエル

 あなたの力を貸しては頂けないでしょうか」


「ボスは、何と言ってる!?」


「今は、まだ、魔王軍と事を構えるのは早いと……

 だから、隠密で助け出せ! と、伝言を仰せつかっております」


「あい、分かったケロケロ」


「助けに行くのね」


「時間は無いが、少し準備する物がある。

 詳細は、使いの者に連絡させるケロ」


「分かったわ!」

「分かりました! 先輩……」


「…………お前も、来るの?」


「えっ!? だって、俺も——その件で呼ばれたんですよね? ギルマス?」


「ああ……キバさん。

あなたは、違いますよ! 久しぶりに帰って来ていると聞いたので、顔でも見ようと呼んだだけです。

 この後、用事がないなら——お茶でも、どうですか?」


「僕は、嫌だ!

 俺は、先輩について行きます! 暇なんで」


「おっけーケロー。じゃー後の事は、エリアルに任せる! バイバイ〜……」


 そう言って、フロックは風のように部屋を去って行ってしまった。



 それから、夜になり……

 2人は、フロックの眷属からの情報で——フロックが指示する場所へと到着した。


 そこは、ケロッグ国から遠く離れた。

 魔王軍幹部ゴルバチョフの城の近くの大きな木の下……


「てか、何で!? 現地集合——ありえない……現地集合にするには、遠すぎるでしょ。ここは——ッ!」


「先輩もまだ来てませんね。本当に、ここであってるのでしょうか? 姉さん……」


「知らないわよ! 

『魔王軍幹部の城の近くの大きな木の下に、集合!』としか、書いてないんだから——」


 すると……

 

 カサッ……カサッ……


「しー……何か聞こえる……」


「敵ですか?」


「まだ、見つかってないと思うけど……体勢を低くして……」


 すると、闇のなからから姿を現したのは——!


「お前達……無事に到着したようだな!」


「フロック——ッ!『先輩!』あんた、何で——こんなに遠いのに、現地集合なのよ!」


「すまない……。色々と準備する物が、あったからな……」


「先輩、何ですッか!? その格好……

 忍者みたいで、カッケー!!!」


「だろ! これを準備していたんだ。

 お前らの分も用意したから、早く着替えろ!」


「マジっすッか!? アザースッ!」


「私は、いらないわよ。そんな服」


「ふざけた事を言ってんじゃーねー!

 この服を着る事で、どれだけ作戦の成功率が上がると思っているんだ!!!」


 ……確かに、フロックが来ている服は——真っ黒で、この闇に溶け込む為に敵に見つかりにくい。

 私の趣味思考で、これを断るのは間違ってるかも知れない。

 今一番大事なのは、お姫様を助け出す事……今は、それだけに集中して方が良いわね。


「分かったわよ……」


 そして、エリアルとキバは忍者の服に着替え終えると……


「最高だ!!!」


「何で、赤なのよ——ッ! 目立つでしょ」


「俺は、黄色すッよ!」


「両方目立つわよ!!!」


「エリアル……お前が、リーダーで——キバは、カレー好きだ!」


「……どう言う事?」


「キャラ設定すね。俺、カレー大好きっすッ!!! 分かりました」


「じゃー行くぞ!!!」


「いや、無理無理無理!!! 普通に着替えるわよ」


「何言ってんだ……? その服、今回の任務が終わらないと脱げない魔法を付与しといた」


「付与しといた。じゃないわよ!

 ふざけんな——ッ! 人の命がかかっているのよ。真面目に——」


「だからだよ。誰が死にそうな時に、黒子みたいな——全身真っ黒の奴に、助けてもらいたいんだ!!!

 誰だって、色とりどりのヒーローに助けて貰いたいに決まってるだろ!」


「……知らんッ!!!」


「とりあえず、脱げないんだ。諦めましょう……姉さん」


「……確かに、そうね——ッ! ムカつくけど……」


 そうして、喧嘩をしながらも3人はゴルバチョフのお城の近くに接近した。


「近くに来ると、デカいすッね!」


「ああ……ここがゴルバチョフの城……競馬城だ!」


「競馬場すッか?」


「違うは、競馬城よ。

 フロック、競馬城って事は——ゴルバチョフは馬の魔物なの?」


「そう言う事だな。

 そして、一つ忠告をしておくと——アイツが得意とする技は【ディープインパクト】だ!

 あの攻撃だけは、気をつけろ! 

 一撃で、体が木っ端微塵に弾け飛ぶ……」


「そんなに、凄い技なんすッか! ディープインパクト……」


「凄いぞ——圧倒的だ!!! 

