最終話:冬の終わりを告げる花

 冬が終わり、春が近付く頃。

 風人は久しぶりに母の墓前に花を供えた。


「ただいま、母さん」


 風人は墓前で穏やかに言う。

 その隣には、風人に買ってもらった桜色のフリースのコートを着た美羽がいる。

 人間の姿になった美羽は白金色の髪に紫色の瞳、色白で愛らしく整った容姿の女性なので、村のオヤジたちに大人気だ。


「新しい家族ができたんだよ」


 風人は墓前で美羽を紹介した。

 村に住む前に、役場で婚姻届けを出している。

 美羽は少し恥じらうように微笑んで、墓に挨拶の意を込めて頭を下げた。


 墓を囲むように咲き始める薄紫色の小さな花は、去年の帰省時に風人が植えたもの。

 冬の寒さがやわらぎ、暖かい日差しが降り注ぐようになると、雪の間を割って出るように蕾を覗かせる花。

 開花時期を迎えた花々は、2人に冬の終わりと春の訪れを教えていた。



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