 アイツには、他を寄せ付けない凄さがある」


「そんなに凄いなら、俺も一度見てみたかったすッ!」


「ああ……願うなら、俺も……もう一度……」


「技の話よね!?

 とりあえず、くだらない事を話してないで中に入るわよ」


「ああ……だが一度、俺が中に入って下見をして来る。

 連絡は、眷属を使ってするから後から入って来てくれ。悪いが、その格好は目立ち過ぎる」


シュッ……


 すると、一瞬で高くジャンプをすると壁をよじ登り城の中に入って行った。


「ちょ……誰が言ってんよ!!!

 待ちなさい! ちょ……フロック——ッ!」


「姉さん……」


「何よ!?」


「おやつ食べます?」


「…………食べる」





 それから、城の中に潜入したフロックは——壁や天井をつたい姫が捕まっているであろう。

 ゴルバチョフの待つ奥への部屋へと進んでいた。


「ケーロ、ケロッケロッ……俺にかかれば、魔物達を欺く事など造作もない」


 その後も……フロックは誰に見つかる事も無く——最深部へと到着した。


「多分、ここだよな……

 ゴルバチョフのいる部屋は!? お姫様も、ここに居てくれれば良いんだが……」


 そして、フロックが大きな扉を開けると……大きな部屋の奥、玉座の椅子に腰掛ける。

 魔王軍幹部のゴルバチョフが、待ち構えていた。


「姫を攫った時から、誰か助けに来ると思っていたが……こんなに早く来るとは思っていんかった。

 しかも、人間ではなく。お主は魔物ではないか……」


「久しぶりだな。ゴルバチョフ——姫を返して貰うぞ!」


「はて……? 我は、お前になどあった記憶は無いが……

 まぁ、良かろう。どの道、生きては帰さん」


 そうして、睨み合った2人の戦闘が始まる。





「あっ……姉さん。先輩から通信が来たすッよ!」


「何だって?」


 通信の為に、置いて行かれたオタマジャクシの口がパクパクと動く……


「…………ゴ……ゴルバ…………チョフは、倒した……でも……姫……居ない……探すの手伝え」


「あいつ一人で、もう倒したの?」


「さっすが先輩すッね!」


「私達も、急いで向かいましょう……」


そうして、二人は——城の中へと入って行った。


タッタッタッタ………


「姉さん……先輩の居場所わかるんですか?」


「ええ……道端に落ちてるフロックの眷属達を辿って行けば、辿り着くはず」


「先輩って、召喚魔法まで使えるんすッね。

 さすがっすッ!」


「まぁ……見れたものでは、無いけど……」


 そんな事を話していると、正面からフロックの声が聞こえて来た。


「おおーい! 通信は、上手くいったみたいだな——」


「ええ、それで……姫様の見当は、ついているの?」


「いや、それが……サッパリ分からん」


「それは、そうと……先輩!? その手に持ってる鎖は、何ですか?」


「ああ、これか!? これは、ゴルバチョフの後ろの檻にオークが捕まっていたから、帰ったら。これで、オーク肉のバーベキューでも、しようと思って連れて来た!」


「オーク肉で、バーベキュー! いいすッね。

 俺、オーク肉大好きです」


「でも、何で? ゴルバチョフは、オークなんて檻に入れてたのかしら……」


「あとで、食べようと思ったんじゃねぇーのか!」


 すると、そのオークが……話し出した。


「あの〜……助けて頂きありがとうございます。

 私は、ケロッグ国の第一王女のジュリエットです」


「・・・・・・」


 あら……なんて、お姫様らしい名前でしょ……


「おいゴラ——!!! 死にさらせ!!!」


 そう叫ぶと——ッ! エリアルは、フロックをぶん殴った。


「へぶッし——ッ!」


「どうしたんすッか! 姉さん、魔法すか? 錯乱魔法で、錯乱したんすッか!? オークがやったんすッか!?」


「違うわッ! ボケーー!!!」


 そして、エリアルはキバの事も殴り飛ばした。


 エリアルは、お姫様の前に跪くと——。


「申し訳ございません。お姫様……

 彼らは、なにぶん魔物と半人半魔な者で……目がクソみたいに悪く——人間と魔物の区別もつきません。

 どうか、なにとぞ——お許しを……」


「何言ってやがる! 俺の視力は4.0はあるぞ!!!」


「自分も7.5はあります!」


「だったら、何で? アンタら人間と魔物の区別もつかないのよ……」


「エリアル——ッ! 騙されるな。

 そいつは、間違いなくオークだ! 俺は、何度も見た事がある」


「そうすッよ! 姉さん……

 そんな身なりで、姫様って言うのは——ありえないすッよ!!!」


「おい! 止めろ!!!」


「そうだぞ! お姫様は、清楚で可憐で……美し『死にさらせ!!!』ぐはぁ……」


「お姫様、どうか! 打首だげは……お許しを……どうか、どうか——お慈悲を……」


「助けて頂いた方達を打首にするなんて、ありませんよ。

 あのまま捕まっていたらバーベキューの材料にでも、されていましたから——感謝しかありません……」


 それは、本当の話し……それとも、怒ってらっしゃる!?


 そうして、エリアルは——フロックとキバを暴力で抑え付け——。

 無事に、ケロッグ国の王女様を助け出す事に成功した。


「俺は、知らねーからな。そんなオークを街に連れ帰って騒ぎになっても……」


「あんた——まだ、言うかッ!!!」


「帰り道は、分かっているのですか? 冒険者様……!?」


「黙れ! オーク——俺も先輩と同意見だ!」


「おいッ、コラ! お前……姫様に剣を向けるな!」


「帰り道は、心配するな。俺の眷属達が道を教えてくれる」


「あっ……あれ、まだ使うんすッか? 先輩の眷属達は、俺……拾って来ちゃいました。

 ダメでしたか?」


 そして、キバは拾って来た眷属達をフロックに手渡すと……


「問題ない……」


 そう言って、フロックは眷属達を丸呑みした。


「あんた——何してんの!?」


「コイツらを吸収して、記憶を頂く。

 帰り道が分かったぞ——ッ。俺について来い!」


 そうして、皆んなフロックの後について行く……


 タッタッタッタッタタッタッタッタ……


「こっちだ!」


 タッタッタッタッタ……


「こっち……」


 タッタッタッタッタタッタッタッタ……


「こっち……? かな!?」


 タッタッタッタッタッタッタッタッ……


「こっち……だと、思う……」


「あんた——ッ! さっきから、どれだけ間違ってるのよ」


「だって……アイツらの記憶、分かりにくいんだもん」


「だもん! じゃーねーよ。

 さっきから、何度も行き止まりにぶつかりやがって——こっちとら姫様を早く送り届けないと心臓がもたねーんだよ!」


「そんなに言うんだったら。もう、いいよ……

 真っ直ぐ進むから——ッ!」


 そう言うと、フロックは赤いコートと金髪のおさげに身を包むと……


 壁の前で、膝をついた。


 そして、神様に祈るように、両手を合わせ——腕の中に、円を描く……


「錬金術の基本は、円をエネルギーの循環とする陣を描く事……」


 そして、その両手を地面につけると……


ビリビビリビビリーーーッ!!!


 周囲に、電流が発生し……地面を張って行ったエネルギーは壁を破壊した。


「理解、分解、再構築……それを分解で止めると——」


「先輩——ッ! 錬金術も使えたんですッか!?」


「騙されるんじゃないわよ。ただの土魔法よ!」


「うるせー! そんな事は、どうでもいい——

 このまま壁を破壊して、真っ直ぐ進んでやるから、黙ってついて来い!」


 そうして、ぶち切れたフロックは——壁を破壊しながら進んでいると……

 城の魔族達が騒ぎを聞きつけて集まって来た。


 すると、フロックは両手を手刀のように構えると……


「来やがったな! ド、三流ども——格の違いを見せてやるよ!!!」


「自分も、お供します! 先輩——ッ」


「「うりゃ〜ーー〜〜!!!」」



 そして、残されたエリアとジュリエットは……


「エリアルさん……あなたは、手伝わなくて良いのですか?」


「ああ、ほっといて大丈夫です!

 アイツら、ああ見えて本当に強いですから……

 ですので——ッ! 私は、全力で王女様をお守りしますから……何とぞ! お慈悲を……」



 その後、フロックとキバは——襲って来た魔物達を全滅させると堂々と正面から競馬城を出て行った。

 そして、エリアルの指示で——夜通し走り続けた四人は、朝方には冒険者ギルドに到着したので——お姫様をギルドマスターに受け渡しエリアルに引っ張られる形で、逃げるようにギルドを後にした。


 それから数日後に、お城からフロック達宛に招集の手紙が届いていたが……

 フロックもキバも王女様をオークと勘違いしていた事に気づくと……ビビってお城には、行かなかった。


_________________________________________

あとがき


面白かったら、ハートください╰(*´︶`*)╯♡


 

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